「せっかく英語を勉強しているんだから、もう少し実力がついたら、家で翻訳の仕事ができれば…」と、一度は思ったことがあるのではないでしょうか。「でも、どれくらいの英語力があればいい?」「仕事はどうやって見つけるの?」という人のために、プロの翻訳家になるために必要なステップと、取っておくと便利な資格をお教えします。
翻訳学校の講座を受講する
翻訳の勉強は自己流でも始めることが可能ですが、仕事をしてお金をもらうプロになりたいと思ったら、翻訳学校の講座を受講したほうが有利です。その理由と、スクールの選び方などをお教えします。
プロの翻訳者が指導してくれる
翻訳学校の講師は、たいていプロの翻訳者たち。「英文を正確な日本語に訳す」というだけでなく、「クライアント(おおもとの発注者)はこういう訳文を求めている」「必要な資料はここで見つかる」など、仕事に必要な情報を伝えてくれます。
翻訳会社と提携している
多くの翻訳学校は、翻訳者に仕事を発注する翻訳会社と提携していて、優秀な成績で修了し、「トライアル」という試験に合格すれば、翻訳会社に登録して仕事を受けることが可能になります。
翻訳学校の選び方
「総合翻訳」「ビジネス翻訳」「映像翻訳」など、翻訳学校によって得意分野があります。一から学びたい場合は、「総合翻訳」というコースがある学校の、基礎の講座から始めるといいでしょう。通信講座や、自宅から受講できるオンライン講座を設けている学校もあります。
トライアルを受けて翻訳会社に登録する
翻訳学校の講座を修了したら、提携の翻訳会社で「トライアル」を受けてみましょう。プロの翻訳者の仕事は、たいていこの「トライアル」から始まります。
翻訳会社に登録する
「トライアル」に合格して翻訳会社に登録すると、「こういう案件を引き受けてもらえませんか」と仕事の依頼が来ます。いよいよ、翻訳者としての在宅ワークの始まりです。ただし、常時決まった依頼があるというわけではないので、複数の翻訳会社に登録しておくといいでしょう。翻訳会社はウェブサイトで翻訳者募集を行っていて、たいていの場合、まず「トライアル」を受けることになります。
案件ごとのトライアルを受ける
翻訳会社に登録していても、新規の仕事を受ける際に「この案件にはトライアルがあります」と言われることがあります。合格すれば受注可、不合格ならその仕事はもらえない、ということになります。翻訳者は、プロになってからも常に勉強が必要なのです。
資格を取る
翻訳の仕事をするには必ず資格が必要というわけではありませんが、中には合格すると仕事に有利になるものがあります。翻訳学校の講座で自信がつき、トライアルに合格できるレベルになったら挑戦してみましょう。
JTFほんやく検定
日本翻訳連盟が実施する実務翻訳(ビジネス翻訳)の検定。実用レベル2級以上に合格すると、連盟加盟の翻訳会社でトライアルが免除される、またはトライアル要件が緩和されるといったメリットがあります。
翻訳実務検定「TQE」
翻訳会社サン・フレア アカデミーが実施、産業翻訳(ビジネス翻訳)向け。受講生以外も受検可。合格すると「翻訳実務士」と認定され、翻訳会社サン・フレアに登録することができます。
翻訳者ネットワーク「アメリア」クラウン会員
翻訳学校フェロー・アカデミーに併設された翻訳者ネットワーク「アメリア」。受講生以外も入会可能。「資格」ではありませんが、定例トライアルで優秀な成績を取るといった条件を満たすと「クラウン会員」となり、「アメリア」が出している翻訳者募集の求人に、「経験者」として応募する機会が得られます。一通り勉強を終え、いざ仕事を始めたいという人に便利。
JTA公認 翻訳専門職資格試験
「出版翻訳」「ビジネス翻訳」の試験があります。2次審査は翻訳経験2年以上の実績審査で、すでにプロとして翻訳の仕事を始めている人向けですが、自分の力を資格で示したいという場合にチャレンジする価値がありそうです。
TOEICテスト、英検
翻訳者としての経歴書には、TOEICテストや英検の成績を書くこともあります。TOEIC900点以上、英検1級という強者も珍しくない世界、最低でもTOEIC850点以上、英検準1級以上は取っておきたいところです。
翻訳者リストに登録する
翻訳会社に登録してただ依頼を待っていれば、次々と翻訳の仕事が来るというわけではありません。たいていのプロは「翻訳者リスト」に登録し、求人情報をチェックしたり、仕事の打診を受けたりしています。登録しておくと便利なリストをご紹介します。
翻訳者ディレクトリ
4,800人以上のプロの翻訳者が登録。自分の情報を無料で登録できるほか、求人情報を検索して、自分の得意分野やスケジュールに合った仕事を探すことができます(登録に当たっては審査があります)。
ProZ.com
アメリカに本部を置くグローバルな翻訳者ネットワーク。プロフィールを無料で登録、サイト内の求人情報を検索し、海外の案件に応募することができます。有料会員向けの、会員限定求人情報などもあります。コミュニケーションは基本的に英語。
受注するために知っておきたいこと
翻訳者として仕事を受けるにはさまざまな窓口があり、実力があれば仕事を得るのはそう難しいことではなさそうです。ただし、在宅でプロとして続けていくには、自分でやっておかなければならないことがいろいろあります。
IT環境を整える
インターネットにつながったパソコンさえあればOK、というわけではありません。Word、Excelのほか、「Trados」など特定のソフトウェアを自分で購入しておくことが求められる場合もあります。翻訳会社指定の独特のツールに慣れる必要が出てくることもあり、翻訳者にITスキルは必須です。
自分で秘密保持をする
翻訳会社と仕事をするときには、NDA(Non-Disclosure Agreement=秘密保持契約)を結びます。企業の内部文書を扱うこともあり、どこの会社も秘密保持には敏感。家族とパソコンを共有しないのはもちろんのこと、厳重なセキュリティ対策をする、ペーパー書類は終了後シュレッダーにかけて破棄するなど、自分で管理を行う必要があります。
スケジュールや支払いを管理する
「他の仕事が伸びたから納期を遅らせてください」ということは許されず、遅れも見越して仕事を受け、請求書を書く、税金の計算をするといったことも自分でやらなければなりません。在宅ワークは快適かもしれませんが、それなりの責任も伴うわけです。
翻訳の仕事に必要な用語集
実際に仕事を受注する際に、最低限以下の用語を知っておくと役に立ちます。
クライアント | 企業や出版社など、翻訳を必要としているおおもとの発注先。 |
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翻訳会社、エージェント | クライアントから受注し、翻訳者に発注する会社。仕事の依頼は翻訳会社から来ることが多い。 |
トライアル | 翻訳会社に登録するための試験。または、案件ごとにトライアルを行う場合もある。 |
CATツール | 翻訳支援ツール。CATはComputer Assisted Translation(コンピューター支援翻訳)の略で、「Trados」など、翻訳を行うためのソフトウェアを指す。ビジネス翻訳の多くは、このCATツールを使って行われる。 |
ソース | 翻訳する前の原文のこと。 |
ターゲット | 訳文のこと。 |
翻訳メモリ | TM(=translation memory)と略すことも。原文と訳文のデータベース。訳文を統一するのに使われる。 |
MT | machine translation(機械翻訳)の略。AIなどを使って自動的に翻訳を行うこと。 |
ポストエディット | PE(=post edit)と略すことも。post(後)からのedit(編集)。機械翻訳を使った翻訳の校正をすること。 |
納期 | 訳文を提出する期限のこと。 |
ここでご紹介したのは、主に企業の文章を翻訳する「ビジネス翻訳」(実務翻訳、産業翻訳とも呼ばれます)の例ですが、小説やノンフィクションの本などを訳す「出版翻訳」も、同様のステップで実現できます(翻訳の世界ではよく、訳者として複数の本を出していると「翻訳家」と呼ばれ、通常のビジネス翻訳などでは一般に「翻訳者」と呼びます)。
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