グローバル化にともなって、英語で議論をする機会が増えてきています。せっかく議論をするなら、建設的なものにしたいですよね。
それでは、英語で議論するとき、どんなことに気をつける必要があるでしょうか?単語や文法も大事ですが、それよりも気をつける必要があるのが英語らしいマナーです。どんな言語にも、その言語のマナーがあります。日本語では礼儀正しい話し方も、英語では失礼だと思われてしまう場合もあるのです。
今回は、英語で議論するときのマナーについて考えてみましょう。どうすれば、よい議論ができるでしょうか?
英語ではNGな話し方
英語の議論には、いくつかのマナーがあります。日本人がやりがちな話し方について考えてみましょう。
「あいづち」は少なめに
「日本人特有」と言われているのが、多すぎるあいづちです。多くの外国人が、日本人の話し方はあいづちが多すぎると言っています。
日本語では、相手が話している時にあいづちを打たないと失礼な感じがしますよね?話している方も、相手があいづちを打ってくれないと続きが話せません。
筆者が以前TOEICのスピーキングテストを受けたとき、困ったことがあります。「芸術は義務教育に必要か?」というテーマで、自分の意見をパソコンに吹き込むのですが、あいづちがないので話しにくくてしょうがないのです。相手があいづちを打ってから話すというのが体にしみ込んでいるので、あいづちがないとつい話を止めてしまいます。
ですが英語で話している時は、あいづちが多すぎるとマナー違反になってしまいます。相手が話している途中で「Yes」とか「Yeah」とかと合いの手を入れるのは、「話に興味がない」「話の邪魔をしている」と思われてしまいます。相手の意見はだまって最後まで聞くのが、英語で議論するときのマナーです。
「Noをはっきりと言った方がいい」は間違い?
日本で信じられているのが、「英語ではNoをはっきり言った方がいい」という考え方です。日本語では相手の意見を否定しないように気を使うけれど、英語では反対なら反対だと直接的に言った方がいい。こんな意見をよく耳にしませんか?ですが、これはあまり正しいとは言えません。
これも筆者自身の経験談ですが、以前オーストラリアの方と教育について議論をしたことがあります。その方の意見に私はあまり賛成できなかったので、「No, I don’t agree with your opinion. You have misunderstood what is the problem(あなたの意見には賛成できません。問題点を誤解しています)」とばっさり否定しました。後になってその方から、遠慮がちに「あなたの話し方は怖すぎる」と指摘されてしまいました。
英語でも、相手の意見は否定するのは気を使います。礼儀正しく話すためには、いったん相手の意見を肯定してあげる必要があります。日本語と同じなのです。
You might be right, but I have another opinion.
(そうかもしれないですが、私は違う意見を持っています)
Yes, that’s right. However, what about in this case?
(確かにそうです。でも、こういう場合はどうでしょうか)
このように遠まわしに反論する言い方をすると、議論がスムーズになります。
英語で議論をしてみよう
ここからは、実際に英語で議論をする場面を考えてみましょう。トピックは、先ほど例にした「Is art necessary for elementary schools?(芸術は義務教育に必要?)」です。ちなみにこういうちょっと抽象的なトピックは、TOEICのスピーキングやTOEFLでもよく聞かれます。
今回は、自分は「芸術は必要」、相手は「不必要」の立場で考えてみましょう。
自分の意見を主張しよう
英語で議論するときは、自分の意見をまず言い切ることが大切です。相手のあいづちを待ったりする必要はありません。
I think that it is necessary to teach art to children. The purpose of education is to let students develop a wide-range of knowledge, and art is clearly an essential part of that.
(子供に芸術を教えることは必要だと思います。なぜなら、教育の目的は生徒に幅広い知識を身につけさせることで、芸術は明らかにその大事な一部だからです。)
日本語で話すと、「幅広い教養を身につけるためには、芸術もやっぱり大事な部分なので……」のように、途中で止めてしまうことが多くあります。ここまで言ったら、後は相手が察してくれるよね?という感覚があって、最後まで言い切らないことってありますよね。でも英語では、とにかく最後まで意見を言い切ります。「so…(なので…)」で止まってしまうと、「最後まで言ってよ」と思われてしまいます。
相手の意見に反論しよう
さて、相手はどのように反論してくるでしょうか?冷静な議論をしているときには、まずは相手の意見を肯定してくるでしょう。
Yes, certainly, it is important to learn a wide variety of knowledge.
(はい、確かに、幅広い知識を身につけることは大切です)
On the other hand, the very purpose of education is to master a skill which you need to earn money.
(しかしながら、教育の最大の目的はお金を稼ぐのに役立つスキルを身につけることです)
From this perspective, learning art might be wasting time. Because most students would not use that in the future.
(この観点から言うと、芸術を勉強するのは時間の無駄ではないでしょうか?多くの生徒は将来それを使わないからです)
さて、聴き手にとって大事なのは、相手の反論を最後まで黙って聞いてあげることです。あいづちを打ったり、途中で反論したりするのはマナー違反です。相手が意見を言い終わるまで、相手の目をみて話を聴きましょう。
相手が話し終わったのを確認したら、反論を始めます。ここでも、相手の意見を直接否定しないように注意しましょう。
Is the purpose of education earning money? Finding a good job might be important, but as a well-educated person, understanding cultural things is important too.
(教育の目的はお金を稼ぐことでしょうか?良い仕事を見つけるのは確かに大事ですが、教養ある人間として、文化的なものを理解するのも大事です)
英語の議論は、このように「交互に」自分の意見を出していきます。相手の意見を聴いて、「たしかにここはあなたの言う通りです。でも、この点は違います」というように、意見をすり合わせていくことが大事になります。そのためにも、英語の議論では相手の意見を最後まで聴くこと、否定しないことが大切です。お互いに相手を肯定しながら意見をすり合わせていくことが、よい議論に繋がります。
まとめ
英語の議論も、基本的には日本語と同じです。相手の意見を否定しないで、認め合いながら話すことが大事になってきます。
そのためにも、話の腰を折ってしまう「あいづち」はできるだけ使わないようにしましょう。また、「英語は直接的な言語だ」というのは決して正しくありません。相手の意見を全否定することは、議論を台無しにしてしまいます。肯定→自分の意見を言うという流れで、うまく意見をすり合わせるのが大事です。
グローバル化の時代、英語で議論をする機会は増えています。マナーを守って、実りの多い議論にしたいですね。
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