英語の勉強では、避けては通れない文法。文法は、ややこしいものが多くありますが、そのなかでも、「過去完了形」に頭を悩ませている人は多いのではないでしょうか?今回は、つまずきやすい過去完了形について、「完了時制」「仮定法」「大過去」の3つ文法項目から詳しく解説します。
過去完了形がなかなか理解できないという人や、現在完了や過去形との違いがよくわからないという人は、ぜひこの記事でしっかり確認してみてください。
過去完了形の表し方は「had+過去分詞」
過去完了形は「had+過去分詞」で表現します。現在完了形のhave+過去分詞と似ていますが、過去に完了したことを表すので「have」ではなく「had」を使うのがポイントです。
When my son arrived home, I had been cooking.(息子が帰ってきたとき、私は料理をしていました。)
He had stayed in Japan for two weeks before he moved to China.(彼は中国へ移動する前までは日本に2週間滞在していました。)
過去完了形が使われる3つの重要な文法項目を理解しよう
続いて、過去完了形の「had+過去分詞」の形が登場する、3つの重要な文法項目、「完了時制」「仮定法」「大過去」について、それぞれ解説していきます。
過去完了形が苦手という人は、この3つの文法項目の観点で整理できていないことが、主な原因かもしれません。それぞれどういう内容の文法項目か、確認しましょう。
1. 「完了時制」で使われる場合
「完了時制」は、「現在完了」「過去完了」「未来完了」の3種類あり、ある時点で起きた動作や状態の完了や、経験、結果、継続を表すときに使われます。
「完了時制」では、過去のある時点から、別の時点で経験したこと、継続していたことなどを表現したい場合に、had+過去分詞で表す「過去完了」を使います。
2. 「仮定法」として使われる場合
「仮定法」とは、事実ではないことを表現する文法です。実際に起きてない出来事や、現実には不可能でも、起きてほしいという願望を表すときに使われます。
「仮定法」の中で、had+過去分詞の過去完了形を使うのは、「仮定法過去完了」の場合です。過去に起きた出来事や状態について、実際には起きていないことを仮定するときに使います。
3. 「大過去」を表すときに使われる場合
「大過去」とは、ある過去のできごとを基準にして、それよりもさらに過去のことを表す概念です。「大過去」と「完了時制」は分けて提示はしていますが、実は、完了時制の中の過去完了形had+過去完了は、「大過去」としての役割も含んでいます。
この2つには、特徴について大きな違いがあります。完了時制の過去完了形は、過去のある時点からと、それより過去の時点までの「期間」を表すのに対して、大過去はある過去よりも過去の「時点」を表すのに使います。面で時間の流れを捉えるのが、完了時制で、点で時間を捉えるのが大過去と覚えておきましょう。
完了時制|「過去完了形」の4つの用法を理解する
ここからは、完了時制の「過去完了形」として使われる4つの用法を、それぞれ例文とともに解説します。
完了時制の「過去完了形」とは
「完了時制」は、ある時点で起きた動作や状態の、完了、結果、経験、継続を表現するものです。時制の基本である、現在・過去・未来と同様に、完了時制にも「現在完了形」、「過去完了形」、「未来完了形」があります。
基本となる「現在完了形」は、基準が現在で、過去から現在までのことを表すのに使います。一方、「過去完了形」は基準となる時点が、過去になります。基準となる過去の時点と、そのさらに過去の間の話をするときに使うのが、「過去完了形」です。
なので、過去完了形を使うときは必ず、「ある時点の過去」と「それよりさらに昔の過去」の両方が、話の中に出てきます。ただし、日本語で訳すと、どちらも過去形のように表すので、実際は2つの時間軸は異なるということに注意しましょう。
過去完了には、「完了」、「結果」、「経験」、「継続」の4つの意味の使い方があるので、ここからは、例文とともに一つずつ詳しく解説していきます。
用法1. 完了:〜し終えていた
過去完了形の1つめの用法は、「完了」の意味を表す用法です。過去にすでに終えた出来事や、現象について、「(過去のある時点で)〜し終えていた」と言うときに使います。
過去完了形「完了」の例文
以下で、過去完了形の「完了」の意味で使われている例文を見てみましょう。
She felt relieved because she had finished her work.(彼女は仕事を終えたので、安心していました。)
My daughter hadn’t finished her homework when my husband came home.(私の娘は、夫が帰ってきた時にはまだ宿題を終えていませんでした。)
Had the carpenter already finished building when we came here?(私たちがここへ越してきたとき、すでに工事は終わっていましたか?)
用法2. 結果:〜した結果、〜であった
過去完了形の2つめの用法は、「結果」の意味を表す用法です。過去完了形で示されているある時点で生じた出来事が、現在に近い方の過去まで影響をしたということを表します。「(過去のある時点で)〜した結果、〜であった」と言うときに使います。1つめに紹介した「完了」の用法と意味が近いので、「完了・結果」とひとまとめに解説されている場合もあります。
過去完了形「結果」の例文
以下で、過去完了形の「結果」の意味で使われている例文を見てみましょう。
I got a good score because I had studied very hard.(一生懸命勉強をしていたので、良い点数をとりました。)
I was in a lot of trouble because I hadn’t checked the map in advance.(事前に地図を確認していなかったので、とても困りました。)
Did you oversleep because you had forgotten to set an alarm?(アラームをセットし忘れたために寝坊したのですか?)
用法3. 経験:〜したことがあった
過去完了形の3つめの用法は、「経験」の意味を表す用法です。過去の時点で経験していたことについて、「(過去のある時点で)〜したことがあった」と言うときに使います。
過去完了形「経験」の例文
以下で、過去完了形の「経験」の意味で使われている例文を見てみましょう。
I had been to London before I was five years old.(私は5歳になる前にロンドンへ行ったことがありました。)
My son hadn’t swum when he was a kindergarten child.(私の息子は幼稚園児だったときには泳いだことはありませんでした。)
Had Tomoko sung at Budokan before she was twenty?(トモコは20歳になる前に武道館で歌ったことがありましたか?)
用法4. 継続:ずっと〜していた
最後に紹介する過去完了形の用法は、「継続」の意味を表す用法です。「(ある過去の時点まで)ずっと〜していた」と言うときに使います。
現在完了形の場合は、現在が時間軸の中心となって、過去のある時点から、現在までの継続を表しますが、過去完了形の場合は、ある過去が時間軸の中心となり、その過去のさらに過去の時点から、ある過去までの継続を表します。
過去完了形「継続」の例文
以下で、過去完了形の「継続」の意味を表す例文を見てみましょう。
I had lived in China for five years before I moved to Japan.(彼はアメリカに渡る前の5年間ずっと日本に住んでいた。)
He hadn’t known about taxes until he became an adult.(彼は大人になるまでずっと税金について知りませんでした。)
Had we known each other for twenty years when you divorced?(あなたたちが離婚したとき、私たちが知り合ってから20年経っていましたか?)
ややこしい「過去完了形」と「過去完了進行形」の違い
「過去完了形」に苦手意識がある人は、「過去完了進行形」と混同してしまうのも原因の一つと考えられます。2つの違いをしっかりと理解しておきましょう。
「主語 + had been + 現在分詞」として表す「過去完了進行形」は、過去のある時点から、過去の別の時点まで、続いていたことを表現するのに使います。過去完了形との違いは、過去完了進行形を使うと、絶え間なくずっと続いていたというニュアンスが強調されることです。
Tom had read a book for an hour when I came home.(私が帰ったとき、トムは1時間読書をしていました。)
Tom had been reading a book for an hour when I came home.(私が帰ったとき、トムは1時間前からずっと読書をしていたところでした。)
上の例文は同じ内容ですが、1つめは過去完了形、2つめは過去完了進行形を使っています。意味はほぼ同じですが、2つめの例文の方は、1時間前からずっと休憩もなく読書をしていたという意味が読み取れます。
完了時制の見分け方|「現在完了形」の過去バージョン
「完了時制」の中でのhad+過去分詞の形は、実は、この後で説明をする「大過去」の役割も含んでいます。完全にこの2つを切り離して見分けることよりも、それぞれの性質や使い方を整理しましょう。
一方で、完了時制の「過去完了形」は、単純に「現在完了形」の過去バージョンと捉えるのがおすすめです。「現在完了形」を理解していれば、「過去完了形」もスムーズに理解できるため、「完了時制」に苦手意識がある人は「現在完了形」から、もう一度復習するのがおすすめです。
仮定法|事実とは違う過去を仮定する「仮定法過去完了」を理解する
過去完了形が「仮定法過去完了」として使われる場合について解説します。仮定法とは、事実とは違う過去を仮定して表現する方法ですが、過去完了形になるとどうなるのでしょうか。例文と合わせて解説していきます。
仮定法の「仮定法過去完了」とは
実際には現実にならなかった過去のことについて、「もし〜だったら、〜だっただろうに」と仮定するときに使うのが「仮定法過去完了形」です。「If 主語 had+過去分詞~, 主語 助動詞の過去形 +have+過去分詞~」という形が基本表現となります。
ポイントは、最初のIf節の中に、過去完了形のhad+過去分詞が入っていることです。仮定している内容は、実際には起こらなかったことなので、その後の節も、助動詞の過去形(would、could、mightなど)になり、仮定を表します。
例文で見る「仮定法過去完了」の使い方
解説だけでは理解が難しいと思うので、仮定法過去完了がどのように使われているのか、例文で見ていきましょう。
If I had been awake, I would not have missed the airplane.(もし起きていたら、私は飛行機に乗り遅れることはなかっただろうに。)
→実際には起きていなかった(寝ていた)ので、飛行機に間に合わなかったという意味になります。
If you had gone home early, you could have met me.(もしあなたが早く帰宅していたら、会えただろうに。)
→実際には早く帰宅できなかったので、会えなかったという意味になります。
仮定法の見分け方|If節と助動詞の過去形+have+過去分詞に注目
過去完了形が使われている文法の中でも、仮定法として使われているということは、If節があるので、すぐにわかるでしょう。仮定法過去完了のポイントは、If節の中に過去完了形が入っていることと、それによって実際の事実とは異なることを仮定しているので、その後の節は、「助動詞の過去形+have+過去分詞」になることです。
大過去|過去のできごとのさらに過去のことを表すやり方を理解する
最後に、「大過去」について解説します。ここまで過去完了形の用法を説明してきたので、混乱しそうになるかもしれませんが、それぞれ理解して記憶に定着させましょう。先に説明した用法と同様に、大過去も例文と合わせて説明します。
「大過去」とは
「大過去」とは、ある過去を基点にして、それよりさらに過去のことを指す概念です。大過去を使うと、過去の出来事の前後関係を明確に表現することができます。先に起きた古い方の出来事を説明する際に、「過去完了形」で表します。過去に起きた2つの出来事を、前後がわかるように説明したいときに使うといいでしょう。
例文で見る「大過去」の使い方
大過去も、解説だけでは理解できない場合があるでしょう。大過去を使った例文を見ていきましょう。
Tom lost the sweater which I had sent him for his birthday.(トムは、私が誕生日に送ったセーターをなくしてしまいました。)
上の文では、基点となるのは、Tom lost the sweater (トムはセーターをなくした)という過去の出来事です。過去完了形が使われている、I had sent him for his birthday(私が誕生日にセーターを送った)の部分は、基点となる過去よりも前に起きたこと、つまり「大過去」ということになります。このように2つの過去の出来事の前後関係は、過去完了を使うことで明確になります。
I heard that she had gotten married for two years.(私は彼女が2年前に結婚したと聞きました。)
上の例では、基点となるのは、I heard that(私は聞いた)という過去の出来事です。過去完了が使われているshe had gotten married for two yearsは、基点となる過去よりも前に起こった出来事で、「大過去」を表しています。
前後関係が明らかなら過去形だけで「大過去」を表せる
過去完了形を使わなくても、大過去を表すことができる場合があります。
Tom lost the sweater which I had sent him for his birthday.(トムは、私が誕生日に送ったセーターをなくしてしまいました。)
↓
I sent Tom the sweater for his birthday and he lost it.(私はトムの誕生日にセーターを送りましたが、彼はそれをなくしてしまいました。)
上の例文では、1つめの文は、先に起こった内容を関係代名詞を使って後ろから説明していますが、2つめの文では、過去に起こった2つの出来事を、前後関係が明らかにわかるように、発生した順に並べて書き換えています。起こった順に述べる場合は、過去形だけで大過去を表すことができます。
また、before, afterなどのように前後関係がわかるような接続詞、が使われている場合も、過去形のみで大過去を表現できます。
My son went to bed after he had finished his homework.(私の息子は宿題を終わらせてから寝ました。)
↓
My son went to bed after he finished his homework.(私の息子は宿題を終わらせてから寝ました。)
大過去の見分け方|過去形に書き換えられるなら「大過去」
過去完了形を使う文法の中で「大過去」は、「完了時制」と混同しやすい人が多いでしょう。完了時制は過去のある時点から別のある時点までの「期間」について言い表すときに使われます。対して大過去は「過去のある時点と別の時点との前後関係を明確にし、より古い過去の「時点」を言い表すときに使われます。
つまり、言い表したい内容が、「期間」なのか「時点」なのかという違いがあります。大過去の場合は、過去のある時点を表現するため、起こった順に並べることで、過去形だけの文章に書き換えることが可能です。なので、過去形に書き換えられるなら「大過去」と言え、同時に「完了時制ではない」と言えます。
ただし、「過去形に書き換えられないから大過去ではない」とは言えません。完了時制の中で使われる過去完了形のhad+過去分詞は、過去に起こった出来事の前後関係を明らかにしているため、「大過去」を表す役割もしていると言えます。完了時制と大過去は完全には切り離せないので、性質と使い方をそれぞれしっかりと整理しましょう。
過去完了形を理解したら
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