英検は、日本英語検定協会が主催する英語の資格試験です。毎年小学生から社会人まで幅広い年代が受けており、児童向けの「英検Jr.」やプレテストである「英検IBA」と合わせると、2019年度で合計390万人以上が受験しています。試験結果は高校や大学の入試で優遇されたり、海外留学時の語学力の証明として使えます。また就職活動でも役立ちます。
英検のレベルは難度ごとに7つに分けられており、どこでも好きなレベルから受験できます。今回は、このもっとも難度の高い英検1級についてご紹介します。
英検1級のレベルや必要な単語数はどのくらい?
気になる英検1級のレベルの目安ですが、一般的に「大学の上級程度」と言われています。現在日本国内で受けられる英語試験のなかでもっとも難しい試験とも言われており、TOEICの点数に換算すると最高点の990点に匹敵するのが特徴です。
英検1級に必要な語彙数は実に10,000~15,000ほど。2級が3,800~5,100、準1級だと7,500~9,000ほどなので、準1級から1級に上がるだけで1.5倍ほども必要語彙数が激増します。
ここ数年の合格率は公表されていませんが、最後に公表された2015年度の合格率は12%でした。この合格率の低さからも、英検1級がどれほど難しいかわかります。
英検1級の一次試験について解説!出題形式や概要は?
一次試験の内容は筆記とリスニングで、制限時間は合計135分(2時間15分)です。筆記はリーディングとライティングに分かれており、制限時間は合わせて100分。そのあとリスニングが35分あります。
特にリーディングとライティングのパートは、後半になるにつれて文章量も多く難易度が上がってきます。最初のほうの問題をいかに時間をかけずに終わらせ、あとの問題に使える時間を残しておけるかが鍵になります。
パートごとに内容を解説します。
一次試験①:リーディングは3形式!すべて選択式
前半のリーディングは、英文を読む力を試すパートです。リーディングのなかでさらに3つの形式(パート)に分かれており、答えはすべて4つの選択肢から1つ選ぶ選択式。特に長文は、文化や芸術、医療、科学、政治やビジネスなど多岐にわたるジャンルから出題されており、アカデミックな長文を読解する力が問われます。ここでは、3つの形式をそれぞれ詳しく説明します。
短文の語句空所補充
リーディングの1つ目の形式が、短文の空所補充問題です。短文や会話文などの短めの文章が全部で25問あり、それぞれ一部分空所になっているので適切な語句を補います。1問あたり30秒が目安です。
このパートでは選択肢が単語だけなので、単語の意味を知っているかどうかの語彙力がすべて。前述のとおり、英検1級で必要な語彙数は10,000以上もあります。考えてもわからない単語にずっと悩んで時間をかけるよりも、知らない単語は思い切って勘で1つ選び、どんどん次に進みましょう。
■例題
Cell phones have become a permanent ( ) in modern society. Most people could not imagine living without one.選択肢
1: clasp
2: stint
3: fixture
4: rupture答え:3
長文の語句空所補助
2つ目の形式が、長文の空所補充問題。説明文や評論文など長めの文章が全部で2つです。1つの長文につき3問ずつ空所になっているので、適切な語句を補います。1問あたり目安は2分で、6問全部で12分に収めたいところ。
このパートは、英単語の語彙力に加えて、文脈の理解も問われます。問題によっては、文章を全部読まなくても空欄の前後を確認して答えられる問題も。しかし、できれば全文読み、内容を理解したうえで答えられるとベストです。ここでも1問あたり2分の目安を守り、次の長文内容一致問題にできるだけ時間を回すことを意識しましょう。
■例題(一部抜粋)
Based on the Star Wars science fiction movies, Jediism is a popculture philosophy with a substantial worldwide following. Its practitioners seek to emulate a group of spiritual warriors from the movies who are masters of a phenomenon called “the Force,” an energy that underlies all creation and gives the warriors supernatural abilities. Followers see Jediism as a legitimate religion, but as a spiritual practice anchored in fiction it is the focus of frequent ridicule. In response, however, believers point out that many members of other religions
( 26 ).選択肢
( 26 )
1: often claim religious ignorance
2: are not supportive of wild beliefs
3: have been persecuted in the past
4: do not take all their sources literally答え:4
長文の内容一致選択
リーディングパート最後の形式が、長文の内容一致選択問題です。長めの文章が全部で4つあり、1つの長文につき2問もしくは3問ずつ、長文の内容に関する質問と選択肢があります。質問数の合計は10問で、1問あたり5分の回答時間が目安です。
ひとつ前の「長文の語句空所補助」に比べて、各長文はさらに長いものに。問題と選択肢もそれぞれ長文になり、内容も学会の論文のようなものが多いので、非常に難しいパートです。
■例題(一部抜粋)
According to the economic law of demand, there is a negative correlation between the price of an item and the demand for it. Significant price increases of a product by a company, therefore, should motivate consumers to switch to a competitor that provides an equivalent product at a more reasonable price. In 1899, however, economist Thorstein Veblen coined the term “conspicuous consumption,” arguing that specific segments of society were unconcerned with the market value of certain products and would spend lavishly on anything that provided opportunities to display their wealth and prominence. These goods items such as rare and fine wines and handcrafted watches have subsequently become known as “Veblen goods.” Unlike ordinary consumer goods, the price increase even a substantial one of Veblen goods will not have an adverse effect on the volume of their sales to wealthy consumers and may even add to their appeal.質問
What is one thing that we learn about “Veblen goods”?選択肢
1: Their popularity among some consumers is defined more by the degree of
wealth they signify than by the price of the goods themselves.2: Because they are subject to frequent shifts in demand, manufacturers that
produce them often do so at a considerable risk.3: Consumers looking for bargains are often drawn to them as the goods
frequently experience periods where they are lower in price.4: They are more likely to follow the law of demand than ordinary consumer
goods due to their superior quality.答え:1
一次試験②:ライティング(英作文)
リーディング3形式(パート)が終わったら、いよいよライティング問題。このライティングで、一次試験の筆記パートはすべて終わりです。
ここまでの問題はすべて選択式でしたが、ライティングパートのみ記述式に。ひとつだけトピック(テーマ)を提示されるので、それについて自分の言葉で記述していきます。目安時間は15~20分ほどです。
■例題
Are economic sanctions a useful foreign-policy tool?
テーマを確認してざっくり全体の構成を練るのに最大5分、そのあと実際に英文を書くのに10分ほどかけ、最後の見直しに2、3分とれるといいでしょう。見直しではスペルミスがないか、時制にズレがないか、主語述語は抜けていないかなどを中心に、サッと確認します。
ちなみに設問では、トピック(テーマ)の他にも全体の構成の指示があるので、最初に必ず目を通しましょう。例えば「あなたの答えに対する理由も3つ提示すること」や、「導入文→本文→結論の順で書くこと」など、構成を考える際に重要な指示が英語で書いてあります。文字数の指定も、だいたい全部で200~240語くらいです。
ライティングがすべて終わるまでの制限時間が、計100分。短文の語句空所補充からしっかり目安時間を意識して、できるだけライティングに時間をかけられるように時間調整することが重要です。
一次試験③:リスニングは4形式!すべて選択式
リーディングとライティングの筆記パートがすべて終わったら、続いてリスニングパートに入ります。前述したようにこのパートの制限時間は35分です。
リスニングもすべて回答は選択式になっていて、形式(パート)は4つに分かれています。すべて音声の放送回数は1回のみなので注意しましょう。1問あたりの解答時間は10秒が目安です。ここから各形式を詳しく解説します。
会話の内容一致選択
リスニングの1つ目は「Dialogues」、つまり「会話」の内容一致選択問題です。短い会話の音声を聞いて、質問に対する答えを4つの選択肢から選びます。問題は全部で10問です。
■例題
人物A:Have you read this newsletter from Kate’s school?
人物B:Not yet. Is there anything interesting?
といった会話が何往復か続き、それに対する質問が1問出されます。1つの会話につき質問は1問です。9問目や10問目になると、1人あたりの会話量が長くなってくるので注意しましょう。
文の内容一致選択
2つ目は「Passages」です。Passage=「文章」の一節を聞いて、その質問に対する答えを選びます。読み上げられる文章は全部で5つで、それぞれ2問ずつ、合計10問あります。
それぞれの文章にはタイトルがついているので、音声を聞く前に何についての文章なのか予想をつけます。質問例としては「What is one reason for~?」など、理由を問うものを含め、さまざまです。
Real-Life形式の内容一致選択
Real-Life形式とは「Real(現実)」「Life(生活)」、つまり実生活のなかでありうる状況を再現したリスニングです。例えば会議での会話やTV番組の放送内容、デパートのアナウンスや留守番電話の録音内容など、日常生活で起こりうる1コマの音声を聞いて、質問に対する答えを選択します。日常生活のリアルさを出すために、背景に街中の雑音や効果音などが入っているのも特徴です。
問題は全部で5問。このパートの大きな特徴として、各設問にそれぞれシチュエーションと質問がすでに記載されています。各音声が流れる前に、それぞれ10秒ずつ問題を先読みできる時間が与えられます。この時間で落ち着いてシチュエーションと質問に目を通しておけば、そのあと流れる音声の内容が予測しやすくなります。
Situation: You live in the US and need to fly to Canada in one week due to a family emergency. Your Japanese passport expires in two months. A travel agent tells you the following.
質問
What should you do?選択肢
1: Consult with officials at the airport in Canada.
2: Apply for a temporary passport online.
3: Go downtown to get a new passport.
4: Visit a Japanese consulate after arriving in Canada.答え:1
インタビューの内容一致選択
リスニング最後の形式はインタビューです。インタビューしている会話の音声を聞いて、それに対する質問2問の答えを選びます。インタビューは1つのみです。ここもそれぞれ回答時間の目安は10秒ずつ、合計20秒で終わらせましょう。
英検1級の二次試験について解説!面接の課題とは?
ここまでで一次試験は終了し、続いて二次試験です。二次試験は英語を使った面接形式のスピーキングテストです。所要時間は10分で、面接官は2人。もちろん会話はすべて英語のみです。
この二次試験の評価ポイントは、スピーチと受け答え、文法、語彙、発音の4つ。スピーチは与えられたトピックに従い、要点と根拠をまとめる構成力や、それをわかりやすく言葉で伝えられるかが評価されます。
受け答えは、面接官の質問に対する答え方や、積極的に会話をしようとしているかがポイントです。ここからは、面接の流れを具体的にご紹介します。
自由会話
二次試験は個室で行われます。部屋に入って席についたら、最初に面接官とお互いの自己紹介から開始。自分の名前だけではなく、好きなことや趣味、職業など自分のことを少し加えて話せるとベターです。続く話題がその流れになりやすく、自分も話したい内容が話せます。
このあたりは簡単に頭の中で用意しておきましょう。ほかにも、面接官から「今日のお昼は何を食べましたか?」といった簡単な質問がくることがあります。
二次試験のメインは次のスピーチですが、この自由会話の時間ももちろん採点対象に。最初の緊張をほぐしつつ、次のスピーチへの流れを作りましょう。
スピーチ
そのあと、面接官よりトピックカードを受け取ります。トピックカードには、5つのトピック(テーマ)が書かれています。1分間与えられるので、カードを見ながらこのあと何について話すかを頭の中で考えます。このとき、メモをとることはできません。
トピック(テーマ)の例題
Do the rich have a responsibility to help the poor in society?
そのトピック(テーマ)について自分はどう思うか、根拠も含めて意味の通った構成を考えます。トピック(テーマ)の内容は、社会性の高いさまざまな分野があるようです。
世界経済や貧困問題、環境問題、教育現場の問題、治安や選挙、世界的イベントなど、内容は多岐にわたります。普段から世界情勢や環境問題などのニュースを見て、それに対して自分はどう思うかを簡単に言語化できるようにしておくことが大切です。
1分たったら、面接官よりスピーチ開始の合図があります。5つのうちどのトピック(テーマ)を選んだのか答え、その内容について2分間のスピーチをします。2分間が過ぎると、スピーチ途中であっても終了です。
Q&A
2分間のスピーチが終わると、最後に面接官からいくつか質問がなされます。質問数は場合によって違いますが、だいたい2問くらいが多いようです。質疑応答の時間は4分間。
選んだトピック(テーマ)に関する内容や、スピーチ内容に対してさらに詳しく聞かれるので、落ち着いて受け答えしましょう。「~についてあなたはどう思いますか?」など、自分の考えや意見を聞かれることも多いようです。
一言で答えて終わるのではなく、「私はそれに対してこう思います。なぜなら~だからです。」のように、自分の考えに対する根拠や具体例を説明できると説得力が上がります。積極的にたくさん話そうとする姿勢も大切です。
質問のやりとりが終わったら、これで試験はすべて終了。トピックカードを面接官に返し、お礼を言って退室しましょう。
まとめ
英検1級の流れと内容について解説しました。難しい試験だと聞くと思わず身構えてしまいますが、その分得られる英語の知識と対応力は大きく、一生の財産に。ご自身の英語力の証明として、ぜひ今回の記事を参考にチャレンジしてみてください。
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