2020年に小学校での必修化が検討されている「プログラミング」。最近ではオンラインで学べるサービスも増え、誰でも気軽に勉強できるようになりました。とはいえ、なかなかモチベーションを保つのは難しく、続けられる人が少ないのも事実のようです。
「気軽に始められるけど続かない」。これは英語学習も同じかもしれません。今ではネットがあれば外国人の友達を作ってみたり、オンラインでレッスンを受けたりできる一方、モチベーションを保って学びつづけるのはなかなか大変ですよね。
そんな「英語」と「プログラミング」の両方を継続的に学習・習得してきたのが、「TOEIC940点の文系大学生プログラマによるブログ」を執筆している、神戸大学4年生の浦井誠人さんです。現在はフィリピンでエンジニアとしてインターンをしている浦井さんですが、入学当初は英語も話せずプログラミングについてはゼロからのスタートだったといいます。当時は「卒業したらそこそこの企業で普通に働くんだろうなー」と思っていたのだとか。
そんな浦井さんが英語を使って海外でエンジニアインターンとして働くまでのお話から、英語学習者が取り入れるべきモチベーション維持のコツを探ってみましょう。
1. 「よくわからないプライド」は「伝えたい思い」に変換
Q:今ではTOEIC900点を超える浦井さんですが、これまでどんなふうに英語と関わってこられたのでしょうか?
青年海外協力隊として働いていた兄の影響もあり、小学生の時から英会話スクールに通っていました。いずれ僕も海外に行ってみたいと思っていて、そこから中高はずっと英語が得意でしたね。あくまで「教科」としての英語だったのですが…。
Q:そのまま大学でもぐんぐん英語を伸ばしていったのでしょうか?
いえ、大学1年生の時に必修の英語の授業で帰国子女の発音を聞いて、なんだこれは!と衝撃を受けたんです。そこで、英語はまあ別にいいかな…と諦めかけてしまったんですよね。あと当時すでにTOEICが600点くらいあったので、これくらいあればいいだろうと、今思えばよくわからない自信をもっていました(笑)
Q:その後ふたたび英語をやろう!と決意したきっかけは何だったのでしょうか?
大学3年生の夏休みにバックパッカーで東欧の国を旅行していたのですが、ホステルのスタッフの英語が全然聞き取れないし、向こうも僕の言っていることをぜんぜん理解してくれなかったんです。それまで、周りに比べて自分の英語はまともな方だろうと思っていたのに、「これじゃ駄目だ」と痛感しましたね。帰ってきてすぐに留学の準備を始めました。
そこからフィリピンに3ヶ月留学されたとのことですが、ここではどんなふうに英語を勉強していたんですか?
フィリピン・セブ島にあるサウスピークという語学学校に通い、発音を一から鍛え直してもらいました。マンツーマンで先生から直接厳しいフィードバックを受けて打ちのめされましたし、英語に多少自信があったからこその恥ずかしさも感じましたね。
しかし、何度も何度も「通じない」体験を繰り返すうちに、自然と英語にもっていたプライドが消えていったんです。それと同時に発音できる音や聞き取れる音もだんだん増えていきました。僕自身はそこそこプライドが高いタイプだったので(笑)、初めの頃はスピーチをしていても「早く無事に過ぎてくれ」という思いからボソボソっと話しがちでした。
けれど、元々もっていたプライドや恥ずかしさを捨て去って、「伝えたい」という姿勢が前面に出てきたときに、着実に英語が上達しているなと実感できるようになったんです。講師の人にも「一旦プライドは捨て去らないと伸びないよ」とよく言われていました。
2. 成長過程を記録して、コミュニケーションをつくる
Q:そうして英語に自信をもって帰国してから、次は英語でプログラミングを勉強していますよね?きっかけは何だったんですか?
ゼミの教授が担当するプログラミングの授業を受けて、おもしろいなと感じたのがきっかけです。サウスピークの経営者の方にその話をしたら、偶然知り合いのエンジニアの方を紹介してくださって、その方にメンターになってもらったんです。それまで周りにエンジニアの人なんて全くいませんでしたし、最初は右も左もわからなかったですね…。
Q:「右も左もわからなかった」という学習当初から、浦井さんはブログで、自身の学んだことや実際に書いたコードを日々記録されていますね。
学習でもっとも重要なのはフィードバックだと思うんです。例えばブログを書いて、はてなブックマークがつくとか、そういう反応を糧に勉強するのもいいと思います。僕の場合はGithub(ソフトウェア開発のためのウェブサービス)上でスターがついたり、npmやAtomといったコミュニティで公開したライブラリ(プログラム)のダウンロード数が日ごとに増えていたりすると、モチベーションになりました。
プログラミングの学習をスタートした3、4ヶ月後に、初めて自分が作ったライブラリに対して、知らない人から「ちょっとここ直して」といった内容のコメントが付きました。「自分の公開したものを使ってくれている人がどこかにいるんだ」ということがとても嬉しかったですね。」
やっぱりそういったコミュニケーションが生まれていくと、学ぶことの楽しさを感じますし、モチベーションにもなります。これは英語についても同じですよね。」
Q:勉強している途中っていわば成長過程にある状態じゃないですか?英語にしてもプログラミングにしても、できない状態をみせるのって恥ずかしかったりしませんでしたか?
確かに今見返してみると最初の方の記事などは恥ずかしいと感じます。自分の書いたコードをみせることも、人前で英語を話すこともやっぱり今でも緊張します。けれどやっぱり反応がくるとモチベーションになるし、自分のコードや英語の間違いに気づくことができるじゃないですか。幸いブログにも今のところ否定的なコメントが来たりはしていないです。あと「まだ若いからええやろ」という気持ちもありました(笑)
3. 頼れるメンターを見つける
Q:先ほどお話にでてきたメンターの方とはどのようにやりとりをされていたんですか?
基本的にはチャットで日々連絡を取っていました。日本語訳の出ていないフレームワークのドキュメントや技術記事全般をもらって、僕がそれをまとめて理解したことをブログに書く、といった形ですね。学習を始めたころはメンターからフィードバックをもらえることと自分のやる気だけがモチベーションでした。プログラミングについては全くの初心者だったので、ある程度の道筋をつけていただけたのは本当に幸運でしたね。
Q:「英語でプログラミングを勉強する」というのもメンターの方のアイディアだったとおっしゃっていましたね。
そうですね。僕自身はどっちでもいいかなと思っていたんですけど(笑)
Q:そうだったんですか!
はい、今でも日本に限ってはプログラミングを必ずしも英語で学ぶ必要はないのかもしれないと考えています。新しいフレームワークや技術についても、数ヶ月経てば誰かがブログに書いてますし、数年経てば素晴らしい翻訳書が出版されます。そうした翻訳物で学習した方々で、平均的な英語話者のエンジニアより優秀な方々が沢山いらっしゃいます。
ただ、英語ができるかどうかの違いによって、得られる情報量・知識量の総量には違いが生まれます。エラーメッセージで検索すれば、大抵は英語で解決法が掲載されていますし、コミュニティ人口からしてソースコードのフィードバックも英語のほうが受けやすいかと思います。 情報量・知識量の違いは、それだけ学習速度に大きく関わるものだと実感しました。なので、結果的には英語で学んでよかったと思います。
4. 最後はやっぱり「好き」と結びつけること
Q:今はプログラミングを通じて英語を学んでいるのでしょうか?
そうですね。プログラミング関連の読み書きを英語でやっているので、自然と生活のなかで勉強できています。やっぱり最終的には自分の「好き」と紐づけてしまうのが大切だと感じます。嫌いなことをやっても続きませんからね。
今日はありがとうございました。これからのご活躍を楽しみにしています!
インタビューの途中で浦井さんはこんな言葉を口にしていました。たしかに日々忙しく働いていると、なかなか時間も取れない→その結果上達せずにモチベーションが下がる→余計に続かない、なんて悪循環に陥りがちですよね。
しかし、新しい表現を学んだらSNSやブログで公開してみたり、英語を話すときに自分の発音をちょっとだけ厳しめにチェックしてもらったり、時間のあるなしに関わらず気軽に実践できることはきっといくつもあるはずです。今年もあと少しになってきた今日このごろ、どれか一つでもモチベーション維持のコツを試してみてはいかがでしょうか?
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