2015年の訪日外国人数は1970万人に達し、過去最高を更新しました。この数字を直感的に判断できない方も多いと思いますが、訪日外国人は2000年中頃に500万人を超えました。その後、2013年に初めて1000万人に達しました。そして、その後のわずか2年間で倍増し、2000万人まであと少しのところまで迫っているのです。
東京オリンピックを控え、さらなる外国人観光客の増加が見込まれる中、「通訳案内士」はすっかり人気資格となりました。今回は「通訳案内士」の一日と「通訳案内士」に必要なことについてです。
「通訳案内士」試験と仕事の中身
浅草や箱根など日本の様々な観光地で、外国人観光客に英語でガイド(観光案内)をしている日本人を見たことがあると思います。このように、外国人に英語でガイドを行うことによって収入を得るには、「通訳案内士」という国家資格を得る必要があります。試験内容は一次試験が「外国語、日本史、日本地理、一般常識」、二次試験が「外国語による面接」となっています。
「通訳案内士」としての仕事は大きく二つに大別できます。「個人ツアー」と「団体ツアー」です。
「個人ツアー」ではガイドする外国人の方と個人的に関わる時間が長くなります。そのため、ガイド側が準備していなかったことを尋ねられたり求められたりします。お客様に合わせた対応が必要となってきます。
「団体ツアー」では多くの場合大型バスを利用してのガイドとなります。人数が多い分だけハプニングも起こりやすく、その対応力が求められます。また、外国人は時間にとてもルーズなため、ツアー中の時間調整は必ずと言っていいほど必要となります。
「個人ツアー」としてのタクシーツアー
ここでは先日私がガイドを務めた「個人ツアー」についてです。
私の地元静岡には清水港という港があり、年々、大型クルーズ客船の入港が増えています。日本の大型港の多くも同じような傾向にあります。そして、このようなクルーズ客への、一日(半日)貸切タクシーツアーの需要が増えてきています。英語がペラペラなタクシー運転手さんも多くはいないでしょうから、ここで「通訳案内士」が必要となってくるのです。私が担当したタクシーツアーは、①日本平(富士山と駿河湾の景観)②お茶工場見学(静岡名物)③静岡浅間大社(外国人ツアーの定番)が含まれているものでした。
初めて対面する瞬間
「個人ツアー」で最も緊張する瞬間です。初顔合わせという意味での緊張ではありません。お客様(外国人観光客)が話される「英語」が気になるのです。通訳案内士として活動されている方の多くも同じ考えだと思います。特に、私のように海外経験が少ない人は、日本のCD教材等でリスニング力を伸ばしてきました。つまり、非常にニュートラルな英語を聞いてきました。実際には、CD教材のような英語を話すお客様はほとんどいません。それゆえ、お客様の「英語」がどれほどニュートラルな英語に近いかは心配になります。どのような英語でも理解できないことはないのですが、聞きかえすことや、理解するのがほんの少しでも遅れることは、円滑なコミュニケーションにはマイナスになってしまいます。
今回の私のお客様はカリフォルニアから来た60歳代のご夫婦でした。最初のあいさつで、アクセントに特徴がある以外は十分許容範囲内の英語だとわかり安心しました。
「個人ツアー」中に起こり得ること
「個人ツアー」のお客様はリクエストが多いことが特徴です。裏を返せば、リクエストを多くしたいので、団体ツアーではなく「個人ツアー」を利用していると言えます。タクシーでの移動中に自分の興味あるものが目に入れば、至る所で「止まってほしい」と要求してきます。もちろん、いつでもどこでも停車することは不可能なので、お客様の本気度を確かめることも必要となってきます。先述したツアー目的地の「日本平」は行程表では50分程度の滞在でしたが、あまり興味を示されず、実際の滞在時間は15分程度でした。また、車内からお城(駿府城)が見えた時、「あそこで30分ウォーキングさせてほしい」と頼まれました。ここでは本気度が高そうだったので、全体のスケジュールを前倒しし、ツアーの最後にウォーキングにお付き合いしました。
私が考える「通訳案内士」として必要とされること
立派な「通訳案内士」になるには様々な知識や技術が必要となります。「通訳案内士」試験でも求められているように日本の歴史や地理の知識は必須です。ガイドする場所の知識も求められます。団体ツアーではバスガイドとしてのスキルも求められるため、「国内旅程管理主任者」という「国内添乗員」に求められる資格を取得する「通訳案内士」も多いようです。
これらすべて、「通訳案内士」に必要な知識・技術であると思います。しかし、私が一番大切だと思うのは、やはり高い「英語力」だと思います。高い「英語力」とは、聞いたことが「わかる」、言いたいことが「言える」というようなレベルではなく、お客様に安心感を与え、その場を心地よくできるような「英語力」のことです。私自身も「通訳案内士」として、このレベルを目指していきたいと思っています。
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