日本では謙遜することが美徳とされ、誰かに褒められても「とんでもないことです」「そんなことないよ」「私なんか全然ダメだよ」と相手が褒めたことを否定するようなことを言ったり、褒められたことの恥ずかしさを茶化す言葉で返す人が大半です。素直に褒められたことを認めると、「この人勘違いしてない?」とびっくりされることもあるでしょう。
では外国人との会話はどうでしょうか?日本語のように、「そんなことないよ」と答えることが適切でしょうか?英語での謙遜の方法と謙遜するときに使う表現を解説します。
英語で謙遜するには|3つのポイント
日本語だとよほど自分に自信がある人でない限り謙遜してへりくだるのが一般的とされています。また、たとえ自分に自信があっても、面と向かって自慢したり態度に出しすぎると尊大な人だと思われてしまいます。
欧米では逆にへりくだりすぎると「自分に自信がない人」として見られ、マイナスの印象を与えてしまいます。「自分にはこういうスキルがあって絶対的な自信がある」ということを声を大にして言う人も少なくありません。「あなたすごいね」と言ったら「僕もそう思う」と返答されて驚いた人もいるかもしれませんね。
日本語は言葉にしなくても言外の意味をお互いにわかり合えるという特徴がありますが、民族・人種・宗教が異なるさまざまな人が混在する文化では、同じような価値観を持つことは難しいです。たとえアメリカで生まれ育っていても、祖先の文化は家族に継承されているので、元々の文化的背景が影響されます。
そういう社会だと、「言わなくてもわかってもらえる」ということはありえませんし、言語が唯一お互いに理解し合えるツールとなります。そういったことから言葉にしないことは言ってないことと同じと取られてしまいます。
日本人は思ったことを口に出す、素直に感情をぶつけ合うという行為が非常に苦手です。Yes、Noをはっきり口に出すのはためらわれ、言いにくいことは間接的な表現を好みますが、英語は逆です。
はっきり言葉に出さないと自分の意見がない人と思われたり、「その条件をのむのはちょっと難しいですね」と自分ではNoの意味で言ったことが「じゃあ条件を変えたり、もうちょっとプッシュしたら受け入れてくれるということか」と取られます。
こういった考え方の違いを踏まえて、英語で謙遜するときの3つのポイントについてみてみましょう。
1. 基本的に素直に「ありがとう」で返す
褒められたらまずは笑顔で「ありがとう」と返しましょう。
日本人みたいに「いえいえ全然そんなことないよ」というのは変で、そのあとの返答に困らせてしまいます。「そんなことはない」と言ってしまうと、相手が自分を褒めてくれた行為を否定してしまうことになり逆に失礼です。
1つめのポイントとして「褒められたら恥ずかしくても、まずは笑顔でお礼を言う」ということを忘れないようにしましょう。
2. 謙遜にはポジティブな表現を使う
「ありがとう」と言ったものの、「やっぱり恥ずかしいし、何か謙遜のひとことを加えたい」というときには、「まだ勉強中です」のような前向きな言葉で返すこともポイントです。たとえそう感じていたとしても、「私なんて全然ダメだから」などという否定的な表現は決して使わないようにしましょう。
3. 相手のことも褒めてあげる
英語で謙遜する場合の最後のポイントは、「お礼を言ってから相手も褒めてあげる」です。
「あなたの新しい髪型素敵ね!」と言われたら、「ありがとう、カラーを変えてみたの。今日のあなたの服もあなたらしくてすごく素敵よ」と相手を褒めてあげましょう。お互いとてもいい気分になるはずです。
ただしウソは言ってはいけません。相手に全然似合わないひどいコーディネートなのに褒めてしまうと、もし誰かがあとで「それちょっと似合わないんじゃない?」と言ったときに、「え?〇〇は褒めてくれたんだけど。もしかしてウソだった?」と疑心暗鬼になるかもしれません。
褒められたときに褒め返すのはとてもいいことですが、無理やり褒め返す必要はありません。「これは褒めてあげたい」と思ったことがあれば、ぜひ褒めてあげましょう。
また、普段「あの人はすごい」とか「素敵だ」とか思っていても、なかなか恥ずかしくて口に出せないこともあるかもしれません。褒められたときに褒め返すのは、普段思っていることを口に出すいい機会ですよ。
褒められたときに使える謙遜の表現
それでは英語で謙遜していることが伝わる表現を学びましょう。
1. 「謙遜」そのものの意味を持つ表現
日本語と全く同じような謙遜をしない英語でも、「謙遜」そのものを表す表現があります。
Don’t be so humble.
Don’t be so modest.
(謙遜しないでください)
I’m being humble.
I’m being modest.
(私は謙遜していています)
*beingをつけると「その場だけでその状態にある」という意味になります。I’m humble.としてしまうと、「いつも謙遜している人である」ということになってしまい、性格そのものを指してしまうことになるので、会話中の「謙遜しているんだけど」のような場合にはbeingを入れます。
《humbleとmodestの違いについて》
humbleもmodestも日本語ではどちらも「謙遜している」「控えめな」と訳され、英和辞書にはそれ以上のことは書いてありませんが、実は意味合いが少し異なります。
humbleは、他者が感じるほど本人が自分の実力や外見などを評価していない場合に使われます。謙虚で他者の方が優れていると認めているため、他人に嫉妬したりすることはありません。
modestは、自分をしっかり評価していますが、高慢ではない場合です。他者からの高い評価に対して謙虚な態度を見せても、その評価が正当なものであれば、態度には出さなくても心の中では評価されて当然だと思っています。
humbleが「自分はまだまだ」と外からの評価に対して自己評価が低いのに対し、modesは自己評価が高すぎたり低すぎたりすることはなく、ちょうどいい程度に評価しています。
こういった違いを考えると、日本語でいうところの「謙遜している」はmodestの方がよりニュアンスが近いですね。humbleな人は例えば聖職者や、人の手助けをなんの見返りも求めず進んで行っている素晴らしい人なのに「自分の力がまだまだいたらない」と感じているような人をイメージするとより理解しやすいでしょう。
2. 褒められたときに謙遜して答える表現
褒められたときに、「謙遜している」と直接的な表現を使わなくても謙遜していることを示すことができます。例えば次のような言葉を使うと卑下している感じもなく「あ、この人は謙遜しているんだな」ということが伝わります。
That’s very nice of you. / You’re so sweet.
(優しいですね)
“That’s very kind of you.” “ You’re very kind.”とも言い換えられます。
「褒めてくれたなんて優しい人ですね」の意味合いです。相手もこんなことを言われたら嬉しい気持ちになることでしょう。
That means a lot to me.
(すごくうれしいです)
meanは「意味を持つ」という意味のある動詞で、That means a lot to me.
を直訳すると「あなたの言うことが私にとって大きな意味を持ちます」となります。褒めてもらえてうれしい、という気持ちがより強く感じられる言葉です。
I’m flattered.
(お世辞でもうれしいです)
flatterは「お世辞を言う」と他動詞ですが、be flatteredあるいはfeel flatteredで、「誰かが褒めてくれたり、自分を重要に思ってくれたことに対してうれしかったり誇らしかったりする」という意味になります。
I’m still learning. / I’m still working on it.
(まだまだです。まだ学んでいるところです)
「いや自分なんてまだまだですよ」と言いたい場合に便利の表現です。
例えば「英語上手だね」「ピアノ上手だね」などと褒められたときに使えますね。
You’re deluded.
(とんでもないです)
deludeという他動詞は、「相手や自分自身を実際と違うことを、あたかもそれが事実であるかのように信じさせる」という意味です。もっと簡単にいうと「思い違いをさせる」「惑わせる」となります。
You’re deluded.は直訳すると「あなたは思い違いをしている」となり、日本語で謙遜の表現に使われる「いえいえとんでもないです」に近い意味合いを持つ表現です。
まとめ
日本語の謙遜とは少し違っても、英語にも謙遜の表現があります。いつも「とんでもない」「まだまだです」と言ってばかりでは「なんて自信がない人なんだろう」と呆れられてしまうかもしれません。褒められるのはとても誇らしいことです!
最初は恥ずかしいかもしれませんが、まずはニッコリ笑顔で「ありがとう」と素直に相手の褒め言葉を受け入れましょう。
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