突然ですが、みなさんは外国人と英語で会話をしていて「あなたの名前はどういう意味なの?」と聞かれたことはありませんか?
そんなとき、例えば中村さんであれば「中がミドル?インサイド?村がヴィレッジだからミドル ビレッジ…?」なんて直訳をしていませんか?
実際にネットで「名字 英訳」と検索すると、ミドルライス(田中)やオン ザ ウェール(井上)など、愉快な英訳がたくさんでてきます。
しかし、無理やり直訳してしまうことで、本来の由来とはかけ離れた訳になってしまったり、そもそも英語として意味が通じなかったりするものも多々あります。
英語を愛する英語学習メディアの編集長として、名字の由来を正確に理解し、それを正しい英語で説明出来るよう、入念に準備しておかなくてはいけない……!
そう強く感じたので、正しい由来がちゃんと伝わるような名字の英訳を考えてみることにしました。一気にすべての名字を網羅するのは難しいため、今回はまず身近にいる人たちの名字から始めたいと思います。
由来について参考にさせていただいたのは、丸山浩一著の「姓氏苗字辞典」と丹羽基二著の「日本姓大辞典」、そしてウェブサイトの「名字由来net」です。調べた内容を日本語でまとめ、可能な限り伝わりやすい英訳を組み立てていきました。
それではさっそく調べた結果を順に説明していきます!
田中(たなか)さん
田中の直訳を調べると「ミドル フィールド」や「ミドル ライス」となっています。「ミドル フィールド」はともかく「ミドル ライス」は「真んなかの米」という意味になり、米粒の大きさが中くらいなのか米の品質が真ん中なのか、なんだかよくわかりません。
さっそく語源を調べてみたところ、「田中」という名字は、昔の農民が稲田の近くに小屋を構えたことに由来しているそう。なので、田んぼや畑を意味する「field」よりも、明確に「稲田」を意味する「rice paddy」や「paddy field」を用いる方がよさそうです。
さらに、「田中」については、掘っ立て小屋の田居(作業のため寝泊まりも出来る小屋)が田んぼの周りにたくさん建てられた状態を示す「田居中」が短縮されたものという説もありました。「掘っ立て小屋」は「hut」、「〜の周り」は「between」を使って表現できます。
なので、「田中」の意味を聞かれたら、こう答えましょう!
(田中は田んぼの周りに沢山の小屋が建てられていることを意味します。)
ミドルライスよりも具体的な情景が浮かぶ英訳になりました。
新城(しんじょう)さん
新城さんの直訳をネットで調べてみると、「新しい城」を意味する「ニューキャッスル」となっています。西洋のお城を彷彿とさせる洒落た直訳ですね。
しかし、由来を調べてみると「城」は「キャッスル」ではなく「荘園」を意味するようです。ご存知の通り、「荘園」とは貴族や寺院などが私的に所有していた土地のことで、英語では「manor」と言います。
さらに由来を探ると、「新」には「新しい(荘園)」という意味だけではなく「新しく開設された(荘園)」という意味が含まれているので、ここも「new」をより具体化して「newly-developed(新しく開発された)」に置き換えた方が良さそうです。
なので、「新城」の意味を聞かれたら、こう答えましょう!
(新城は新しく設立した荘園という意味です)
市川(いちかわ)さん
市川の直訳は「シティリバー」となっています。「ニューキャッスル」と同じく、西洋風で洗練された響きがありますね。
しかし、こちらも語源を調べたところ、市川の「市」は「シティ」ではなく川の近くで開かれる「市場(いちば)」を意味するそう。なので、「city」ではなく「market」を使う必要がありそうです。
また、市川には「1つの川」という由来もあります。「1つの川」ならシングルリバー?と思うかもしれませんが、singleは「1つしかない」ということを強調したいときの表現。ここでは「川がたった1つである」ことを強く主張する必要はないので「one」を用います。
なので、「市川」の意味を聞かれたら、こう答えましょう!
(市川は一つの川、あるいは近くで市場の開かれる川を意味します。)
「ワン リバー」は本来の意味を含んでいるうえに、「シティ リバー」に負けず劣らずのキャッチーさを備えているので、外国の方にぜひ覚えてもらいたいですね。
井上(いのうえ)さん
井上の直訳を調べると、「井戸の上」をそのまま英語にして「オン ザ ウェール」となっています。ハリウッドのパニックホラー映画のような、どこか不穏さ漂う直訳です。
しかし、井上という名字は「井戸の上」ではなく「井戸の周辺」を意味します。さらに、井戸は集落の中心に位置していることが多く、集落で暮らす人々が集まる場所でもあったことから、井戸を管理する人が「井上」を名乗り始めたという説もあるとのこと。そのため、井戸の周囲に同じ集落の人々がわらわらと集まってくるイメージが伝わるように訳す必要がありそうです。
なので、「井上」の意味を聞かれたら、こう答えましょう!
(井上は、集落の人が集まるような井戸の周辺のことを意味します。)
「オン ザ ウェール」よりも数段あたたかみのある英訳になりました。
中村(なかむら)さん
中村の直訳は「ミドル ビレッジ」あるいは「インサイド ビレッジ」。日本語にすると「中くらいの村」や「村の中」など、控えめで謙虚な印象を受ける直訳です。
しかし、「中村」という名字は、人口が増えて村が分割されたときに、本村または本郷を「中村」と呼んだことに由来するとのこと。「中」は「middle(中くらい)」でも「inside(〜のなか)」でもなく、「本来の」といった意味を表していたのです。ここは堂々と「main」を用いて英訳したほうがよさそうです。
なので、中村の意味を聞かれたら、こう答えましょう!
(中村は本来の村という意味です。)
橋本(はしもと)さん
直訳すると「橋」を意味するブリッジと「本」を意味するブックで、「ブリッジブック」です。文字数あたりの濁点が多いためか、少しお堅い印象を受けますね。
しかし、「橋本」という名字は橋のたもとを指し、他国の神を迎える神聖な場所とされていたそうです。「たもと」は「at the end of」を、「神を迎える(ための)神聖な場所」は不定詞を使って「the holy place to welcome gods」と表現できます。ここでは「他国」が国家なのか都道府県なのか、あるいはそれぞれの村を意味するのかが曖昧なため、より広い意味を包含する「land」を用いて訳します。
さらに「迎える」については、どうやって他国の神を迎えに行くのかによって表現の使い分けが必要なため、注意が必要です。
・歩いて他国の神を迎えに行く
meet gods from other lands at the end of the bridge
・車やバイクに乗って他国の神を迎えに行く
pick gods from other lands up at the end of the bridge
・他国の神を歓迎する
welcome gods from other lands
・挨拶して他国の神を迎える
greet gods from other lands
今回は神聖な場所で敬意をもって他国の神を歓迎する場面が想定されるためwelcomeが適切でしょう。
なので、橋本の意味を聞かれたら、こう答えましょう!
(橋本は橋のたもと、あるいは他国の神を迎え入れる神聖な場所という意味です。)
佐藤(さとう)さん
「佐藤」の直訳を検索すると、「砂糖だからシュガー」といった雑な直訳が散見されます。とんちの効いた直訳ではありますが、「シュガー」では全国に数多いらっしゃる佐藤さんの名字が誤解されたままになってしまいます。
さっそく語源を調べてみると、主に以下2つの説があるようでした。
(1)平安時代中期に、藤原北家で藤原秀郷の子孫の公清が左衛門尉となり、「左」と「藤」から佐藤という名字になった
(2)藤原秀郷の居住地下野(栃木)の佐野にちなんで佐藤となった。
どちらも固有名詞が多く複雑ですが、藤原氏の「藤」と「佐」が組み合わさって成り立ったという点は同じなので、「a combination of A and B(AとBを組み合わせたもの)」を用いてスッキリ訳すことができそうです。
なので、「佐藤」の意味を聞かれたら、こう答えましょう!
(佐藤は平安時代中期の日本の律令制における職位”左衛門尉”と藤原家の藤原秀郷の子孫である藤原公清の名前を組み合わせたもの、もしくは藤原秀郷が住んでいた地域”佐野”の名前と藤原家の名前を組み合わせたものという意味です。)
(藤原秀郷)
「シュガー」に比べて複雑かつ長い英訳ですが、佐藤という名字のもつ歴史の重さを伝えきるにはこれでも短すぎるくらいかもしれません。
おわりに
さて、普段気にせず呼んでいる日本語の名字を英訳してみると、予想以上に多くの語彙や表現に触れることができました。
これを読んでいるみなさんも、ぜひご自身やご友人の名字を英訳して、新しい単語や表現に出会うきっかけにしてみてはいかがでしょうか?万が一、英訳に迷われたときは、ぜひ弊社のTwitter(@rarejob_jp)までご連絡を!
(イラスト: 杉本憲相/Twitter @Kensuke_Blue)
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