後編では英語習得の取り組みと、これからの展望についてうかがいました。
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- YOYOKA(よよか)
- 2009年10月生まれ。趣味で音楽活動をしている両親の影響で1歳半頃から自然とドラムを始める。2018年、8歳の時にLed Zeppelinの「Good Times Bad Times」をカヴァー演奏した動画が、アメリカのNBC、ローリングストーン誌、ビルボード、イギリスのBBCなど世界中のメディアで特集される。この動画は世界中で拡散され、各SNSで合計5,000万回以上の再生を記録。シンディー・ローパーやFall Out Boy、イアン・ペイス、ビリー・シーンなどと共演やコラボレーション。2021年末 本格的に世界に挑戦するため、日本の大手事務所を退所し独立。YouTubeは登録者数20.8万人。
移住後の音楽活動のためのクラウドファンディングを開始 目下の課題は英語習得
ずっと北海道で暮らしてきた一家が、アメリカに移住する。決して潤沢な資金があるわけでもなく、しかもご両親の就労ビザ取得にはかなり時間がかかると見込まれます。これまでのように音楽活動を進めていくには移住先での設備や機材の充実も必須であり、貯蓄でまかないきれない資金獲得のために、クラウドファンディングを開始しました。また、継続的な活動をしていくために個人、企業のスポンサーも募集中です。
移住において大きな課題となったのが、英語習得でした。
YOYOKAさん「これまでにも海外の番組に出演したり、セッションしたりする機会はたくさんありましたがいつも通訳の方がいてくれました。でもやっぱり自分のニュアンスでコミュニケーションしたいし、自分の気持ちは自分の言葉で伝えたい。1on1で自由に英語で話したいと感じていました」
章文さん「アメリカに移住して活動するとなると、全方位的に英語でのやり取りを行っていかなければいけないと思うのですが、これまでも英語でのやり取りがうまくいかないがゆえに逃してしまったチャンスがたくさんありました。英語の確認作業でレスポンスのスピードが遅くなりすぎてしまったり、スピードを重視したことで後から認識違いが発生したり。契約関連はもちろん、交渉事もそうです。音楽業界は表現の世界でもあるので、ニュアンスレベルまで丁寧に配慮しなければいけないと思っています。まずは英語習得が最優先事項だと考えたので、レアジョブさんのサポートをお願いすることとなりました」
移住に向けた英語学習計画も立案。現在は「レアジョブ英会話」で英語を話す力を高めつつ、英語での作詞や自分が出演した英語の番組やインタビューを見直して英語での回答を考える…など、YOYOKAさんらしく英語力を高める学習法を実践していただいています。
音楽の力で通じ合う心。
その先のコミュニケーションを英語でやりたい
音楽のエリートでもなく、海外志向の英才教育を施されてきたわけでもない、北海道の田舎に生まれ、地方公務員の家庭に生まれ育ったYOYOKAさん。ただ、音楽が好き、ドラムが好きという想いと、その才能に対する評価が、YOYOKAさんを世界の舞台へと導いていきました。
YOYOKAさん「音楽の力ってすごくて。話さなくても、一緒にセッションすると心がダイレクトに通じ合う感覚があるんです。音楽という共通項があるから、演奏したり動画を見せるだけでお互いにリスペクトできて、最初の一歩を踏み出すハードルはクリアできる感じがするんですよね。
だけど、もう一歩近づきたい。もっとコミュニケーションして絆を深めたいと思ったら、やっぱり言葉で話す必要があるなと感じています。みんなフレンドリーだけど、自分も自由に英語を話せたらもっと近づけるのに、もっと楽しいのに…と感じる経験が何度もあったんです。それが、私が英語を学びたい1番の理由です。そして、英語で作詞したり歌ったり、インタビューに答えたりするのもできるだけネイティブレベルに近づいていきたいと思っています。」
現在は、英語学習を行いながら、移住に向けた準備の真っ最中です。大変なことを考え始めたら、きりがありません。ワクワクする反面「不安もたくさんある」というYOYOKAさんの言葉には、12歳の等身大の気持ちがにじみ出ていました。
YOYOKAさん「私は世界中から集まってくる沢山の凄いミュージシャンと一緒に演奏して、刺激を受けて成長したいのでアメリカで挑戦したいと決めました。でもやっぱり不安や心配もいっぱいあって、家や学校のこともそうだし、私のビザがちゃんと出るのかなとか、お金のこととか、円安の影響とか現地の治安とか…本当にいっぱい。もちろん自分がどんなに心配しても大人にがんばってもらうしかない部分が多いんですけど(笑) 楽しみでもあり不安でもあり、というのがすごく正直な気持ちですね」
アメリカで叶えたい2つの目標
「ドラマーの“よよか”」から「世界的アーティスト“YOYOKA”」へ。グローバルなフィールドでさらなる音楽活動の一歩を踏み出そうとしています。
YOYOKAさん「今の目標は、まずはLed Zeppelinのメンバーとセッションすること。それと、Super Bowl(アメリカンフットボールリーグの優勝決定戦・アメリカ最大のスポーツイベント)のハーフタイムショーで演奏することです。特にLed Zeppelinは、私が海外進出のきっかけとなった特別なバンド。いつか、メンバーとセッションしてみたいです」
章文さん「近年、世界の音楽シーンにおいてロックは衰退の傾向で、ドラムを使わない楽曲が大半を占めています。ロックレジェンドと呼ばれる存在も、世代がかなり上の方々が多く、ジョン・レノン然り、プリンスやマイケル・ジャクソンも、もういない。Led ZeppelinとYOYOKAとの共演は世界が期待してくださっている夢でもある気がしてます。娘には、ロックを未来に伝承していくという使命もあるのかもしれません」
世界の期待を背負っているなんて気にする様子もなく、音楽の話となればイキイキと語るYOYOKAさん。それはとてもナチュラルで、まさしく自然体の姿でした。
YOYOKAさん「いつでも大切にしているのは、自然体で居られること。そうじゃないと、うまく勘や感性が働かなくてドラムプレイにも影響してしまうんです。《自然体》は、意識的に大切にしているポイントですね。
あと、ドラムだけじゃなくていろんな楽器を演奏するのが好きです。ギターやベース、ピアノもよく弾きますし、歌ったり、作詞作曲したり。他の楽器を演奏するとその演奏者の気持ちがわかるから、結果、ドラムプレイの参考にもなるんです」
「全部自分でやってみたい。いつかレコーディングも、MVも自分で撮ったりしたい」と語るまなざしは、ワクワクする未来を見つめて輝いていました。
自分の挑戦が未来につながってほしい
そしてここから踏み出す一歩
今、YOYOKAさんは誰も見たことのない挑戦――12歳の日本人が、ロックの本場・アメリカで世界的アーティストとして成功するという挑戦――のスタートラインに立っています。
その挑戦はYOYOKAさんやご家族のみならず、日本の音楽界の未来を紡ぐ一歩として大きな意味を持つことになるかもしれません。
YOYOKAさん一家は自分たちが当事者になったことで、日本は若い世代がグローバルの舞台に挑戦するための土壌がまだまだ弱いと痛感したそうです。国や市町村、財団などがやっている各種の支援金や奨学金はほとんどが18歳以上のもの。どんなに世界的な才能や可能性があっても、YOYOKAさんのように10代前半の若いアーティストは家庭に経済的なゆとりがなければ挑戦することすら難しい状況です。
20万人以上登録者のいるYouTubeチャンネルも、カバー曲が中心のため収益がほとんどないそうです。
章文さん「率直に言って、私たちはごく平凡な収入の家庭です。でもそれを理由にYOYOKAの挑戦の扉が閉ざされてはいけないはずです。スポンサーを募ったり、クラウドファンディングをはじめたり、自分たちができることはなんでもやって、何とか世界へ挑戦したいと強く願っています。それもすべて、これまでさまざまな場面で彼女の演奏を観てきて、YOYOKAの才能と可能性が世界に通用すると確信しているからですし、12歳の彼女の本気の覚悟に、私たち大人もリスクを冒してでも全身全霊で応えないといけないと思ったからです」
YOYOKAさん「もし、今後私と同じように何かの才能を持って海外に挑戦したいと思う12歳の子がいたら、私は、その子には、今の私のように不安に思ってほしくない。もっと自由に、世界に挑戦できる道ができていればいいなと思います。私自身の挑戦がその道を拓ければいいなと思うし、それが、誰かの勇気になったらとてもうれしいです。
それに、アメリカに行くと、日本ではあまり感じなかったいろんな問題をリアルに考えることが増えました。人種差別や貧困の問題もそうですし、政治的な問題もたくさんありますよね。心が痛むニュースを見ると『自分も何か力になりたい』と考えるのが人間だと思いますが、私にできることと言ったら、寄付か音楽の二択くらいです。だったら、私は音楽を通していろんな人たちに元気やエネルギーを送りたい。誰かの笑顔のために、音楽を続けていきたいなと思っています」
今の自分の挑戦が、未来の誰かのためになる。
だからこそがんばれるし、がんばりたい。音楽も、英語も、全部。
YOYOKAさんが描く挑戦の物語が、今、始まろうとしています。
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