EdTechを突きつめるには英会話力が必須/デジタルハリウッド大学大学院教授 佐藤昌宏さん

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kato 聞き手:株式会社レアジョブ代表取締役会長 加藤智久

専門分野を深めるには英会話が必要

Q:佐藤昌宏先生と英語の出会いについて教えてください。

もともと英語は得意でもなく、多くの方と同じように「いつかやらなければ」という認識でした。しかし、2012年ごろでしょうか。WEBの世界が大きく進化して教育の世界におけるITが「eラーニング」から「EdTech」に変わってきました。eラーニングでは、大企業や学校向けに大掛かりなシステムを組んでイントラで社員や学生が活用するという、法人向けが主体でした。しかしWebがオープンになりクラウドが利用されスマホなど人々が常時ネットに触れるようになり、全体のコストが大きく下がりました。個人ユーザーを含め誰もが活用できるもの、これがEdTechです。レアジョブのようなオンライン英会話もまさにこの賜物ですね。
eラーニングの時代の事例は日本の中で十分で、海外事例は目にするすることはあってもあくまで参考程度でした。しかしEdTechにおいて日本は圧倒的に遅れています。ほとんどの先進事例は海外にあり、調べるには英語ができないと不便だと感じ始めました。当初はインターネットで調べるためのリーディングのニーズだけでした。しかしもっと深い情報を得るためには、海外の先進事例を創っている人たちに直接会い英語で話をしないといけないと考えるようになりました。英語がもっとうまく話せるようになりたい。そんな気持ちが強くなってきています。

Q:佐藤昌宏先生は具体的にどのように英会話力を鍛えていますか。

専門分野を深めるには英会話が必要

自分は国内育ちで、就職先も国内大手企業で英語を使う機会があまりありませんでした。そのあと起業経験を経てデジタルハリウッド大学で教えることとなったのですが、ここで留学生のメンターを務めたり、外国人が英語でプレゼンするピッチで審査員を務めたりなど、少しずつ英語を使う機会が増えていきました。そのときは、自己紹介で使った言葉やレアジョブ英会話で習ったことをエバーノートに書きため、自分のことを英語で説明できるよう準備・テンプレをつくっていきました。
数年前までは、そこまで必死に取り組む真剣さはなかったと思います。「いつかやらなきゃ」と思ってはいるものの、具体的な行動には移せていない状況だったんです。それが、先にもお話ししたとおり、ここ数年で大きく変わってきました。英語を話せないと自分の専門性を追求できないと思うようになってきたのです。

海外の先進情報を収集するためにも英語が話せる必要がある

Q:佐藤昌宏先生は最近もロンドンに行かれていたそうですね。

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そうなんです。6月にEdTech Europe 2015にパネリストとして参加してきました。私はグローバルなEdTechムーブメントを日本にも取り入れたいと思っています。それにはEdTechのインターナショナルカンファレンスを日本で開催することが必要で、今回ロンドンに行ったのは各国のキーマンにそれを交渉するためでした。
EdTech Europeのプロデューサーにそのことを相談したところ、「みんな日本のこと知らないから、まず信用を得るためにEdTec Europeで登壇したら?」と勧められ、登壇することになりました。当初は単独でのプレゼンという話で、それなら自分の英語力でも何とかなるかなと思っていました。しかし急きょプログラムが変更されパネルディスカッションへの登壇となりました。海外のパネルディスカッションは日本以上にパネラーや聴衆との双方向のやりとりが必要になります。今回は英語面でのパートナーと一緒に登壇させてもらうことにしました。
パネルディスカッションのテーマは ”EdTech Opportunities in Asia”で、私は日本からみたアジア、日本のEdTechイノベーションについてコメントしました。特に強調したのは、教育現場で世界的にタブレットの普及が進んでいるがむしろキーボード付きの端末を推奨するべきであり、なぜならタブレットを使うと情報の消費者にしかなれないが、情報の創造者、発信者になるためには、やはりキーボードが必要になるという点です。これに対しては終了後に何人もの参加者から「あのポイントはよかった」とフィードバックをいただきました。自分が発信した内容に手応えを感じる機会になりました。

Q:プレゼンテーション以外にも佐藤昌宏先生が英語を話す機会はありましたか?

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今回のEdTech Europeの参加目的は登壇というより、交渉です。一番収穫があったと感じたのは、登壇者限定のパーティーに参加したことです。このパーティーに参加したことにより、世界のEdTechスタートアップや各国のキーマンとコネクションが作れました。
情報を受信するだけなら英語は読むだけでもいい。けれども、本当に最新の情報を取りに行ったり、キーパーソンとコネクションを作っていったりするためには絶対に英語をもっとうまく話せるようになりたい。その思いを新たにしました。最新の情報はインターネットでは流れていないんです。キーパーソンたちが集まり話す場所に自ら出ていき、そこで自分の情報を発信しないと、いま世界で起こっていることを直接知ることはできないんです。

EdTechに対する思いを形にしたい

Q:佐藤昌宏先生はなぜそこまでEdTechを突きつめられているのですか。

どんな専門分野を持つ人も英会話は必要

自分が国際会議に登壇したり、英語でプレゼンテーションを行ったりすることは、数年前の自分には想像できなかったことです。けれども、EdTechという自分の専門性を深めたい。日本でEdTechを広めたい。日本のEdTechを世界に発信したい。しかし、日本の教育は海外と比べ、まだまだテクノロジーの活用が遅れている、という危機感があります。EdTechを日本で広め、日本の教育を世界に発信するには、まずは国内に進んだ先進事例を見せること、つまり「黒船」が必要です。私は「黒船」を日本に持ってきたい。そのためには自ら先進事例を多数持つ海外と連携し英語で交渉しなければいけません。その結果、国際会議での英語プレゼンテーションにたどり着いたのです。
私のキャリアのスタートは大企業でした。配属された部署で上司と相性があわず、色々と思い詰めました。苦しい中気づいたのは、「どんな上司の下に配属されるかは結局のところ運でしかない。大企業で働くことは安定ではなくむしろリスクだ。究極の安定は、一生学び続け、スキルアップしていくことだ」ということです。そこから自己分析を進め、自分が得意で興味が持てるのは「教育」「人とのコミュニケーション」「テクノロジー」というキーワードだと気づきました。大企業で追い詰められていた自分がほしかったものを、同じように悩んでいる他の人にも提供したい。特区制度を活用して生まれたデジタルハリウッド大学の設立に参画したのもそういう流れです。

日本の教育は画一的な人材を必要としていた過去のニーズにはマッチしていたとは思います。しかしこれからの生きる力をはぐくむには多くの課題があります。先ほど言いましたように、日本の教育を変えたいと思うときに最も大きな可能性を持つのは「黒船」を知ることです。「黒船」から海外の情報とパワーを取り入れること。そして、決死の覚悟で動く「脱藩浪士」の力がいります。つまり起業家ですね。私は、自分自身はEdTechプレイヤーである「脱藩浪士」を支援する裏方であるべきだと考えています。日本の教育をもっとよくするために海外の最新EdTechに触れてそのエッセンスを日本に持ち込む役割を果たしたいと考えています。

Q:日本のEdTechについて佐藤昌宏先生はどのようにお考えですか。

テクノロジーは効果がみえない、という議論をよく聞きますがそれは早計です。テクノロジーは薬と同じで、どんな患者にも効果をもたらす万能薬はありません。「どこに効くのか」を意識して取り入れないと効果を実感することは難しいと思います。それを説明するために、学習者を分類する次のような図を作ってみました。

EdTechLearningMap

(A)学習意欲が高く能力が低い「模範的学習者」
(B)学習意欲も能力も高い「優等生」
(C)学習意欲は低いが能力が高い「やればできる人」
(D)学習意欲も能力も低い「劣等生」
アクティブラーニングといった手法は、特にCやDのような学習意欲の低い人にも効くものだと考えます。
EdTechはAやBの学習者に対し、好きなことを無制限に学ぶチャンスを与えたといえます。カーン・アカデミーなどのMOOCsで興味がある分野のコンテンツを見たり、オンライン英会話でフィリピンの英語講師と好きな時間に英語で話をしたり、無料のプログラミング学習サイトでウェブサイトの作り方を学ぶことができるようになったのです。
一方、やる気のない学習者の方が全体のパイは圧倒的に大きいと思いますが、そこに効くEdTechは現在のところ存在しません。例えば反転学習という方法がありますが、事前学習のない反転授業ほど無意味なものはありません。やる気がない生徒に対して無理やり反転授業をやるのは悲劇です。やる気がない学習者に効くのは、教育者をはじめとする「人」のサポートだと考えます。例えばオンライン英会話は「人」が重要な役割を果たすEdTechの一つだと思います。

Q:レアジョブ英会話がブラジル進出を決めた一つの理由も、日本人とブラジル人を似た属性同士で英語で交流させたら面白いと思うからです。

はい、やる気を出すのにピアプレッシャーは有効です。多国籍の生徒同士をつなげていき学習者のやる気をサポートするのはITならではですね。新しい取り組みが生まれていくことが楽しみです。

Q:日本にEdTechを浸透していくために、これから佐藤昌宏先生はどのような活動をされていくのかお考えを聞かせてください。

日本にEdTechを浸透するために必要なことは次の三点だと考えています。
(1)トップダウン:教育行政・制度に提言できる立場になる
(2)ボトムアップ:教育現場の方々にもっとテクノロジーに触れ、考える機会を作る
(3)やってしまう:EdTechスタートアップを始め、やりたい人がやりたいことをやることを支援する

私自身は、この(1)(2)(3)すべての面をサポートしていくべく、省庁の委員として立法行政に働きかけていく、教員たちのITリテラシーやIT活用に対する興味喚起を行う、といった活動を行っていたり、スタートアップ支援のメンターなどを行っています。また、今取り組んでいるのは、日本でEdTechのグローバルイベントを実施する活動です。海外の先進事例と日本の活動が融合することで新しい有機反応が起こるはずです。

タイトル4:どんな専門分野を持つ人も英会話は必要

Q:最後に、英語学習者へのメッセージをお願いします。

私自身の経験では、「自分の専門分野において発信したい」という気持ちが高まったときに英語に対するやる気も高まりました。ほとんどの人にとって、英語を話せること自体が目的、ゴールなのではなく、自分が達成したい何かを実現するために英語が必要なだけのはずです。どんな分野が専門であっても、グローバルに発信しないと自分が必要とする情報は手に入らず専門性は深めていけません。ぜひ、自分の伝えたいことを英語で発信するチャンスをつかんでください。

佐藤昌宏さん(写真右)とレアジョブ加藤智久
佐藤昌宏さん(写真右)とレアジョブ加藤智久

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