英語学習をしている多くの方にとって、もっとも難しいと感じるのはリスニングです。
日本人は読み書きはわりと得意な方も多く、またスピーキングもあらかじめ言いたいことを考えておくなどすればなんとかなる場合もあります。
しかし、英会話は言葉のキャッチボール。相手の言っていることが理解できないと会話が成り立ちません。また海外のドラマや映画を字幕や吹き替えで見るのではなく、そのまま理解できるとさらに楽しめますが、なかなかハードルが高いですよね。
今回は英語の聞き取りが難しい原因と聞き取り上達のコツを解説します。
なぜ英語の聞き取りは難しいのか
日本語にない音がある
英語のリスニングが難しい最大の理由として、日本語にない音があることがあげられます。
日本語は全ての単語がアイウエオの母音でできており、イントネーションが違っていたり、きちんとした発音でなくても音が近ければ理解してもらえます。母国語訛りのきつい外国人の日本語でもよほどのことがない限り全く通じないということはありえませんよね。
しかし英語は、母音もさらに細かく明確な違いがある上、子音もたくさんある点で日本語と大きく違います。th, r, l, dなどの子音は日本語にはなく、無理やりカタカナ表記にしてみても実際とは全く違う音になってしまいます。
例えば、日本語のラリルレロはどちらかというと英語のLに近くはなりますが、舌の先を上の歯の後ろにつけて発音するLとは異なり、軽く上顎に触れるかあるいは全く触れずに発音されます。カタカナ表記では同じラリルレロになるRは、日本語に近い音も存在しません。RとLの発音や聞き取りが特に難しく感じるのはそのためです。
会話では短縮・省略される場合がある
日本語は書き言葉と話し言葉が異なりますが、英語も同じです。話す時には短縮されたり、省略されることも多いので、書かれたものは理解できても耳にしたものと結びつかないのもリスニングが難しい理由の一つです。
身近な例をあげると、<it’s going to be → gonna be><kind of → kinda>などのように、会話では短縮されて発音されたり、<I don’t know → (I) dunno>のように主語さえもほとんど聞こえない形で発音されることがあります。日本語に置き換えると、<そうだよね → だよね>という形に近いと考えるといいでしょう。
このように自分の知っている英語と違う形で発音されるため、慣れるまでは簡単な会話のリスニングも非常に難しく感じる原因となっています。
子音が脱落する
文字と実際の会話中の音が異なるためリスニングを難しくするもう一つの要因として、子音が脱落することが考えられます。
では英語の音をあえてカタカナ表記にして、代表的な例をいくつかあげましょう。
・”let it go”という一文は、tの音が脱落し、「レット・イット・ゴー」ではなく「レリゴー」
・”put it”は、「プット・イット」ではなく「プリット」
・”get up”は「ゲット・アップ」ではなく「ゲラップ」
これらは単体であれば聞き取りもそう難しくはないかもしれません。しかし実際は、会話中にこういった子音が脱落するいくつものフレーズが早いスピードではさまれます。
文字にしたら「なんだこんな簡単なことを言っていたのか」と思うフレーズでも、ナチュラルスピードで行われる会話を聞き取るのはかなり難しいと感じるのではないでしょうか。
英語の聞き取りの障害となる3つのクセ
英語のリスニングが難しいのは、英語特有の特徴だけではなく、無意識に行なっている自分の「クセ」も関係している場合があります。英語の聞き取りの障害となる代表的な3つのクセをあげますので、自分にあてはまってないかチェックしてみましょう。
1. 日本語に訳して理解しようとしてしまう
英語のリスニング上達には英語をそのまま理解することが欠かせませんが、最初はどうしても日本語に置き換えて理解しようとするのが自然です。しかしこの方法は英語の聞き取りを難しくする大きな要因の一つとなります。
日本語は肯定なのか否定なのか、文章の最後まで聞かないとわからないこともあり、英語を同じように文章の後ろの方から訳しながら聞こうとするとどうなるでしょうか。
長い会話になればなるほど、混乱して理解できなくなると思います。
短い文章で例をみてみましょう。
I don’t think I can join you guys tonight.
(今晩君たちの集まりに参加できないと思う)
お気づきになったかもしれませんが、訳の一番頭にある「今晩 = tonight」は、元の英文では一番最後にきているのを始めとして、全て順番が英文と逆になっています。
英文を頭からそのまま訳すと、
「私は思わない、君たちの集まりに参加できるとは、今晩」
となり、日本語にするといまひとつ意味が通じません。
そのため自分の頭で理解できるよう、無意識に頭の中で日本語として意味が通じるように訳そうとします。
そうすると、文章が長くなればなるほど頭がこんがらがってしまうだけではなく、最初に話されていた内容も忘れて要点が理解できなくなってしまうのです。
2. 知らない単語が出てくると思考が停止する
多くの英語学習者は、リスニング中にわからない単語やフレーズが出てくるとそこで思考が停止してしまい、そのあとの文章が頭に入ってこなくなります。身に覚えのある方もいらっしゃるのでは?
英語のリスニングでは、一語一句全て完璧に理解することではなく、全体的に言わんとしていることがわかるということが大事です。
日本語でも相手の話す全ての単語を理解しているとは限りませんし、映画やドラマも知らない単語はいくつか出てきますよね。でも会話やリスニングに大きな支障はありませんよね。
英語も同じです。意識しないと最初は難しいかもしれませんが、わからない単語やフレーズは気にせずに、まず全体の意味をつかむようにすると、この「知らない単語が出てくることによる思考の停止」を避けることができます。
3. 単語一つ一つを理解しようとする
英語のリスニングを行うとき、単語やフレーズ一つ一つを切り離して理解しようとしていませんか?
日本の英語教育では単語帳を使って必死に単語を覚える訓練を受けているため、どうしても単語一つ一つの意味が気になるもの。
しかし英語を聞き取るには、単語単位ではなく、「意味ある文のかたまり単位」で理解しようとすることが必要となります。
例をあげて説明しましょう。
I’m planning to go to Spain next month but I haven’t booked a flight yet.
(来月スペインに行くつもりなんだけど、まだ飛行機予約してないんだよ)
この文章を理解するためには、次のようなかたまりに分解します。
I’m planning to / go to Spain / next month / but I haven’t / booked a flight yet.
(する予定 / スペインに行く/ 来月 / でもしてない / 飛行機の予約)
日本語にすると並び順がちょっと変ですが、単語ごとに区切ったりいきなり文の全体を理解しようとするよりも、意味が理解しやすくなっていると思いませんか?
このように単語ごとではなく、文のかたまり単位で聞き取るようにすると理解がしやすくなり、さらに前項で解説したような知らない単語で思考が停止する、というようなことも避けることができます。またこの方法は、リスニングだけではなく読むスピードを上げるのにも役立ちます。
英語の聞き取りを上達させる最適な方法
語彙力強化
基本中の基本ですが、語彙力の強化は必須です。地道な作業となりますが避けて通れません。
「今日覚えた単語が身になり、実際に使えるようになるのは3ヶ月後」
ということはよく言われますが、3ヶ月後とはいかないまでも相当数の時間がかかることは確かです。リスニングに関しても、新しく覚えた単語がしっかり定着していないと、「あれ、意味なんだっけ?」と気になってしまい思考が停止してしまいますので、根気よく語彙力をつけていきましょう。
知識として頭に入った単語をしっかり記憶に定着させるためには、その単語が使われている文章をまるごと覚えることが効果的です。
英英辞典に出てきた例文や、リスニング練習中や英会話中に使われている文章を覚えます。
なお和英・英和辞典は、ネイティブにとって少し不自然に思えるような文章を例文として掲載していることがありますので、覚える例文は英英辞典のものを使うことをオススメします。
英文を日本語に訳さず読む
英語のリスニングには語彙力だけではなく、耳に入ってきた英語を日本語に訳さずに理解する能力も必要です。
学習方法としては、まず英文を日本語に訳さないで読む練習をするといいでしょう。
いきなり耳で聞いたものをそのまま理解しようとするのは難易度が高いので、まず英文を英語のまま読みとる訓練をすることにより、自然と英語で理解し考える力をつけることができます。
「英語聞き取りの下地をつくる」という意味では、本ではなく、映画のスクリプトや著名人のインタビューの書き起こしなどが向いています。またSNSの投稿やコメントも旬の話し言葉で書かれていることも多いので勉強になります。
短い音声を繰り返し聞く
英語のリスニングをつけるには、とにかく大量に聞き流せばいいのでは?と思われがちです。しかし私の経験上、聞き流すだけではリスニングは決して上達しません。聞き流すことをずっと続ければ少しは効果があるかもしれませんが、同じものを何度もくり返し聞くことと比べ、数倍時間がかかります。
YouTubeやPodcastで好きなものを選び、くり返し聞きましょう。
長くても5分程度のものが適しています。
30分など長い動画やオーディオは、数分に区切って一定箇所を理解できるようになるまで何度も聞きます。最初は全く理解できなかったものも、くり返すうちに少しずつわかる部分が増えてきますので、わからない単語などは気にせず、とにかく要点を理解することに集中します。
ビデオなら何度か見たあと、英語の字幕をオンにして確認しながら再度見てみましょう。
ここで聞き取れなかったり、聞き間違えていた部分の確認ができます。
そのあともう一度字幕をオフにして見てみてください。初めて見たときとは比べ物にならないぐらいよく聞き取れるようになっているのではないでしょうか。
ビデオではなく、オーディオブックやPodcastの場合も同様です。Podcastはスクリプトがないので難易度は上がりますが、ぜひ挑戦してみてください。視覚に頼らず耳だけでどれぐらい理解できるのか、自分のリスニング力のテストにもなりますよ!
ディクテーション
短い同じ音声や動画をなんどもくり返して聞くことと合わせて、ディクテーションもしましょう。
耳に入ってきた音を、そのまま文字に起こします。会話では完全に文法的に正しい文ではない時もありますが、聞き取れているかのチェックなのでそこは気にせず書き起こします。
ディクテーションは全てをきちんと聞き取れていないとできません。
自分がどこを聞き間違えていたのか、あるいはきちんと聞き取れなかったのかを可視化したい時に有効です。
声に出して練習
リスニングはただ聞く練習だけではなく、声に出すことも練習になります。
耳に入ってきた音をそのままちょっとずらしたタイミングで真似するシャドーイングが効果があると言われていますが、どちらかといえば通訳訓練向けで、リスニング練習中の初級者や中級者にとっては難しいだけであまり効果がありません。
シャドーイングよりも、例文や会話例を声に出して練習するのがオススメです。
動画の一部を本人になったつもりで、スラスラと言えるようになるまで練習しましょう。
短縮や省略されている部分の理解が深まり、英語特有のイントネーションやアクセントにも慣れます。聞き取りが楽になることに加え、発音矯正や会話力向上にも役立ちます。
まとめ
最初は「何言ってるかさっぱりわからないし、苦痛でしかない」という方もいらっしゃると思いますが、正しい方法でトレーニングすれば、英語は必ず聞き取れるようになります。
海外の映画やドラマ、動画を字幕なしで楽しめるようになることを目標に頑張りましょう。
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