「英語の授業で居眠りばかりしていた」、「英会話教室に通ったけれど、外国人講師の話していることが全然聞き取れなかった」…。こんな経験から、英語に苦手意識をもっていませんか?なかには「そもそも日本人に英語はマスターできない」と思い込んでいる人も多くいますが、それは間違っています。
日本が英語文化と出会ってから現代にいたるまで、先人たちは美しい英語の名言を残してきました。彼らの言葉に触れて、英語を楽しんでみましょう。
村上春樹:ノーベル賞に一番近い小説家
Between a high, solid wall and an egg that breaks against it, I will always stand on the side of the egg.
(高く固い壁と、それにぶつかって割れてしまう卵があるなら、僕はいつでも卵の側に立ちます。)
ノーベル文化賞に最も近い作家の一人と言われていた村上春樹氏。これは村上氏が2009年にイスラエルの文学賞「エルサレム賞」の授賞式で行った記念講演のスピーチです。
解釈はさまざまですが、一般にここでいうsolid wall は爆撃機と戦車とロケット弾と白燐弾を、egg は、それらに押しつぶされ焼き尽くされてしまう非武装市民を指していると言われています。彼は公衆の場で、自分が強者よりも弱者の側に立つ人間だと宣言したのです。
当時、イスラエルはガザへの3週間に及ぶ軍事攻撃で世界中から避難されていました。周りから授賞式に出席することを反対されていたのにもかかわらず、あえて出席してイスラエル批判色の強いスピーチを行ったことは、とても勇気ある行動といえるでしょう。
夏目漱石:洋の東西のはざまで揺れる知識人
If we go back, we shall be monkeys ere long. Darwin has taught us that. If we go forward we shall be gods. Buddha has said so. Which way are we going? Were we born, we must die.―Whence we come, whither we tend? Answer!
(来た道を引き返せば、我々はまもなく猿にいたるだろう。それがダーウィンの教え。先に歩みを進めれば、我々は神へといたるだろう。それがブッダの教え。我々はどちらに進んでいるのだろうか? 生を授かったならば、死ぬのが定め。どこから来て、どこへ向かうのか。答えよ!)
夏目漱石といえば、言わずと知れた19世紀末の日本近代文学を代表する巨人。そんな漱石がイギリス留学中に書いた英詩が上の作品です。
19世紀末といえば、ヨーロッパを中心にダーウィンの進化論が大きな影響力を持っていた時代ですが、文明開化の明治日本から世界ナンバーワンの先進国イギリスへと留学した漱石を苦しめた悩みもまた、「進歩」をめぐる東西の価値観の対立でした。
漱石はこの詩のなかで、少し古風な言葉遣いをふくめ英詩のスタイルを完全に我がものとしていますが、なかでも印象的なのが詩をしめくくる“Answer!”の一言。このシンプルな叫びのなかに、明治日本の苦悩のすべてが言い表されているのです。
イチロー:努力を重ねる天才メジャーリーガー
I cannot be satisfied with a number, because it may not reflect how you did. If you set a goal, achieving it may satisfy you and you won’t try to go beyond that goal. Every at-bat, there’s something to learn from, something to improve. It’s in the seeking that you find satisfaction.
(僕は数字で満足することはありえません。なぜなら数字は僕がやってきたことすべてを反映しているとは限らないからです。設定したゴールに到達しさえすれば、そのことに満足して先へ進む努力をしなくなるでしょう。毎打席、何かしら学ぶべきこと、改良すべきことがあります。満足は求めることの中にあるのです。)
言わずと知れた天才バッター、イチロー。日本球界で大活躍した後、2001年にメジャーへ移籍して去年2019年に引退。「10年連続シーズン200安打達成」や「日米通算4000安打達成」など、前人未到の記録を打ち立ててきました。
彼がいくら天才であっても、これだけの記録を達成するには相当の努力が必要です。It’s in the seeking that you find satisfaction.(満足は求めることの中にある。)の言葉には、彼ならではの哲学が伺えます。どんな状況下でも、向上心を持ち続けているからこそ、あれだけの偉業を成し遂げられたのでしょう。
オノ・ヨーコ:世界で最も有名な日本人女性
Some people are old at 18 and some are young at 90…time is a concept that humans created.
(18歳で歳をとっていると感じる人はいるし、90歳でも自分が若いと感じる人もいるわ。しょせん時間とは人間がつくった概念に過ぎないのよ)
伝説のバンド「ビートルズ」のメンバー、ジョン・レノンの妻だったオノ・ヨーコ。世界中からひどいバッシングを浴びせられながらも、強い信念を持ってアーティスト活動を続けてきました。80歳を越えていながら、今なお最前線で活躍し続けています。
彼女が言いたいのは、結局すべては自分の考え方次第だということ。私たちに、固定観念を捨てて自分らしいライフスタイルを築くことが大切だと伝えてくれているのです。
孫正義:不可能を可能にしてきた実業家
That was two years before he introduced the iPhone. I called him up and went to see him. And I brought my little drawing of an iPod with mobile capability. Steve says, “Masa, don’t give me your drawing. I have my own.” He said, “You’re crazy. We haven’t talked to anybody, but you came to see me first. I’ll give it to you.” So I said, “Write it down and sign it for me.” He said, “No, Masa, I’m not going to sign for you, because you don’t even own a mobile carrier yet.” I spent $20 billion doing that.
(それはジョブズが iPhone を発表する2年前のことでした。私は彼に電話をかけて、会いに行きました。そこにiPodにモバイル機能を備えたちょっとしたスケッチを持って出かけたのです。するとスティーブはこう言いました。「マサ、君のひどいスケッチをくれなくてもいいよ。僕には自分のやつがあるから」。そして、「君はクレイジーだな。まだ誰にも話していないのに、君は最初に僕に会いに来た。だから君にあげるよ」と言ったのです。そこで私は言いました。「きちんと紙に書いて、署名してください」と。すると彼は「ダメだよ、マサ。署名なんかできない。だって君はまだ携帯キャリアすら持っていないじゃないか」と 言いました。そこで私は、200 億ドル投じて携帯キャリアを買収したのです。)
これは孫正義氏がアメリカ進出を機にインタビューを受けた時の発言ですが、iPhone の日本独占販売権を獲得するために、ジョブズを口説いた様子がユーモラスに語られています。英文を見てもわかるように、孫氏の英語は非常にわかりやすいのが特長です。彼の発音はネイティブのように流暢でもないし、難しい単語も使われていません。しかし、そのシンプルで力強い言葉は、人々の心に響きます。
あの スティーブ・ジョブズに”You’re crazy.”と言わしめた孫氏。思い切った行動と説得力のある英語のプレゼンテーションがあったからこそ、当時NTTが独占していた携帯電話業界に旋風を巻き起こすことができたのです。
まとめ
日本から世界へ。各分野を代表する日本人は、言葉の壁を乗り越えて、美しい英語の名言を数多く残してきました。昔から日本には「言霊(ことだま)」という表現があるように、魂がこもった言葉にはものすごいパワーがあります。
世界に羽ばたく日本人の残した「言霊」は、現代の迷える人たちの心を勇気づけてくれるものです。今からでも遅くはありません。私たちも先人たちの努力に見習って、世界に熱いメッセージを発信していきたいですね!
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