「私、大学を卒業してから41歳まで一度も英語を勉強したことがなかったんですよ。」
NYを中心に落語家として活動されている柳家東三楼さんは、3年前の2018年まで、日本国内で活躍されている落語家さんでした。しかし、あるお仕事をきっかけにオンライン英会話を受講することになり、「外国人と英語で会話をする」という楽しさにどはまり。英語に魅了されてから1年後には英語落語で海外公演、そこからとんとん拍子にNYに移り住むことになったそう。
短期間で英語を習得するだけでなく、海外に移住したというびっくり仰天なエピソード。その運命的な出会いや、楽しみながら身に着けた英語学習法について、お話を伺ってきました。
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- 柳家東三楼(やなぎや とうざぶろう)
- 三代目 柳家東三楼。落語家 (一社)落語協会 真打ち。演出家、脚本家、俳優、大学教員(東亜大学芸術学部客員准教授)。第71回文化庁芸術祭大衆芸能部門新人賞受賞。日本の伝統芸能である落語を英語に翻訳、翻案し、日本、アメリカ、海外で活動する。落語をRAKUGOへ。2019年8月 アメリカ ニューヨークに移住 ブルックリン在住
英語の学びなおしからこれまで
2018年春 オンライン英会話と出合う
英語学習と並行して英語落語を創作しはじめる
2019年2月 初の海外公演
海外移住を直観で決断
2019年3月 アーティストビザ取得
ニューヨーク移住を開始
2020年10月 コロナ禍のロックダウンを機にオンライン英会話を再開
落語の世界で英語はご法度。20年間まったく無縁なNo英語ライフ
―英語を学びなおしてからわずか1年で海外移住されたということですが、そもそも英語は得意だったんですか。
いえ、まったくです。大学を卒業してから英語の勉強なんて一度もしたことありません。40歳過ぎて英語を始めることになったのは、たまたま某オンライン英会話スクールからモニター受講のお仕事をいただいたのがきっかけ。それまで海外に住みたいなんて、一度も考えたこともなければ、英語を学ぶ必要性も感じていませんでした。
―それまで英語とは無縁だったんですね。
そうですね。そもそも僕のいる古典落語の世界って、英語を使うのはご法度なんです。日常の会話も含めて、できるだけ英語を使わない方がいいとされている世界。だから、大学を卒業して、この世界に入門した22歳から41歳までほぼ20年ほとんど触れてきませんでした。オンライン英会話のモニターになる機会がなければ、一生英語に触れるなんてことはなかったかもしれませんね。逆にいうと、41歳からこの3年は人生でものすごく勉強しています。
―なにがそんなにご自身を駆り立てたんですか。
はじめは純粋に英会話が楽しかった、ただそれだけですね。僕の世代は、話すことより読み書き中心の学校教育だったので、レッスン中、発音記号をみながら口の動かし方を学ぶっていうだけでも面白かった。それに、先生と1対1で実際に会話をするっていうこと自体が新鮮で、「自分の英語が外国の人に通じてる!英語って本当に使われるものなんだ。」と、それはもう感動でしたね。もちろんその時の英語力ですから、すごくかんたんなものではありましたが、先生と意思疎通できるだけで感激しました。それがいまも続いています。とにかく楽しいです。
―日本人以外の人と意思疎通できたときの感動って、確かに忘れられないくらい大きいですよね。英語学習はオンライン英会話だけを続けてきたのですか?
オンライン英会話のモニターは3~4か月くらい続けました。そのあとはフィリピン留学する契約だったので、大学生に混ざって2週間セブ島に留学。その後、社長の好意から無償でレッスンを提供いただき、またオンライン英会話を続けていたっていう感じです。
レッスンモニターの仕事から英語落語を創作することに
―お仕事が、英語をはじめるきっかけとなったんですね。そこから英語落語へ…という点では、どのようなきっかけがあったんですか。
短期留学で担任してもらった先生と、一緒に英語落語を創ってみようと思ったのがきっかけです。スクリプトは自分で創りたかったので、まずはそれを用意するところから始めました。場所を現代のニューヨークにし、主人公を変え、登場人物もスティーブとかジョンとかにして、あらすじだけ残してあとは全部オリジナルです。それを英語に翻訳してから先生に相談しました。「日本の古典落語をやりたいんだけど、これをもっと面白くするにはどうしたらいいだろう」って。つたない英語で「この状況はこうでああで」と補足しながら説明して、どのフレーズがいいかって話し合って。それを朝から晩まで付き合ってもらいました。そうやって出来上がったスクリプトを少しずつ覚えていったんです。
そうこうして英語落語について発信していたら、アメリカやカナダで公演することになって。これはもう本気でやろうと目の色変えて英語の勉強をしだしました。
「先生を笑わせること」が英語をもっと学びたいという原動力に
―なんだかとんとん拍子に英語力がアップしていった様子ですね。
いやいや。そんなことないんじゃないかな。前は、頭の中でどう伝えればいいかすごく考えてから話していたので、英会話をするたびに憂鬱でした。いまは1日4回レッスンを受けることでその憂鬱を乗り越えましたが。そうやって、努力ももちろんしているんです(笑) ただ、必死に頑張るよりも楽しんでいる方が勝るから、そう感じられるのかもしれませんね。
―そうかもしれません(笑)純粋に楽しむためになにか工夫をされていたら教えてほしいです!
うーん。人によるとは思いますが、私の場合は先生を笑わせることでしょうか。短期留学の授業中、僕が発した一言に先生がものすごいウケたことがあったんです。それからたびたび先生がウケてくれて。先生にウケたってことは、アメリカ人も笑ってくれるのかもって、だんだん手ごたえを感じていったんです。そうやって楽しんでいました。
―英語を学ぶたびに「笑ってもらえる、うれしい」が繰り返されていったんですね。
はい。英語を頑張るっていうよりも、先生をどう笑わせるかを考えて、反応を伺うっていう方を頑張ってきた気がします(苦笑)。
学びなおしから1年。海外移住を決断した「ビビビ移住」
―しかし、お仕事をきっかけに英語を学びなおしてから海外公演に至るまでたった1年弱。そこからさらに海外移住を決断されたのは、なにかドラマがあったんですか。
ドラマっていうほどのものはありませんが、あるとき突然、僕に電撃が走ったんです。「ビビビ」と。いわゆる直観ですね。実は、直観が僕の心を激しく動かした出来事が、人生で2回あるんです。1回目は私の師匠に入門したとき。2回目は、初めての海外公演を終えて、ニューヨークをぶらついていたとき。忘れもしない、ブライアントパークのそばにある紀伊国屋書店を出た瞬間でした。「あ、俺ここに住むんだ」って突然思ったんです。
―まさに「ビビビ」じゃないですか。でも、そのときはまだ日本を拠点にばりばり活動されていたんですよね。
そうなんですよ。そうなんですけどその瞬間、なにかに突き動かされちゃって。ニューヨークでできた知り合いにその足で会いに行って、相談してみたんです。「なんかこういう感じがしていて、もし僕がニューヨークに住むとしたらどうすればいいんだろうか」って。そしたら彼ら、「君ならアーティストビザが取れるだろうからすぐに住んじゃえば」って軽くいうんですよね。
アーティストビザの取得ってそんなにかんたんなものなんだろうかって思いながら、公演を続けていたんです。そしたらこの英語落語が、自分でいうのもなんですが、現地でウケるウケる。「たった半年でこんなにウケるなんて、これはもう大成功じゃないか」って自分もその気になっちゃって。それでまた別の知り合いに話したら、すぐに弁護士を紹介してくれて、その場で連絡を取って、手続きを進めてもらいました。
―なんだか運命的なお話ですね。
そうこうしているうちに日本に帰国する日がきて、帰国するや否や銀行に行き、弁護士さんへの手付金30万円を振り込みました。
―え、師匠への報告とかそういうのは必要ないんですか。
もちろん必要あります(苦笑)。移住するって決めて送金してから、どう説明しようかなって考えましたね。でももうお金も払っていますし、迷いはありませんでした。ただ、前例があるものでもないし、とりあえずおかみさんに電話をして、帰国の翌日にご自宅に伺う約束を取り付けました。
翌日、師匠のご自宅に伺っておそるおそる話をしたら、返ってきた言葉は「井の中の蛙になってちゃいけないし、世界と戦ってこい」でした。いやー、うれしかったですね。あれは。
その後すぐに、独演会があったんですけど、その場でお客さんに報告しました。「みなさんにご報告があります。これからアメリカに住もうと思っています。」って。お客さんみんな「ぎょえー」ってなっていました(笑)。
そんなこんなでとんとん拍子に事が運んで移住したというのがここまでの経緯です。想定より大変だったのは、ビザの取得くらいでしたね。
41歳で英語の学びなおしを成功させた、柳家東三楼さんオリジナルのオンライン英会話活用術
―これまでの英語学習法について教えてください。オンライン英会話を中心に学ばれているということですが、いろいろな会社のオンライン英会話を利用されてきたんですか?
そうですね。はじめは先ほどお話しの通り、仕事の依頼で某オンライン英会話を利用していたんですけど、海外移住が決まって、一度オンライン英会話から離れていたんです。書類関係の雑務で忙しくなっちゃって。
ただ、コロナ禍でロックダウンに入ったのを機に、英語を話す機会がめっきり減ってしまったことに焦って再開しました。そのときは「レアジョブ英会話」ともうひとつ別のサービスを掛け持ちで利用していました。
これがよかった。僕には「レアジョブ英会話」が最高にマッチしたんです。先生の教えるレベルが高いし、教材の質もよかった。私は「レアジョブ英会話」の「実用英会話」っていう教材を中心に利用しているんですけど、この教材が面白い!教材全体でひとつの物語になっていて、レッスンごとに話しが展開していくんです。そこにでてくる登場人物の恋愛トークとかを読んで、先生とげらげら笑いながらレッスンしています(笑)。
それに、実用英会話レベル6あたりで難易度がぐっとあがるんですよね。真剣に取り組もうと、あらためて気が引き締まりました。
―初めは先生と1対1で話すこと自体に緊張しませんでしたか?
それはもちろん緊張しましたね。41歳やり直し英語ですから(笑)。それに、そもそも英語を英語で学んだ経験がないので、文法用語がわからないわけです。「subjectって何? あ、主語っていう意味か」って。会話のスピードも速くてまったく聞き取れなかった。今思えば先生も気を使ってゆっくり発音してくれていたんですけど、最初はそれでもついていけませんでしたね。会話の文法なんかも、頭ではわかっているのになぜだか口から出てこない。
そんな感じで、「質問がないときは”Non so far.”って答えればいいんだ」っていう基礎からひとつずつ学んでいきました。
オンライン英会話のレッスン以外で予習・復習はあえてしない
―レッスンの予習・復習はどういう風に取り組んでいるのですか?
オンライン英会話に関していうと、予習・復習はしません。1度使った教材をレッスンで何度か繰り返し利用しているので、それが復習になっているかもしれませんね。予習は、レッスンが始まる5分前に入室して、その5分でテキストを全部読むくらいです。
―それはストレスがなさそうでいいですね。オンライン英会話以外にもなにか勉強はされているんですか?
レッスンを終えた後、単語と文法を勉強しています。単語は、鈴木 陽一氏の『Duo3.0』を活用していて、毎朝1時間くらい写経のように書いています。文法は、英作文が書けるようになる教材を見つけたのでそれをやっています。ほかには、レッスン中わからなかった表現のメモをみたり、「レアジョブ英会話」の教材にある「Daily News Article」っていうニュース記事をプリントアウトしてたまに読んだり。これはほんと、たまに、ですけどね。
―単語と文法を強化されているんですね。
そうですね。特に単語は、ここ最近熱心に取り組んでいます。そうやってインプットした内容を使う機会を増やしたいので、先生とディスカッションするのを目的に、Netflixで先生と同じ映画を観るようにしています。ロックダウンを機に「レアジョブ英会話」を利用し始めてから半年、レッスンを含めてなんだかんだ毎日3時間くらい英語を勉強していますね。
オリジナルの暗記法
―落語家さんは記憶力が一般の人より優れているイメージですが…
そんなことないと思いますよ(笑)。ただ私の場合、自分で創作した英語落語を通して覚えられたっていうのはありましたね。英文をつくって覚えてを繰り返していくうちに、関係代名詞とかhaveやhadなんかを使えるようになっていったんです。だんだん長文を話せるようになって、修飾できるようになって…と、英語力が伸びていった感じです。
あとは、先生を笑わせるってことに注力して、英語表現を感情とともに覚えていました。「この表現で先生が笑った。うれしい。次に使おう。」とかそういう風に。
お気に入りの先生と出会えたことがターニングポイントに
―講師は毎回同じ先生とレッスンされているのですか?
最近は、ほぼ同じ先生とレッスンしていますね。その先生と出会うまでは、50人くらいとレッスンしてきました。相性のいい先生と出会えたおかげで、英語落語を一緒にロールプレイしたり、先生と芝居できるようになって、ますますレッスンが楽しくなりました。ただ、先生も人気がでてくると予約できないこともあるので、ほかにも何人かお気に入り登録しています。
―オンライン英会話をご自身用にアレンジして、最大限楽しむ工夫をされているのが伺えますね。
今はレッスンを勉強っていう意識で受けていません。友達と世間話をしているっていう感じです。お互い寝起きの顔もみせあっていますしね(苦笑)。映画の感想をいいあったり、「Daily News Article」のニュース記事について議論したり。最近は教材もほとんどやりつくしちゃったので、フリートークでくだらない話をしたりもして楽しんでいます(笑)
―サービスを楽しく活用してもらえてうれしいです! ご自身のコミュニケーション能力+英語スキルで現地でも問題なくこなしていらっしゃるんじゃないですか?
ニューヨーカーの英語ってものすごく早口で、何をいっているのかわからないこともありますが、レッスンのおかげで、度胸はつきましたね。間違えることなんか構わず、臆せずばんばん話しています。
「忙しい」を理由にせず、やると決める
―忙しいとなかなか続かないものですが、そういう挫折はなかったんですか?
私はやるときめたらとことんっていう性格なので、忙しいのを理由にやらないっていうことはしませんね。もちろん仕事の関係で2、3日できない時もありますが、基本は1日4回を目標にレッスンを受けると決めて取り組んでいます。
―1日4回ってすごいですね。
はい。これはロックダウンでオンライン英会話を再開しだした頃からですけどね。今は英語のおかげで新たに「コメディアンとして成功する」っていう目標ができたんです。その夢のためにも、眠かろうが何だろうが、毎日やる。特に外出できない分、英語を使う機会が減ってきているので、本気で取り組んでいます。誰よりも「レアジョブ英会話」の先生と英語を話してるんじゃないかな(笑)。
―それってつまり、ニューヨークにいなくてもオンライン英会話で十分英会話を学べるっていうことでしょうか。
そうだと思いますよ。正直、私の英語スキルは、ニューヨークにいるから養われたっていうよりも、完全にオンライン英会話で習得したっていうものですから。日本にいても十分英会話力は伸びると思います。それに「レアジョブ英会話」の場合、1日4回のレッスンを毎日受けられてたった1万7600円(税込)なんですよ。昔は何十万円もしたのに。コストパフォーマンスが最高にいい。活用しない手はありません。
「コメディアン」という新しい目標に向かって
―たった3年で人生が変わっていって、英語学習者の希望の星っていう感じがしてきました。
はははは。英語のおかげで人生おもいっきり変わりましたね(笑)。まさか自分がニューヨークに住むだなんて考えもしませんでしたから。でも、英語学習をはじめて本当によかった。ニューヨークっていう街は私にぴったりだと思うんです。他人のことは気にしない。自分で決めたことは、止められたとしてもやってみる。そういうのが、ここでは当たり前。とても楽ですね。
これから先は、全米50州をまわって公演を開催するつもりなんですけど、もっともっと多くのひとを笑わせたいです。そのために個人で会社もつくりました。活動の場を広げるには今後、ビジネスの話をする必要もでてくる。そのために次はビジネス英会話の準備も始めなきゃなって思っています。
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