「いつでも、どこでも、どこの国の人とでも、協業する」ことが珍しいことではなくなりつつある現代。多くの日本企業がTOEICの点数を入社や昇進の条件としています。
しかし、点数をクリアしていても、いざ会話となると心許ないというケースが少なくありません。
グローバルビジネスに適応するためには、単語や文法の知識だけではなく「対話力」が必要になります。今回は、英語の対話力向上の鍵を握る「IQL」の重要性、ビジネスシーンで役立つIQLを実現する頻出フレーズを紹介します。
双方向に素早く論理的に!対話力を高めるためのIQLって何?
英会話にはリズムが必要です。言葉のキャッチボールによる素早く論理的なやりとりを積み重ねることで対話が成立するのです。
英語を使う環境においては問いかけに対してすぐに返答しなければ、相手に「意見がないんだな」「何も考えていないんだな」と判断される可能性も。自分が何を伝えたいのか、何をしたいのかを相手に明確に示すためにはいくつかのポイントを抑えて会話に臨む必要があります。
そこで重要になるのが、「IQL」。IQLとは、Interactive(双方向のやりとり)、Quick(素早く)、Logical(論理的)の頭文字をとった造語で、米国シリコンバレーを拠点に組織コンサルタントとして活躍する船川淳志さんが「英語のコミュニケーションに必須の能力」としてその著書などで提唱しています。
IはInteractive、双方向のやりとりを意味します。日本人は、つい聞き役に徹し、相手の話を黙って最後まで「拝聴」してしまう傾向があります。その結果、理解できなくなったり押し切られたりするのを避けるには、気後れせず相手の話を遮り、確認することが必要なのです。
QはQuick,素早い反応を意味します。英語では日本語よりも素早い反応が求められる場面が多くあります。グローバルビジネスの現場では、沈黙の時間は短ければ短いほどいいと思ってください。熟考よりも即答が肝心です。
LはLogical,論理的な話の展開を意味します。話の筋道が相手にわかりやすく伝わるよう、適切に接続詞や接続詞句を使う必要があります。
このように、英語を身につけるには「英語」の学習と合わせて、IQLの向上が欠かせません。逆に英語の環境でIQLを意識的に鍛えることで、語学力と思考力のスキルアップが相乗的に可能となります。次章で、IQLの観点から、覚えておくと便利なフレーズを場面ごとに挙げます。
IQLを実現する対話力向上フレーズを学ぼう
双方向の対話を実現する相手の意図を確認するためのフレーズ
相手の発言で分からないことがあった時、懸命に「察しよう」とするのではなく、臆せず確認をとるようにしましょう。ただし、相手の発言を遮るのではなく、あくまで相手が発言したセンテンスの後に確認することが大事です。「聞き上手は確認上手」という認識を持ちましょう。
【文例】
①Let me check my understanding.
(私の理解を確認させてください。)
②Let me summarize our conversation.
(これまでの会話を要約させてください。)
③I have a question.
(質問があります。)
④I am a little confused.
(私は少し混乱しています。)
⑤What is the difference?
(違いは何ですか?)
⑥I am not familiar with that term.
(私はその言葉をよく知りません。)
すぐに答えが出せないときのための沈黙を避けるためのフレーズ
相手の発言がわからないとき黙ってしまうと、相手は了解済みとみなし、話が一方的に進んでいってしまうことも。けれどどうしても言葉が思い浮かばないという場面では、下記のように「相手の発言を聞き返す」発言を覚えておくと有効です。
【文例】
①What do you mean by that?
(それはどういう意味ですか?)
②Could you clarify that?
(どういうことですか?)
③How about this?
(これはどうでしょうか?)
④I may have heard that・・・.
(・・・と聞いたかもしれませんが)
「持ち帰る」はどう表現する?最終決断が下せないときのフレーズ
会議や交渉で意見を求められた際、「持ち帰る」というフレーズはあまり良い印象を与えない場合もあります。日本の常套句では済まない…しかし自分には決定権がないときは、次のように分かる範囲で想定できるか状態を整理し、論理的に説明するようにしましょう。
【文例】
①I can think of two scenarios.
(2つのシナリオが考えられます。)
②There are 2 possible cases.
(2つのケースが考えられます。)
③I’ll come back to you with the current status.
(次には最新の情報をお伝えします。)
建設的議論に不可欠!前向きな質問をするためのフレーズ
グローバル化に伴い国籍も文化もさまざまな相手と話し合っている場合、ただ人の話を聞いていても、相手はこちらの真意をくみ取れないおそれがあります。円滑なコミュニケーションのために、積極的に質問をしてみましょう。
ただ気をつけるべきは、そのタイミングです。「これから質問しますよ」とワンクッション置き、相手に心理的な準備をさせてあげたうえで具体的な問いかけに入ることです。「聞き上手は質問上手」を肝に銘じ、下記のフレーズを身につけましょう。
【文例】
①Let me ask a few question first?
(まず、少し質問をさせてください。)
②I’d like to learn more about・・・
(・・・についてもっと知りたい)
③All I can say now is that・・・
(今私が言えることは・・・)
④I’m impressed.But what I would like to know is・・・
(印象的なお話でした。ただ私が知りたいのは・・・)
ロジカルに話すための切り返しフレーズ
厳しい交渉を行っている際に中途半端な説明をすると、「証拠は?」と切り返されることがあります。実際には会社に戻り詳細な検討が必要になることもあるかもしれませんが、その場で動揺せず冷静な返事をできるようにしましょう。
【文例】
①I don’t have exact number with me now, but・・・
(正確な数はいま手元にないが、しかし・・・)
②That may be true.
(そうかもしれません。)
③How can you be so sure?
(どうして断定できるのですか?)
④I’m not surprised to hear that.
(そう聞いても驚きません。)
⑤I can’t guarantee it now.
(今それを保証はできません。)
⑥Thank you for saying that.
(そう言ってくれてありがとう。)
⑦I can’t give a definite date now.
(いま確かな日にちは言えません。)
開き直り?言い訳?自分の会話力を率直に伝えることも重要です!
自分の英語力に自信がないとき、「話せない、自信がない」と打ち明けたいことがあるかもしれません。そうした場面では、非ネイティブ・スピーカーに配慮してもらえると嬉しいという気持ちを表し、互いに気持ちよく会話を進められるよう少しポジティブに伝えてみましょう。
【文例】
①I’m very happy to join this・・・
(この・・・に参加できてうれしい。)
②I’m not very confident about my English. But I’ll try my best.
(私は英語にあまり自信がありませんが、頑張ります。)
③I would like to ask your help.
(手助けをお願いします。)
実践で役立つIQLでグローバルコミュニケーションスキルを高めよう
日英語を使う環境では、学習したことの中身や習熟度より「会話をするためのマインドセット」が重要です。英会話に苦手意識が抜けない人はもちろん、グローバルビジネスに適用する対話力を身につけたい人は、IQL-Interactive(双方向のやりとり)、Quick(素早く)、Logical(論理的)の3要素を念頭に会話するといいでしょう。
多様な背景を持つ集団や組織が混在しているグローバルビジネスの現場では、習慣や常識、文化、意見の違いによる衝突や対立が生じるのはごく自然なことです。意見の対立を過度に恐れることなく、自分の意見をしっかり打ち出し、建設的な合意に導く対話力こそが、これからのビジネスシーンに求められる能力と言えるでしょう。
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