日本語では日常的に「カタカナ言葉」が多く使われています。身近に思いつくだけでも、ミルクティー、コーヒー、カレーライス、フライパン、エプロン…例を挙げたらキリがありません。
実は和製英語は、英語では全く違う単語だったり、似ているけれどちょっと違う、あるいは日本語での使われ方と意味が違う単語が多いのをご存知でしょうか。
今回はその中でも、もっとも身近な和製英語の一つ「アイスコーヒー」を取り上げます。
アイスコーヒーの英語は?
アイスコーヒーはiced coffeeかcold brew coffee
アイスコーヒーをそのまま英語表記にするとice coffeeとなりますが、実はこれは和製英語。正しくは、iced coffeeかcold brew coffeeです。
Iceは名詞なら「氷」、動詞なら「冷やす」「(ケーキなどに)アイシングする」という意味があり、アイスコーヒーは「冷やしたコーヒー」のため、動詞iceの過去分詞が使われます。
同様に「アイスティー」もiced teaとなるので覚えておきましょう。
iced coffeeとcold brew coffeeの違い
「日本語でいうアイスコーヒーは英語だとiced coffeeかcold brew coffee」と述べましたが、その違いは作り方にあります。
iced coffeeはホットで作ったコーヒーを氷で冷やしたものを指します。欧米ではコーヒーというとホットなのが普通で、日本のように最初からアイスコーヒーがパックで売っているものは見かけません。
一方cold brew coffeeは、コーヒー豆を12時間以上かけて常温あるいは冷たい水で抽出したもので、日本語でいう水出しコーヒーのことです。iced coffeeに比べ、苦味が少なく口当たりもマイルドですが、カフェイン濃度が高いのが特徴です。カフェインは普通のコーヒーに比べて2倍といわれています。またアイスで飲むだけでなく、ホットとして飲むこともできます。
iced / coldを使ったアイスコーヒー以外の表現
ではアイスコーヒーの「アイス=iced」であることがわかったところで、アイスコーヒー以外にicedやcoldを使った表現の例を見てみましょう。
icedとcoldの違いは、一般的にicedは氷が入っているものを意味することに対し、coldは温度そのものが低いことを指すことです。
icedを使った表現
アイスコーヒーと同じように、「氷で冷やした冷たい飲み物」の例には次のようなものがあげられます。
iced tea (アイスティー)
iced water(氷で冷やされた冷たい水)
iced milk(氷で冷やされた冷たいミルク)
またicedには「アイシングでカバーされた」という意味もあります。
iced cake(アイシングでデコレーションされたケーキ)
iced cookies (アイシングクッキー)
coldを使った表現
coldは、「平温や体温より冷たく冷えているもの」を指します。
日本人的感覚では「これは冷たいというよりぬるいに近いのでは?」というようなものにもcoldを使うことがあります。
cold beer(冷えたビール。キンキンに冷やしたビールはice cold beerとなります。この場合のiceは「氷のように冷たい」という形容詞で、ビールを氷で冷やしているわけではないのでicedにはなりません。)
cold melon(冷やしメロン)
cold day(寒い日。冬の寒い日をcold winter dayと呼ぶこともあります。)
cold hands(冷たい手)
これ以外に本当にたくさんの例があるので、身近なものでicedやcoldを使った例がないか探してみましょう。「これはicedとcoldどちらを使うんだろう?」と迷った時は、「氷を使ったものがiced、単純に温度が平温より低い場合はcold」と覚えておくといいですね。
アイスコーヒーを英語で注文しよう
海外旅行や留学中にアイスコーヒーを注文するときに役立つ表現を学びましょう。どのコーヒー専門店やカフェでも、ほぼ同じようなフレーズが使われるので覚えておくと便利です。
注文の際に使われる表現
Can I have/get one iced coffee, please?
(アイスコーヒーを1つください)
日本語で注文するときは、2つ以上を指定しない限り1つであるのが常識なため、わざわざ「1つ」とは加えませんが、英語では1つであっても個数を指定して注文します。
Single or double?
(シングルですか?ダブルですか?)
これはスタバのようなコーヒー専門店やエスプレッソを提供しているカフェで「シングルショットかダブルショットか」と店員が尋ねるときに使われるフレーズです。
日本ではお客さんが指定しない限り聞くことはあまりないかもしれませんが、海外ではダブルショットを注文するお客さんも多くいます。
単に”Single?”(シングルですか?)と聞かれるだけのときもありますが、その時は”Yes, please.” (はい、お願いします)“No, double, please”(いいえ、ダブルでお願いします)などと答えるといいでしょう。
For here or to go (Take away)?
(店内で召し上がりますか、お持ち帰りですか?)
For hereは「ここで 飲む・食べる ため」、to goは「外に連れ出す=持ち帰るため」という意味です。アメリカではto go、イギリスではto goの代わりにtake awayを使うのが一般的です。
or to goを省いて、”For here?”と聞く店員もいます。初めて聞くと面食らうことがあるので、覚えておきましょう。
Do you need room for cream?
(クリームを入れるスペースを空けますか?)
「クリームのための部屋が必要って、どういう意味?」と一瞬びっくりしてしまいますが、この場合のroomは部屋ではなく「モノや人を入れるスペース」という意味で使われています。
ブラックのアイスコーヒーを注文するとカップいっぱいに入った飲み物が出てきます。ミルクやクリームを入れたい場合のスペースが必要かどうかは、このようなフレーズを使って質問します。
“Room for milk?” “Do you need room?”のように省略して尋ねられることもあります。特に“Room for milk?”は「ルフォミ?」のように聞こえるため、何を尋ねられているのか聞き取れないことも。
「文章全部聞き取れないけれど、何やら’room’というのが聞こえてくる…」という場合は、十中八九クリームやミルクのスペースが必要かを尋ねているので、必要なければ”No, thank you.”、必要であれば”Yes, please.”と答えましょう。ガムシロップを加える場合も、溢れないようにスペースを空けてもらった方がいいかもしれませんね。
注文する際の注意点
では早速アイスコーヒーを注文!といきたいところですが、その前に注意点が一つあります。
英語でiced coffeeを注文すると、普通にイメージしていたアイスコーヒーと違うものが出てくることがよくあります。ネットで画像検索するとわかるのですが、どちらかというとアイスカフェオレに近いものやクリームが上に乗ったものがiced coffeeとして紹介されています。
日本で一般的なアイスコーヒーを期待して注文したのに、砂糖がたくさん入っている上、ホイップクリームが乗っていて甘すぎて飲めずガッカリ…なんてことのないよう、店頭できちんと確認しましょう。
日本のアイスコーヒーに近いものを注文したければ、iced coffeeの代わりに、次のような単語を使って注文するとイメージ通りのものが出てきます。
cold brew coffee(水出しコーヒー)
iced americano(アイスアメリカン)
unsweetened iced black coffee(無糖アイスブラックコーヒー)
まとめ
「アイスコーヒー / iced coffee」は、国が違うとある単語が指す意味が変わる良い例です。言葉は文化を反映しています。会話をしていてなぜか話が噛み合っていないような気がするときは、実は自分がイメージしているものと相手が頭に思い浮かべているものが違うものなのではないかと疑ってみましょう。
例えば、ピクニックやバーベキューは日本人的感覚ではたくさんの料理を用意して豪華なイメージですが、海外では肉だけを豪快に焼いたものがバーベキュー、パンにハムとチーズをはさんだだけのものを自分が食べるためだけに各自持ってくる形がピクニックだったりします。
このように、誰もがよく知る簡単な単語一つとっても自分の常識と相手の常識が違う場合がありますので、そういった場面に遭遇したら「これはこうあるべきだ」と思うのではなく、「この国ではこういうことを意味するんだ」と柔軟に考えられるといいですね。日本語と英語で同じような単語なのに違うもの、を探してみると意外にたくさんあっておもしろいので、ぜひ探してみてください。
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