受け取れる年金が少なくなったり、税金が今後どんどん高くなることが予想されるなどから、老後あるいは早期退職で海外移住を考え始めているひとも少なくないのではないでしょうか。
長年海外生活をしている著者の周りも、40~50代になってくると「老後はどこに住むか」という話題が日常的にのぼるほど。休みのたびにあちこち旅行をして将来住むのにふさわしい場所を探している人もいれば、候補をすでに絞って一ヶ所滞在を繰り返しながら感触を確かめている人もいます。
海外生活にはいろいろなハプニングや不便さもつきもの。細かいことをあまり気にしない、おおらかな性格の人であれば第二の人生を海外で満喫するのも選択肢の一つだと思います。
移住したからといってずっと海外で過ごさなくても、一年から数年の限定した期間だけ過ごすひとも多いようです。
今回は将来シニア世代での短期あるいは長期での移住に興味ある人向けに、メリットや考慮すべき点、おすすめの国などをご紹介します。
将来海外移住をするメリット
自分の今後も踏まえ、海外生活をしていて感じる主なメリットには次の6つが挙げられます。
第2の人生を楽しめる
人生100年時代の今、健康でいれば引退後もまだまだ長い時間を楽しむことができます。医療も発達しているので、将来は平均寿命ももっと上がる可能性もありますよね。どうせ長生きするなら自分だけの時間を楽しまないと損!これまでやりたいと思っていても挑戦できなかったことに挑戦してみることで、違った自分を発見できるかもしれません。
ずっと夢だった世界一周旅行をしたり、欧米からアジアへ移住したりなどセカンドライフを楽しんでいるたくさんの方にお会いしましたが、とてもパワフルで人生満喫している印象でした。若い頃に勢いで海外移住する人も多くいますが、人生経験を積んでからはまた違った楽しみ方があるように見受けられます。.
自分にとって最適な気候の地域に住める
日本の魅力はなんといっても四季があることですが、人によっては寒暖差が辛いという人もいるでしょう。一年中夏の国、夏と秋だけの国などいろいろな国がありますし、同じ国でも場所によって気候が違うところもありますので、自分の体質に合った気候に身を置くことが可能です。
また、気候だけではなく、一年中きれいなビーチを楽しむこともできるでしょう。日本だと大都市圏に住んでいる場合、なかなか田園風景を身近に感じられませんが、海外には都心と田舎の距離がとても近くて、毎日でも海や山に行くことが可能です。タクシー代も日本よりはるかに安いので、「ちょっとビーチまでタクシーで」ということも。
日本よりも生活費が安く済む場合がある
国によりますが、日本はアジアでも生活費が高い国の一つです。特にアジアであれば食費や交通費は他国の方がはるかに安いです。欧米の場合は、東欧などの一部を除いて日本より生活費は高くなる傾向がありますが、アジア圏なら家賃も物価も安いのでおすすめです。
いろいろな人との出会い
海外に住むと、今まで出会ったことのないような人たちに出会うチャンスがたくさんできます。海外経験豊富な人も多いので、話をするのも楽しいでしょう。若者や年上などいろいろな年代の人と知り合うことで、新たなモチベーションや活力が湧くことも期待できます。海外の調査でも老後海外移住をした人はより健康的になるという結果が出ています。
日本は島国なので海外旅行に特別感を抱くものですが、陸地続きの海外は周辺国への旅行も国内旅行感覚でできるというメリットがあります。
旅に出れば必然と新たな出会いが訪れるもの。現地の人とコミュニケーションするのも楽しみの一つですよね。長く健康でいるためにも様々な人と接することは大切です。海外は見知らぬ人とのコミュニケーションが取りやすいのもおすすめしたい理由の一つです。
新たなスキルの習得
海外で生活すると、英語に加えて現地の言葉、その国ならではの伝統工芸や料理などの習い事、スポーツなど、今まで触れなかったことに接するので、新たな趣味を見つけるひとも多くいます。
新しいことにトライすることで自信もつきますし、知らなかった自分を発見できるのも楽しみの一つです。
生活のリセット
中には人間関係にしがらみを感じて、いっそ全て断ち切りたい!なんて感じている人もいるかもしれません。どうしても閉塞感から抜けられない、そんなときは、環境をガラリと変えてみるものひとつの手。誰も知らない新たな土地で第二の人生を過ごしてみたら意外と肌にあって生きやすさを感じられるようになった、という人もいます。
海外在住のわたし個人の意見ではありますが、同調圧力が少なく、ありのままの自分でいることが容易なように感じます。なんとなくいまの環境に窮屈さを感じている人は、海外で生活をリセットしてみるというのも悪くないかもしれません。
将来海外移住を考えるときに考慮すべきこと
海外生活は日本とはいろいろと勝手が違います。海外移住するときにネックになる主な点として次の6つが考えられます。
医療水準や医療費の問題
一番大きな心配は医療に関することでしょう。海外は日本よりはるかに医療費が高い国も多いので、しっかりとした保険に入ることが大事です。もちろんローカルのクリニックなら場合によってはタダのように安いのですが、大きな私立病院や日本人医師のいる病院ではないと不安を感じる人も多いと思います。
特に持病のある人は治療や薬の処方で定期的に日本に戻る必要があるのか、それとも現地で治療を続けるのかを考慮する必要があります。国によってシステムが違うので、納得いくまで調べましょう。タイやマレーシアなど日本人の移住者がたくさんいるような国であれば、オンラインコミュニティで繋がって話を聞くと現地の生の情報が手に入ります。
治安の不安
日本は世界でももっとも安全な国の一つです。香港やシンガポールも日本と負けず劣らず治安がいいのですが、不動産や家賃が信じられないぐらい高いので潤沢な資金や貯金があるか、ビジネスをしているとかではない限り難しいと思います。
昔に比べてアジア各国の治安は相当よくなりましたが、同じ国・都市でもエリアによって治安も異なります。日本のように落とし物は返ってきたり、カバンを椅子に置いたままどこかへ行けるわけでもないので、治安がいい場所でも日本とは意識を変える必要があります。
利便性の低下
コンビニは相当田舎に行かない限りどこにでもありますが、日本のような便利なコンビニは世界中どの国を探してもありません。日本のコンビニは本当に優秀で、至れり尽くせりです。コンビニを見つけても、日本のコンビニと同じ感覚でいるとがっかりするでしょう。
また、日本は宅配便の速さや確実さ、家でトイレなどの故障があったときの対応の速さと丁寧さなあらゆるサービスが世界ではありえない高レベルです。たくさんの国に旅行したり生活したりしましたが、日本のサービスと利便性は文句なしに世界一です。日本からの旅行者や海外移住をしたばかりの人で現地のサービスレベルや不便さについての文句を言う人が多いですが、そもそも比較するレベルにありません。
多少不便を感じても「そういうものなんだ」とゆったり構えられるかどうかも、海外生活を楽しめるかの大きな要素です。
カルチャーショック
利便性やサービスの違いの話と関係しますが、日常的に「こんなこと日本ではありえない」という場面に遭遇することが頻繁にあります。そこで最初はショックを受けることもありますが、だんだんと驚かなくなってきます。
憂慮すべき点としては一番小さな問題ですが、「最初はたくさんびっくりすることがあるだろう」と心構えしておくとダメージも小さいと思います。
言葉の問題
言葉の問題も一番心配なものの一つです。近年はたいていどこへ行っても英語が通じます。少し前までとは考えられないぐらい英語が浸透しています。近い将来海外移住を考えているのであれば、買い物や電話で問い合わせたり、通知を読んだりといった日常生活で最低限困らないレベルの英会話と読み書きは身につけておきましょう。
挨拶程度でもいいので現地の言葉を少しでも学んでおくと、現地でもよりスムーズに生活に溶け込めます。移住後に語学学校に通えば世界各国からの留学生や移住組と出会えます。そこでの共通語は英語になるので、英語力が自然とアップすることも期待できます。そうは言っても、やはり少しでも日本にいるうちに英語のレベルアップをしておく方がコミュニケーションも円滑でより楽しめるでしょう。
家族からのサポートの不足
最初は新しい生活になれることに一所懸命で寂しさを感じる余裕もないかもしれませんが、だんだん落ち着いてきたところでホームシックにかかる人もいます。気軽に行き来できる友人や、困った時に相談できる家族がそばにいないのは心細いものです。
今はインターネットにさえつながれば、無料で通話やビデオコールもできる便利な世の中です。移住を考え始めたらご家族と緊急の場合や普段のコミュニケーションの取り方についてきちんと話し合っておくといいですね。
また、実際に移住する前に現地の日本人と知り合っておくと安心です。たいていの人は多かれ少なかれ慣れるまで苦労した経験があるので、気軽に相談にのってくれますし、日本人コミュニティの素晴らしい情報網を通して現地の人しか知りえない情報を集めることもできます。
将来の海外移住に人気の国
次の3つの点からアジア3カ国を選びました。欧州ならポルトガルやスペイン、中米のコスタリカやパラグアイも人気ですが、食生活が大幅に変わるのは辛いと思います。またいざ何か緊急のことがおきた時に、物理的距離が近いのも心強い点です。
・日本から近く日本と同じような食生活が可能
・家賃含めた物価が安い
・リタイアメントビザがある
アジアに拠点をおいて、たまに欧米にゆっくり旅行する形が海外移住のハードルが低いのではないかと思います。アジア内はどこでも1−3時間で旅行できますので、気が向いたら周辺国を訪れ、気軽に違う文化に触れるのも国内在住では味わえない楽しみですね。
タイ
日本人のリタイアメント組コミュニティも大きく、移住のハードルが一番低い国です。近年物価が上がってきていて、以前は安かったプーケットなどの不動産はかなり高くなってきました。それでも日用品や食料は安価で、アパートも日本人の感覚からすれば相当安いです。プーケットは治安がいいのもいい面です。
初めて住むならバンコクの方が日本人コミュニティが圧倒的に大きいので安心感はあるかもしれません。エリアによって雰囲気も変わりますし、好みで贅沢にも安くも生活することが可能です。日本人が多く住み、お店も日本語が通じるエリアがあるので、まずはそこに滞在してその間に気にいるエリアを探して引っ越す形もいいでしょう。
世界遺産も6つあり、観光も楽しみの一つ。タイには世界的な有名なイベントもたくさんあり、見どころたっぷりです。
マレーシア
親日国で日本人も多く移住しているマレーシアも物価が安く、シニアでの海外移住におすすめの国です。憧れる人の多いジムやプール付きマンション、ヴィラ生活も十分可能です。
マレーシアの言語はマレー語ですが、「非公式の第一言語」と言われるほど英語がよく通じる国としても優秀です。最近では生活費の安さや治安のよさなどから、母子留学先としても人気が高まっています。マレー語は英語に比べればはるかに文法がシンプルで発音が簡単なので、英語を習得するよりも容易に感じるかもしれません。
世界中からの移住者が多くいるマレーシアはインターナショナルなことで知られています。特にペナン島は世界有数のリタイアメント先として上位リスト入りしてますので、日本だけではなく世界各国からのシニアと触れる機会も多いと思います。
フィリピン
フィリピンは日本で生活している方には一番なじみを感じる国かもしれません。最近では介護分野や家政婦のフィリピン人をよく見かけますよね。フィリピン人は世話好きな人が多く、祖父母を通して年配者へ接することも慣れている人が多い印象です。香港では家政婦がいる家庭が多いのですが、その多くがフィリピン人で、主に子供の世話や年配者の介護をメインの仕事としています。
フィリピンも物価が非常に安いので、貯金を崩さずとも年金で十分に楽な生活ができる国です。現地語はタガログ語を公用語として各地さまざまな方言があり、互いの言葉がよく理解できないほど異なるそうです。英語も普通に話せる人が多いので、生活に必要な最低限の英語力があればそれほど心配はいらないでしょう。
最近では日本語を学ぶ人も多いようです。知人のフィリピン人の娘さんが看護大の学生なのですが、第二言語としての選択肢に日本語もあるそう。日本で介護や看護の仕事につく人も増えてきていることから重要性が高まっているようです。親日の人も多く、フレンドリーで何かあれば助け合う精神が根付いているので、シニアにとっては心強いと思います。
治安面ではタイやマレーシアと比べると少し劣るかもしれませんが、海外のどの国でも同じように普通の生活をする分にはトラブルに巻き込まれることもほとんどないと思われます。フィリピン料理はわりと日本人の口に合うのもポジティブな点です。
海外移住を考えるなら
海外移住というとおおごとに考える人が多いのですが、もし気に入らなかったら別の国に移動するとか日本に戻る選択肢もあります。まずはお試しに数週間あるいは数ヶ月といった感じで気楽に考えるといいかもしれません。
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