そのシャドーイングでは「効果なし」かも!リスニング力が上がるやり方を解説

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そのシャドーイングでは「効果なし」かも!リスニング力が上がるやり方を解説

シャドーイングはリスニングやスピーキングのスキルが向上し、英語特有の音やリズムが身につくなど、絶大な効果があるといわれています。その一方で「シャドーイングは効果なし」や「シャドーイングは意味なし」のような声もありますが、みなさんはどのように感じていますか?

シャドーイングには「効果なし」と感じたりシャドーイングで効果が上がらなかったりする人は、もしかしたらやり方を間違えているかもしれません。

そこで今回は、シャドーイングのメリット・デメリットや「効果なし」といわれる理由について解説!また、リスニング力が上がるシャドーイングのやり方もご紹介します。

シャドーイングとは

まず、「シャドーイング(Shadowing)」がどのようなトレーニング法であるのかをおさらいし、期待される効果であるメリットと逆効果になる可能性があるデメリットについて見ていきましょう。

インプットとアウトプットを同時に行うトレーニング法

シャドーイングは音読のように耳に入ってきた英語の音声を自分のペースで発声するのではなく、耳から入ってきた音声から1~2語(0.5秒程度)遅れて追いかけるように発声するトレーニングのことです。音源を影(Shadow)のように追いかけるため、このように呼ばれています。

シャドーイングは「聞くこと(インプット)」と「発声すること(アウトプット)」を同時にやらなければなりません。もともとは英語の同時通訳者がスキルを強化するためにとり入れたトレーニング法でしたが、その効果の高さから一般的な英語学習にもとり入れられるようになりました。

インプットとアウトプットを同時にやるため、慣れるまでは難しく感じる人もいるかもしれませんが、どんな練習でも最初は難しいもの。正しいやり方で繰り返せば、「効果なし」ということにはなりません。

シャドーイングのメリット

冒頭でもふれましたが、シャドーイングには絶大な効果があるといわれています。さっそく、どんな効果が得られるのか見ていきましょう。

リスニングスキルが向上する

シャドーイングはリスニングスキルを鍛えるトレーニング法であるため、最も効果が期待されるのはリスニングスキルの向上です。

リーディングは目(視覚)で英語をキャッチして英文を認識し、意味を理解しますが、リスニングは耳(聴覚)で英語をキャッチして「聞き取り」、脳内で英文を認識した上で意味を理解します。つまり、英語をキャッチするのが視覚と聴覚という違いがあるものの、英文を認識して意味を理解するという点は同じです。

ただし、リスニングには「聞き取り」というステップが含まれます。この「聞き取り」というステップは、リスニングの重要なポイントです。「書かれた英語なら理解できるのに話される英語はさっぱりわからない」という人は、まさに「聞き取り」ができていないということ。リスニングが苦手な人はこの「聞き取り」ができないか、聞き取れても「意味を理解する」ことができないかのどちらかです。

この2つを鍛えられるのがシャドーイング。なぜなら、シャドーイングは繰り返すことで英語特有の音の変化やリズムを正確に聞き取り、聞き取った英語を自分で何度も発声することで英文と意味を結びつけて理解できるからです。

語彙・文法などの知識が定着する

シャドーイングでは語彙や文法を「音」で捉えるので頭の中でイメージとして記憶でき、その記憶を繰り返して使うことで英語の知識が定着します。もちろん、まったく語彙や文法の知識がなければシャドーイングをしても効果が期待できないので、ある程度の語彙や文法を知識としてインプットしておくことが必須です。

シャドーイングはこのように知識を使いこなして意味理解を「自動化」することで、リスニングを容易にするトレーニングともいえるでしょう。

リーディングスキルが向上する

先にも述べたように、リスニングとリーディングは英語をキャッチするのが聴覚と視覚という違いがあるものの、脳内では非常に似たステップで処理されます。

脳は似た働きをするまとまりに分かれ、お互いに連携して機能しているそう。その代表が右脳と左脳ですが、頭部の「前方」と「後方」にもまとまりがあり、「インプット」に関わるのは後方で聴覚も視覚も同じまとまりに属しています。つまり、聴覚も視覚も脳内では同じ経路で処理されるということ。

そのためスクリプトを使ってシャドーイングをすれば、リスニングとリーディングを同時に鍛えられます。ネイティブが発話する区切りでシャドーイングしていくので、リーディングもその区切りで進められるようになり、結果的に読み進めるスピードも早くなるでしょう。

参考:「苦手」は、脳の使い方であっという間に克服できる | Business Insider Japan

スピーキングスキルが向上する

シャドーイングでは、スピーキングスキルの向上も見込めます。スピーキング、つまり「話す」こととは、英語の知識をスピーディーに組み合わせて発声すること。言い換えると、自分の持っている英語知識を使って瞬時に英文を作って、それを言葉として発することです。

それら一連の流れは、話したいことを頭の中に思い浮かべて「概念化」し、自分が知っている語彙や文法を使って「言語化」した上で、声に出して「発話」するという3ステップです。言語化には発音や英語特有の音の変化、発話には唇の形や舌の動きを調整することも含まれます。

シャドーイングでは「言語化」と「発話」というステップを繰り返すことになるため、自ずとスピーキングスキルが強化されるのです。

シャドーイングのデメリット

シャドーイングには英語力を幅広く底上げするメリットがありますが、どのようなデメリットがあるのでしょうか?デメリットとその解決法を見ていきます。

インプットとアウトプットを同時に行うので難易度が高い

すでに述べたように、シャドーイングはインプットとアウトプットを同時に進めなければならないので、難易度が高いと考えられています。もちろん難易度が低いとはいいませんが、実際に英語で双方向のコミュニケーションをとるには頭の中でマルチタスクをこなさなければならないので、そういう観点からも効果的なトレーニングだといえるのではないでしょうか。

ネイティブのスピードについていけない場合は、使用する音声が自分の英語レベルに合っていない可能性があります。語彙も文法も80%程度理解できる音声を使用するのが成功のポイントです。難易度が高いと感じる人は、自分が使用している教材を今一度確認してみましょう。

また、80%程度理解できる教材を使用するため、難解な文章を読み解くような「読解力」は鍛えられません。

英語の音声と自分の声が混ざって曖昧な発声になる

英語を聞きながら発声するため、英語の音声と自分の声が混じって曖昧な発声になり、変なクセがついてしまう恐れがあります。この問題を解決する方法は簡単です。英語の音声はイヤホンを使用して聞きますが、その際に片方だけを使います。そうすればイヤホンをつけていない方の耳で自分の発声が聞けるので、英語の音声と自分の声が混じって曖昧な発声になることを防げるはずです。

ライティングスキルの向上は期待できない

シャドーイングは聴覚と視覚を介して英語を理解して発声するトレーニングであるため、ライティングスキルの向上は期待できません。ライティングスキルを鍛えたい人は、ライティングに特化した学習法をとり入れた方がいいでしょう。その際には、「どのようなライティングができるようになりたいのか」という学習目標を明確にしてから始めた方が効果的です。

シャドーイングに「効果なし」は偽り

結論からいうと、シャドーイングに「効果なし」は真実ではありません。つまり、効果があるということです。ここでは、シャドーイングに「効果なし」が偽りであることを解説していきます。

シャドーイングは「効果なし」といわれる理由

シャドーイングは「効果なし」と否定する理由を見ていきます。これは巷でよく聞かれる理由です。

正しく発声できているかわらないから

シャドーイングはすでに述べたように、ネイティブの英語音声を聞きながら真似しますが、自分では正しく発声できているかわからないので効果がないという意見です。

これは正しい意見ですが、ただ単にシャドーイングをしているだけという印象。英語学習では自分が発した英語が正しいかどうかは、他人に通じるかどうかということになるため、最終的には自分がシャドーイングした音声を録音してプロに確認してもらう必要があります。

中には何度も繰り返してシャドーイングすることで「上達している」と錯覚したり、「やった感」を得たりする場合もあるので、繰り返し練習の後にはネイティブやプロに確認してもらいましょう。

上級者向けの難易度の高いトレーニング法だから

インプットとアウトプットを同時に行う難易度の高いトレーニングだから、初級者には向かないという意見ですね。後述しますが、「リスニング向上におけるシャドーイングの効果について」の実験では、英語初級者のリスニングスキルの向上が最も顕著です。つまり、決して上級者向けのトレーニング法ではないということ。

すでに述べたように、英語の音声が自分のレベルに合っていれば実行可能です。スピードが早すぎると感じる場合は音声のスピードを遅くして練習し、少しずつスピードを上げていきましょう。

「効果なし」と感じる本当の理由

シャドーイングに効果を感じられない理由は、巷でいわれている理由ではありません。本当の理由を見ていきましょう。

シャドーイングが目的になっているから

シャドーイングには「効果なし」と判断する人の多くは、シャドーイングが学習の目的になってしまっている可能性があります。要するに、闇雲にシャドーイングを繰り返しているということ。シャドーイングはあくまでもリスニングスキルを向上させる手段です。つまり、目的は「リスニングスキルの向上」ということ。手段が目的になってしまうと、効果は期待できません。

正しく発声できているのかだけを確認するから

シャドーイングの目的は正しく発声できているか確認することですが、最大の目的は「どの音が聞き取れなかったのか」を見つけること。そして「意味はわかるけど音が聞き取れなかったのか」あるいは「聞き取れたけど意味がわからないのか」といった理由を分析して、今後の学習の方向性を決める材料にすることです。

このように「聞き取れない音」を見つけ出すためにシャドーイングをしなければ、効果を実感できることはないでしょう。

実験で証明されたシャドーイングの効果

先にも述べたように、リスニング向上におけるシャドーイングの効果は、神戸市外国語大学の玉井健教授(現在は高知リハビリテーション専門職大学の教授)の実験により証明されています。この実験では被験者を英語レベルで上・中・下と3グループに分け、3ヶ月にわたりシャドーイングとディクテーションによるリスニング力の変化を観察。その結果が以下の図です。

出典:リスニング力向上におけるシャドーイングの効果について

この実験により、英語初級者である下位群に最もリスニング力の向上が見られ、中級者である中位群、上級者である上位群でも程度の差はあるものの向上が証明されています。

この実験の結果として玉井教授は、シャドーイングは学習者の正確な復唱技術を向上させ、復唱技術の向上が「正確な聞き取りが可能になった」ことを意味するとまとめています。また、言語・音韻情報を保存する記憶貯蔵庫(音韻ループ)への情報量も増加するそう。

要するに、真似して発声できることが聞き取りか可能になったことを指し、繰り返すことで音と記憶を結びつけて知識が増えるということです。

参考:KAKEN 研究者をさがす | 玉井 健 (20259641)

効果が上がる正しいシャドーイングのやり方

ここまでシャドーイングに関して詳しく見てきましたが、効果が上がるやり方のヒントもいくつか示しました。以下に簡単にまとめておきます。

<効果が上がるやり方のヒント>
・自分の英語レベルに合った音声を使用する
・片方だけイヤホンを使って音声を聞き、イヤホンをつけない方の耳で自分の発声を聞く
・自分の発声を録音して、最終的にはプロにチェックしてもらう
・スピードが早すぎる場合は音声のスピードを遅くして、徐々に早めていく
・シャドーイングはリスニングスキルを向上させる手段であり目的ではないことを理解する
・聞き取れなかった音を見つけ、その理由を分析する

では最後に、効果が上がる正しいシャドーイングのやり方を見ていきましょう。非常に丁寧なやり方なので、必要がないステップはスキップしてください。

ステップ1:自分のレベルに合った音声の選択

すでに述べたように、80%くらいが理解できる英語の音声を選びます。その理由は、聞いて内容を理解できなければリスニングスキルが向上しないから。まず、シャドーイングに使用する音声選びから始めます。

現時点で80%暗い理解できるということは、20%は未知の語彙や文法が存在するということですが、新たな語彙をインプットする際には発音とともに覚えるようにしましょう。

ステップ2:英語の語順で理解できるように英文を意味の塊に分ける

慣れるまではスクリプトの英文を意味の塊(チャンク)に分けて、英語の語順で意味が理解できるように準備しましょう。このようにチャンクごとに区切るトレーニングを「スラッシュ(/)リーディング」といいます。

簡単に例を示しておきます。

Throughout their 130-year history, / motor vehicles have been classified / according to the type of fuel / they use for locomotion. // One type of alternative-fuel vehicle / that originated in the earliest period of the automobile / is the electric car. // The original electric automobile, / termed a Battery Electric Vehicle, / was powered by an on-board battery pack / consisting of cells storing chemical energy. //

130 年の歴史の中で / 自動車は分類されてきた / 燃料の種類に応じて / 移動に使用する // 代替燃料車の1つは / 自動車の初期の時代に生まれた / 電気自動車だ // 初代電気自動車は / Battery Electric Vehicle(2次電池式電気自動車)と呼ばれる / 車中に搭載されたバッテリーパックによって動力を供給されていた / 化学エネルギーを蓄えたセルで構成される //

ステップ3:1文ずつ音読する

音声を1文聞いたら、同じように音読します。「しっかり音が捉えられているか」と「読みながら意味が理解できているか」という2点に焦点を当てましょう。これは読みながら意味が捉えられるようにするためのトレーニングです。

ステップ4:オーパーラッピングする

オーバーラッピングとは、音声と同時に音読すること。正確な音の変化やスピードを鍛えるトレーニングです。このステップでは、発音、アクセント、リズム、息継ぎのタイミングまで音声を忠実に真似るようにしましょう。

ステップ5:音に集中しながらシャドーイングする

ようやくシャドーイングの始まりです。最初は「音」に集中してシャドーイングします。このように「音」に集中するやり方を「プロソディー・シャドーイング」といいます。慣れるまではスクリプトを見ながらでもOK。最終的にはスクリプトを見ずにシャドーイングしましょう。

ステップ6:音声の内容をイメージしながらシャドーイングする

プロソディー・シャドーイングに慣れた後は、音声の内容やニュアンスに意識を集中しながらシャドーイングしましょう。このように内容理解に集中するやり方を「コンテンツ・シャドーイング」といいます。音声を聞きながら内容がイメージできるまで続けましょう。その際には、英語の語順で理解していくことが重要です。英語を英語で考える「英語脳」を作ることに直結するので、ぜひとり入れてみてください。

ステップ7:録音したシャドーイングをチェックする

コンテンツ・シャドーイングができるようになったら、自分のシャドーイングを録音して確認します。その際には、抜けている箇所や音が正確に聞き取れていない箇所を見つけ出し、聞き取れなかった理由を分析して改善していきます。

自分では気がつかないことを指摘してくれるかもしれないので、最終的にはネイティブや英語のプロにチェックしてもらいましょう。

シャドーイングの効果を確かめたい人は

どんなトレーニングでもやり方を間違えれば「効果なし」という結果になってしまいます。この機会に正しいやり方をとり入れて、リスニングスキルをぐっと高めていきましょう。「ハードルが高すぎる」と諦めずに慣れるまで続ければ、必ず効果を感じられるはずです!

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