『LISTEN―知性豊かで創造力がある人になれる』『「聞く力」こそが最強の武器である』など、「聞く力」について語った本がここ最近は人気があるようです。自分が伝えたいことを話すだけでなく、相手の気持ちに配慮して耳を傾けることの大切さを強調していますが、英語のリスニングでも、実は「聞く態度」が重要な役割を果たしているのではないでしょうか。ここでは英会話に必要な「聞く力」と、それを鍛えるための学習法をご紹介します。
発音や単語の意味以外に必要な、英語を「聞く力」とは?
英語のリスニングが苦手な人はたいてい、「発音が聞き取れない」「単語の意味がわからない」のが原因だと思っていないでしょうか。英語を聞き取るときには発音や単語の知識だけでなく、「聞く態度」が大きく関係しています。例えばどのような力が必要なのか考えてみましょう。
会話の5W1Hを意識する
私の知っている英語学習者で、リスニングがとても得意な人がいます。単語をよく知っていて発音が聞き取れるということもあるのですが、それ以上に、「どんな状況で、話し手は何を伝えようとしているのか」を積極的に理解しようとしています。
例えば英会話のビデオを見て、「この人は学生さん?社会人?」「何か困ったことがあるみたいですね。助けてほしいのでしょうか?」と、話している言葉以上に、「どこで(When)、誰が(Who)、いつ(Where)、何を(What)、なぜ(Why)、どのように(How)」という5W1Hを、話し手の表情や話しぶりからつかみとろうとします。よりよい聞き手になるには、英語の知識以上に、会話の状況を把握する力が大切なのです。
リスニングをグッと楽にするために意識すべきこと
会話を聞き取ろうとするとき、まず「今、I’d likeって言った?」のように、話している言葉をつかもうとしていないでしょうか。言葉以上に、次のようなことを意識するとリスニングがグッと楽になります。
Where?(どこ?)
画面やイラスト、バッググラウンドの音から、「街の中」「オフィス」「レストラン」など、場所を特定します。
Who?(誰?)
オフィスワーカー、レストランの客といったそれぞれの人の立場と同時に、「友人同士」「家族」「見知らぬ人同士」など、互いの関係を推測します。
When?(いつ?)
朝の出勤前、夕食中、休暇中など、「いつ」かということから、会話の状況を理解します。
この「Where?(どこ?)」「Who?(誰?)」「When?(いつ?)」を、言葉だけでなく場面の状況や声の調子などから推測します。すると、聞こえてきた単語から「What?(何を?)」「Why?(なぜ?)」「How?(どのように?)」を頭の中で組み立てやすくなります。
例:
状況:街の中に2人の若い女性がいて、1人がI’m going shopping.(買い物に行くの)と言っている。
Where? (どこ?)=買い物したり食事したりできる街の中
Who? (誰?)=学生か社会人で、友人同士か知り合い。1人が自分の行動を説明しているので、たまたま会ったところと思われる。
When? (いつ?)=放課後か会社帰り、または休日
What? (何を)はセリフから「買い物」であるとわかります。頭の中でこういった状況設定をすると、次に来るセリフから「Why?(なぜ?)」「How(どのように?)」をつかむ用意が整うのです。
ノンバーバルコミュニケーションを活用する
英会話のリスニングに必要なのは、単語の発音や意味だけではないことがイメージしてもらえたでしょうか。例えば、以下のような「ノンバーバルコミュニケーション」(非言語コミュニケーション)の情報が、状況理解に役に立ちます。
表情
「うれしそう」「緊張している」「困惑している」といった感情を、話している人の気持ちからつかみます。
声、話し方
友だち同士のカジュアルな話か目上の人に丁寧に話しているかといったことは、言葉だけでなく声の調子からもわかります。
しぐさ
興奮しているとき、一生懸命何かを伝えようとしているときはアクションが大きくなり、落ち着いているときや沈んでいるときは動きが小さくなります。
服装
仕事中、オフの時間、あらたまったお出かけといったことは、服装からも推測できます。
こういった、見たり聞いたりして得られる情報を総動員して、会話の中で何が起こっているかを理解するのです。
状況を把握して英語を「聞く力」を鍛えよう
それでは、実際の会話を例に、ノンバーバルコミュニケーションから状況を読み取り、「聞く力」を鍛える方法をご紹介しましょう。
ノンバーバルコミュニケーションから5W1Hを確認する
以下のような会話があったとします。画像とセリフから、状況を把握してみましょう。
男性: What’s your plan for the weekend?(週末の予定は?)
女性: I don’t know. Maybe I’m going to stay home and relax. What about you?(わからない。家でゆっくりするかも。あなたは?)
男性: I‘m thinking of visiting the museum. The Van Gogh exhibition is on. Will you come?(美術館に行こうかと思って。ゴッホ展をやってるんだ。行く?)
女性: Sounds nice. Which museum?(いいわね。どの美術館?)
男性: The Modern Art Museum. How about Saturday afternoon?(近代美術館。土曜の午後はどう?)
ノンバーバルコミュニケーション
・2人とも穏やかに微笑んでいる
・女性がやや手を開き、男性は両手でカップを押さえている。落ち着いてゆっくり話をしている雰囲気。
・カジュアルな服装で、リラックスしている。
音声がある場合には、「ゆっくり話しているか早口か」「声の調子が高いか低いか」といったことにも注意を向けてください。
5W1H
Where?(どこ?)=カフェの中
Who?(誰?)=年齢が近くラフな服装。友人同士、恋人同士、同僚、夫婦。
When?(いつ?)=ラフな服装で飲んでいるのはお酒ではなくカフェなので、会社の昼休みか休日。
What?(何を?)=穏やかな表情から、何気ない会話だと推測できる。plan(予定)、weekend(週末)といった語が聞き取れれば、週末の予定を話しているとわかる。
Why?(なぜ?)=Will you come?(行く?)などから、相手を誘おうとしていることがわかる。
How(どのように?)=Sounds nice.(いいわね)から、誘いに応じようとしていることがわかる。
コツがつかめたら、ぜひYouTubeの動画などで、5W1Hをつかむ練習をしてみてください。
会話の成り行きを推測する
状況理解が進むと、会話の先を読み、話の流れを推測することができるようになります。例えば、以下のようなことを意識しながら聞いてみてください。⇒( )内は聞いているときの心の声です。
男性: What’s your plan for the weekend?
⇒(週末の予定を聞いている。女性に何か言いたいことがある?)女性: I don’t know. Maybe I’m going to stay home and relax. What about you?
⇒(何も予定がない。これはチャンスかも)男性: I‘m thinking of visiting the museum. The Van Gogh exhibition is on. Will you come?
⇒(やっぱり誘った。女性は受けてくれるかな?)女性: Sounds nice. Which museum?
⇒(OKみたい。どこに行くのかな?)男性: The Modern Art Museum. How about Saturday afternoon?
⇒(土曜の午後か。待ち合わせ場所は?)
このように聞いていくと、次に「場所」に関する情報が出てくると予測できるのです。
自分にどれくらい「聞く力」があるか、オンライン英会話レアジョブのレッスンで試してみましょう。先生の言うことを一言一句聞き取ろうとするのではなく、「今どんな状況にあり、これから先生は何をしようとしているのか、自分は何をすればいいのか」を考えるのです。
初めての先生が、Hello!とにこやかに登場したとします。特に言われなくても、これから自己紹介が始まるとわかりますね。先生がOK!と言ってうなずいていたら、今までのところは大丈夫、これから次のセクションに進むか、先生から何か質問が出たりするはずです。できればビデオをオンにして、先生の表情やしぐさから、レッスンの流れを読み取ってみましょう。
まとめ
SNSを使って短いメッセージを伝えさえすれば会話が成立するようになり、ノンバーバルコミュニケーションを苦手とする人が増えているようです。しかし、ノンバーバルコミュニケーションは会話を円滑に進めるための重要なスキル。今では、これを鍛えるためのビジネス研修が行われることもあります。
TOEICのスコアが高く、単語はある程度知っているはずなのに、リスニングの力がなかなか伸びないという人は、ぜひ一度自分のノンバーバルコミュニケーションのスキルと「聞く力」を見直してみてください。
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