今年5月22日、イギリス・マンチェスターで痛ましい自爆テロが発生しました。ターゲットになったのは、国際的な人気を誇るアメリカの歌姫アリアナ・グランデのコンサート。閉演直後に起きたこのテロは、8歳の女の子をはじめ10代の若者を多く含む22名の犠牲者、負傷者多数という大惨事になってしまいました。
世界を震撼させた”Manchester attack”は、その後も世界の注目を集め続けています。というのも、わずか2週間足らずで、アリアナがマンチェスターを再訪し、多くの賛同者と共に50000人規模のチャリティコンサートを開催したのです。
この行動は、「歌の力で、マンチェスターのみならずイギリス国民の結束をもたらした」と喝采を浴びました。当事者とも言えるアリアナ本人の発言や周囲のアーティストの動きは、SNSを通じてマンチェスターへの愛、「テロに屈しない」という力強いメッセージとなり世界を包みました。
今回の記事では、事件の顛末とそれを巡るエンターテインメント界の動き、アーティストたちが世界に与えた影響などを解説していきます。
エンターテインメントがテロの対象に!罪のない人たちが犠牲になる悲劇
1) テロ事件直後の反応
5月22日のテロ事件直後、イギリスのメイ首相は声明を発表し、「無防備な若者をターゲットとした、残忍なテロ攻撃」(”the bombing had been a “callous terrorist attack” that targeted “defenceless young people”.)と強く批判しました。
*callous:「冷酷な」、*defenceless(英):「無防備な」(defenseless(米))
参照:BBC NEWS
またPress Associationの提供映像によれば、アメリカのトランプ大統領は5月23日、外遊先のベツレヘムにおいて、「アメリカはイギリスと完全に連携している」と哀悼の意を表した上で、実行犯を「邪悪な負け犬」と、繰り返し非難しました。(“President Trump says US stands “in absolute solidarity” with the UK & calls Manchester attack perpetrators “losers””)
参照:CNN International Twitter
この事件を受けて、アリアナのライブツアー【デンジャラス・ウーマン・ツアー】は6月5日まで中止となりました。5月23日にアリアナはツイッターで、「打ちひしがれている」心情を“broken.”と表現しました。
broken.
from the bottom of my heart, i am so so sorry. i don’t have words.— Ariana Grande (@ArianaGrande) 2017年5月23日
またマネージャーのスクーター・ブラウンも自身のツイッターに声明を発表しました。
「今夜、私たちの心は打ち砕かれました。この愚かな襲撃による被害者と家族の方々に対して、私たちの悲しみは言葉では言い表せません」
“Tonight, our hearts are broken. Words cannot express our sorrow for the victims and families harmed in this senseless attack.”
*Broken: 「(病気・悲嘆などで)くじけた、打ちひしがれた」、*sorrow: 悲しみを表す一般的な語で、不幸に対する悲しみと共に後悔や残念の意味も含む
テロに屈してはいけない!マンチェスターに寄り添おう!アーティストたちが発したメッセージ
2) テロ事件後に寄せられた、音楽関係者のメッセージ
その後、アリアナは5月26日にインスタグラムに長文のメッセージ画像を投稿。ファンへの想いや決意を明らかにしました。
「この暴力に対する私たちの答えは、一層互いに寄り添い、助けあい、より愛しあい、もっと大きな声で歌い、これまでよりも親切に寛大な気持ちで暮らすことです。」
Our response to this violence must be to come closer together, to help each other, to love more, to sing louder and to live more kindly and generously than we did before.「音楽は地球上の全ての人が分かち合えるものです。
音楽は私たちを癒し、結びつけ、幸せにしてくれるものです。
音楽はこれからも私たちのために、そうし続けてくれるはずです。」
Music is something that everyone on Earth can share.
Music is meant to heal us, to bring us together, to make me happy.
So that is what it will continue to do for us.
歌手のテイラー・スウィフトは日本時間23日、Twitterにて哀悼のコメントを発表しました。
「今夜マンチェスターでの悲劇にあったすべての人に私の思い、祈り、涙を捧げ、すべての愛を送ります。」
“My thoughts, prayers and tears for all those affected by the Manchester tragedy tonight. I’m sending all my love.”
歌手のケイティ・ペリーのTwitterにも次のようなコメントが。
「アリ(アリアナ)に対して心を痛め、この世界のありさまにも心を痛めています。」
“Broken hearted for Ari. Broken hearted for the state of this world.”
アリアナとのコラボ曲を出す程親しい歌手ニッキー・ミナージュもコメントを寄せています。
「姉妹ともいうべきアリアナと、イギリスのこの悲劇に遭った全ての家族に対し、心が痛みます。無垢な命が失われたことを聞き、大変悲しく思います。」
“My heart hurts for my sister, Ariana & every family affected by this tragic event in the U.K. Innocent lives lost. I’m so sorry to hear this”
「#ThisIsNotYourFaultAriana(これはあなたのせいじゃないよ アリアナ)」と、自分のコンサートで悲劇が起こってしまったアリアナを励ますハッシュタグもネット上で拡散。ハッシュタグ「#pray4manchester」でも、悲しみの声が集まりました。
オアシスの名曲の大合唱!世界を巻き込んだムーブメントへ
3) マンチェスター市民と“Don’t Look Back in Anger”
テロ発生の翌日23日、市内のチェタム音楽専門学校に通う生徒や教師らが、野外でロックバンド、オアシスの「Don’t Look Back in Anger」を合唱しました。
また、5月25日、マンチェスター市内の広場セントアンズ・スクエアで、事件の犠牲者を悼む追悼集会が開かれていたところ、集会に集まった人々の間から自然にオアシスの“Don’t Look Back In Anger”の合唱が湧き起こりました。
市民たちの合唱の動画をイギリス ガーディアン紙のジョシュ・ハリデー記者がTwitterに投稿。動画には、サビ部分のコーラスが進むにつれ合唱が大きくなっていく様子が収められており、同記者はその光景を“Goosebumps!”「鳥肌ものだ!」と表現しました。
Goosebumps! The amazing moment Manchester crowd joins in with woman singing Oasis – Don’t Look Back in Anger after minutes silence pic.twitter.com/Cw4mOq8yde
— Josh Halliday (@JoshHalliday) 2017年5月25日
元々イギリス国歌と評されることもあった同歌ですが、同集会を機にイギリス全土で歌われるようになり、6月13日にはイングランド対フランスのサッカーの試合前に、フランス共和国親衛隊のブラスバンドにより演奏されました。
このように急速に同歌が国内に浸透した理由としては、オアシスがテロ現場のマンチェスター出身ということもありますが、「怒りとともに振り返ってはいけない」(Don’t Look Back in Anger)という歌詞のメッセージ性が人々の共感を呼んだから、という指摘もあります。
4) アリアナのチャリティコンサート
アリアナは、6月4日、マンチェスターのEmirates Old Trafford Cricket Groundにて、チャリティコンサート「One Love Manchester」を開催すると発表。マンチェスターの地元紙によれば、彼女は次のように決意を語ったとされます。
「私のファンが私を励まし続けてくれたように、私もファンに会い、抱きしめ、励まさずには、この年を過ごせない。」
“I don’t want to go the rest of the year without being able so see and hold and uplift my fans, the same way they continue to uplift me,”
*uplift: 高揚させる
爆発事件が起きたアリアナの公演を観に訪れていた人達には無料チケットが配布され、35000枚用意されたチケットは発売後6分で完売。当日、現地にはおよそ50,000人が集まり、黙祷を捧げた後、3時間に渡りパフォーマンスが行なわれました。
アリアナのマネージャーであるスクーターは「恐怖は私達を引き裂くことはできない。なぜなら今日、こうしてみんなでマンチェスターと一緒にいるから」とステージ上でコメントしました。
アリアナはこのチャリティコンサートの「One Love Manchester」のロゴが入った白いスウェット姿で登場し、「ビー・オールライト」や「ブレイク・フリー」など、前向きなメッセージを込める数々の楽曲を熱唱。コンサートの最後には「虹の彼方に」を披露し、感極まって号泣するシーンもあったといわれます。
コンサートには英ロックバンドのコールドプレイ、米歌手のケイティ・ペリーなどそうそうたる有名ミュージシャンが参加、オアシスの元メンバーであるリアム・ギャラガーもサプライズで登場しました。
スティーヴイー・ワンダーの録画(”Love’s in Need of Love Today”)がスクリーン上映された他、デヴィッド・ベッカム、ポール・マッカートニー、デミ・ロヴァートらからも、マンチェスターへの愛を語るビデオレターが届き、会場のスクリーンで上映されました。
デヴィッド・ベッカムのビデオメッセージの概要は次のとおり。
「マンチェスターは、私が長く暮らしていた場所で、そこに住む人々は私の人生でとても特別です。」
“Manchester was a place that was my home for many years. The people are the most special I have met me in my life.”
またメッセージの最後を飾ったポール・マッカートニーは次のように語りかけました。
「マンチェスターの皆さん、こんにちは。素敵な音楽の日でありますように。私達の愛とサポートを、皆さんとこれを企画したアリアナに贈ります。」
“Hello to the people of Manchester.”
“Have a great day of music there. I want to send my love and support from me and the boys to all of you there and to Ariana grande for organising this.”
これらについてイギリス大衆紙のThe Sunは、次の見出しで報道しました。
“SHOWING THEIR SUPPORT”
“Sir Paul McCartney, Kendall Jenner, Rita Ora and more stars ‘stand with Manchester’ in special tribute video”引用:The Sun
*stand with:「支援する、同じ側に立つ」
またコンサートにおいて、アリアナとコールドプレイのボーカル、クリス・マーティンは、上記の「Don’t look back in anger」を披露。会場だけでなくネットも賑わせる歴史的サプライズとなりました。
たとえば音楽評論家のNeil McCormickはテレグラフ紙においてこのようなコメントを発表しています。
「暗闇を払いのけるための音楽の力をたたえるのに最高の瞬間だった」
There could not have been a more timely moment to celebrate the power of music to banish darkness.
*banish:「払いのける、追い払う」
このコンサートは全世界50ヶ国以上で放映され、BBCだけでも最高瞬間視聴者数は1450万人に及びました。
コンサートのチケットの売り上げは、テロの被害者やその家族を支援するため、マンチェスター市議会やイギリスの赤十字が合同で設けている「ウィー・ラブ・マンチェスター緊急基金」にすべて寄付され、主催者側はコンサートの3時間の募金だけで少なくとも200万ポンド(約2億8000万円)見込まれると発表しました。(英赤十字によれば、6月8日時点での寄付金総額は14億2300万円に達しました)。
5)アリアナへの名誉市民称号付与
マンチェスター市議会は、テロ事件に立ち向かいチャリティコンサートを敢行したアリアナに、名誉市民(honorary Mancunian)の称号を与える意向を表明。
BBCによれば、市議会会長のリチャード・リーズ氏は、「5月22日に起こってしまった恐ろしいテロ事件に対して、憎しみや恐怖ではなく、愛と勇気で(“with love and courage rather than hatred and fear.”)立ち向かったマンチェスターと人々を、私たちは誇りに思うべき。それを実証してくれたのが、アリアナである。」と説明しています。
まとめ
アリアナがコンサートの最後に歌った「虹の彼方に」は、チャリティ・ソングとしてリリースされ、売り上げは被害者にすべて寄付されることになっています。
またオアシスのノエル・ギャラガーも、マンチェスターのテロ事件の犠牲者の家族を支援するために“Don’t Look Back In Anger”のロイヤリティを寄付していることが報じられました。この歌は、現在、マンチェスターテロ事件のanthem(アンセム、シンボル曲)と称されています。
BBCは、アリアナの6月4日のコンサート後、「(そのショーはまた)ポップミュージックが人々を結びつける力を示した」(the show also demonstrated the power of pop music to bring people together.)とコメントしました。
音楽の力によって、テロに屈しない英国の人々の連携が強められた事実は、今を代表する歌手らが発した名フレーズの数々と共に、今後もさらに語り継がれていくことでしょう。
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