サッカー、野球、バスケ、バレー、卓球、スキー、スノーボードなどなど、幅広い種類のスポーツ界で日本を離れ、世界を拠点に活動する日本人アスリートが増えてきている。そんな彼らを待ち受けるのが言葉の壁だ。実力は十分あるのに、外国語による監督の指示やチームメイトとのやり取りが理解できず活躍の機会が得られない選手も少なくない。そんなアスリートを数多く見てきた田中隆祐さんは、英語など言葉のハンデを何とか早い段階で克服してもらおうと、アスリートを語学面からサポートしようと思い立つ。そして誕生したのがグローバルアスリートプロジェクトだ。サッカーの川島永嗣選手も 発起人の1人に名を連ねているという同プロジェクトの内容とは? また、9月10日から始まったグローバルアスリートプロジェクトとレアジョブ英会話の共同プログラム発足の背景についてもお話をうかがった。
アスリートも英語ができないと海外で活躍できない!?
Q:まずは、グローバルアスリートプロジェクトとはどういったものなのか教えてください。
僕はスポーツ選手のマネージメントに関わっているんですが、基本的には海外に挑戦する日本人アスリートを中心にサポートを行っています。多くのアスリートは「(競技が)上手ければ海外でも通用するし、うまくやっていける。」と思うんですが、実はそんなに単純ではない。監督だって人の子ですから、自分の考え方を理解するなど、コミュニケーション能力の高い選手を使いたくなる。総じて日本人は英語をはじめ外国語を話せる人が少ないですし、「話せない」ことがハンデとなって海外で活躍できない人も出てくる。こうなると本来の実力を発揮できないまま、日本に帰ってこざるを得なくなってしまうんです。
日本では一流なのに海外では活躍できないアスリートがいる。その理由を選手や関係者達に聞いてみると、選手として通用しないというよりは、監督が言っていることが理解できていないとか、チームメイトとコミュニケーションが取れないとか、語学面での要因が結構多かった。海外でプレイするためには、身体能力やスキルと同じくらい語学力も必要だという考えに最終的に行き着いたんです。そこで、海外志向を持つアスリートには、少しでも早く語学の習得に取り組んでほしくて、このプロジェクトを始めたんです。
Q: 田中さんと一緒にサッカー日本代表の川島永嗣選手も同プロジェクトの発起人に名を連ねていますね?
はい。川島のマネージメントをしていたのが縁です。彼はゴールキーパーなので、監督の指示をただ理解するだけではダメなんですね。DFなどの選手に指示をだし、理解させる側に回らなければならない。外国語が聞き取れるだけでは不十分で、自らが説得力のあるしゃべりをしていく必要がある。彼が海外移籍するまでの数年間を見てきましたが、英語をはじめ語学習得のために費やす努力は並大抵のものではなかった。日本人選手が海外で戦うためには、語学においても彼のような努力が必要だという思いもありましたね。
Q:川島選手がロールモデルということですね。今サポートしている選手の数は?
発足から3年が経過した今は200名ほどですね。サッカー、アメフト、アイスホッケー、アルティメット、ロードレースなど約30種のスポーツのアスリートたちです。サポートしている言語は英語が圧倒的に多いですが、フランス語、スペイン語、ドイツ語、ロシア語など計10言語です。
英語ができないアスリートが苦労する場面とは?
Q:具体的にどんなサポートをしているのですか?
当初は「海外でプレイして活躍するためには語学は必要だ」ということを啓蒙することから始めようと思っていたんです。ですが啓蒙するよりも前に、多数のアスリートから問い合わせが舞い込みました。最初の150人ぐらいまでは僕が全員1人ずつ実際に会って話を聞きました。既に海外に出ている選手が大半で、みな「しゃべれなくていかに苦労しているか」という話を切々と語ってくれました。また、どうすれば語学力が伸びるのかがまったくわからないという声も多かったです。
Q:しゃべれなくて苦労するのはどんな場面が多いのでしょうか?
監督の戦術の話がまったく理解できない、チームメイトと打ち解けられない、日常生活に支障が出て競技に集中できない、といったことですね。また、個人競技の選手に多かったのは、レースのエントリーなど自分1人で行わなければならないものが、言葉が理解できずに困った。英語の場内アナウンスがわからず、十分なウォームアップができず、万全の体勢で臨めなかったといった類いの話ですね。「ゼッケン○○番の人までは何時からアップしてください」といった説明は日本語だったらすぐわかりますが、英語になるとスッとは入ってこない。不安になって、コンディション調整がうまくできなくなるようです。
次から次へと出てくる英語、外国語ができなくて困った話をアスリートから聞いて、このプロジェクトの重要性を再確認しました。
Q:では、英語、そのほかの外国語が必要だと認識しているアスリートに対してはどんなサポートを? 学習方法のアドバイスをするのですか?
いえ、僕は語学教育の専門家ではないので学習方法のアドバイスはしません。それよりは、数多くある学習法の中で何でもいいからまずはやってみよう!と最初の一歩を踏み出す手伝いをしているんです。具体的には、プロジェクト発足当初から今年のはじめまで支援を受けていた企業の語学学習ソフトなどをアスリートに無償提供してもらい、空き時間で使うように勧めていました。
レアジョブ英会話がアスリートに最適なワケ
Q:今回、なぜレアジョブ英会話との共同プロジェクトが始まったのですか?
一言で言うとレアジョブ英会話がアスリートにとって利便性がとても高いからですね。アスリートは時間がないように見えて、実はあるんです。たとえばサッカー選手なら実際にグランドで練習するのは1日せいぜい2、3時間ぐらい。サラリーマンが1日3時間労働だけなんてあり得ないですよね? 当然、体をしっかり休めたり、栄養バランスのとれた食事をすることもアスリートの“仕事”ではあるんですが、練習を午前中にやってしまったら、午後はずっとフリーの時間にはなる。その時間で多くの選手が何をやっているかというと、ゲームやテレビを見たり、遊びにでかけたりしているわけです。
だから、たっぷりある自由な時間を語学学習にあてることは可能なんですが、毎回決まった時間に英会話学校に通えるかというと、これが難しい。地方や海外遠征が多かったり、ホテルやクラブハウスに長時間待機していなければならなかったりすることも少なくないですから。つまり、どこにいてもスキマ時間で勉強ができる教材、ツールじゃないと継続しにくいんです。
さらに、レアジョブ英会話はとにかくしゃべらないといけない、というのも利点だなと思っています。読み書きと聞くことができてもしゃべるのが苦手というアスリートが多いので、しゃべるトレーニングの場が必要だと痛感していたんです。
Q:支援の開始は9月10日からですので、いよいよサポートするアスリートたちがレアジョブ英会話のレッスンを受け始めますね?
そうですね。今回のサポートでは、「なぜ英語を学びたいのか」といったエントリーシートをしっかり作成してもらうことをアスリートに義務づけています。ただ、いきなり外国人と英語でしゃべる環境に身を置くことになるわけですから、ハードルはぐっと高くなっているとも言えると思いますね。
子供向け英語サッカースクール開校の狙いとは?
Q:グローバルアスリートプロジェクトでは、この夏から子供向けのプログラムも開始されていますね?
はい。幼児と小学生を対象にした“英語で楽しむインターナショナルサッカースクール”です。サッカーを通じて楽しく英語にも触れてほしいという思いから始めました。教える先生は英語ネイティブとバイリンガルの日本人。クラス中はオールイングリッシュですが、デモンストレーションをしながら、簡単な単語を繰り返し使うのが基本なので、意味がわからなくてついていけないようなことはありません。
子供にとって、机の前ではつまらない勉強の1つでしかなく、5分で飽きてしまう英語も、好きなサッカーを通じてなら嫌悪感なしで1時間があっという間に過ぎていく。小さなうちは英語も勉強として捉えるのではなく、好きなものと一緒にやっていくことが大切だと思うんです。
今年中にあと2箇所での開校を目指していて、数年で20、30校まで増やしたい。また、サッカーだけでなく、野球、バスケなど、ほかのスポーツ×英語スクールもやってみたいです。スポーツで日本の英語教育を変えていきたいと思っています。さらには英語だけでなく、たとえば中国語で卓球スクールというような外国語の種類も将来的には増やしたいですね。
30代半ばのやり直し英語に効いたのは中学生用ドリル
Q:田中さんは英語をどんなふうに磨いてこられたんですか?
今でも磨けてはないですが。。。僕は学生時代は勉強が大嫌いでまったく勉強してきませんでしたが、中でも英語は全然やらなかったんです。でも、今の仕事に就いてからのここ数年は年に5、6回は外国に行く機会が増えました。だから、必要に迫られて35歳ぐらいからやり直しを始めた口です。
時間もお金もかなりかけて、ありとあらゆる学習法に手を出していますが、進歩の速度はホントにゆっくりですね。
Q:いちばん手応えのあった教材は?
僕は基礎が全くなかったので、中1、中2、中3の英語ドリルを全部買って、一から全てやり直しました。これがすごくためになりました。海外旅行くらいなら、中学3年間に習う英語だけで通用すると思います。
Q: では、レアジョブ英会話にもぜひ挑戦してみてください!
もちろんです。日常的に利用して、英語を口にする頻度をぐっと増やしていきたいと思っています。サポートするアスリートたちよりもハマってしまう気もしているほどです。
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