「英語って一体誰が話してるの?」と聞かれたら、どう答えますか?
まず、アメリカやカナダ・イギリスのような英語を第一言語にする地域の人たちが真っ先に思いつくでしょう。それだけでなく、フィリピンや香港など、第二言語として英語を使っている地域もあります。さらに日本のように、日常的には使わないけれど、義務教育で勉強しているという地域もたくさんあります。
「正しい英語」は存在するのか?
では、どの地域の英語が「正しい英語」なのでしょうか?
英語を第二言語として話す人たちの英語は、第一言語の影響を受けていることが多いと言われています。例えば、4つの公用語を持つシンガポールの英語(Singlish)は、マレー語や中国語と混ざり合った独特のシステムを持っていて、英語ネイティブにはわかりにくいことで有名です。ですが、Singlishは間違った英語でしょうか?
実は、英語を第一言語とする地域であっても、全員が同じような英語を話しているわけではありません。アメリカは移民の国ですから、一口にアメリカ人といっても、彼らの話す英語はそのルーツによっていろいろな言語の影響を受けています。また、意外と知られていませんが、カナダにはフランス語を第一言語とする人達が多く住んでいて、カナダ英語にもその影響が見られます。ということは、アメリカ英語やカナダ英語すらも間違っているのでしょうか。
こう考えてみると、何が「正しい英語」なのかを決めるのはとても難しく、もはや「正しい英語」を追い求めること自体に意味がないということに気付かされます。
言語の学習はただでさえ負担の大きいものです。世界中の非英語ネイティブが、英語の基本的なシステムを頭に入れるだけでも苦労しています。英語とかけ離れた母語を持つ私たちはなおさらです。この上さらに「正しいとされる○○英語をお手本通りにマスターしてください」と言われたら、どれだけ時間があっても足りません。
”World Englishes”という発想
難しい問題を含む「英語の正しさ」に関して、近年注目を集めているのが、”World Englishes” という考え方です。
英語を話す人口は3種類に分けられます。
ESL = English as a Second Language:香港など・・・第二言語としての英語話者 約3億人
EFL = English as a Foreign Language:日本など・・・外国語としての英語話者 約10億人
※出典:Davit Crystal “A History of the English Language”
なんと、圧倒的多数がネイティブスピーカーではないのです。
World Englishes は、世界のすべての「英語たち」は地域に根付いた文化であり、尊重すべきものだという考え方です。ですから、どの英語が「正しい」という風には考えません。シンガポール英語も、日本英語も全てです。たとえアメリカ人やイギリス人でも、相手の英語が「おかしい」と決めつけることはできなくなります。こう考えると、勇気づけられませんか?
英語を話しているのはネイティブだけではありません。ですから、アメリカやイギリスのローカル英語を真似するだけが英語学習ではないと筆者は考えています。ネイティブ風のスラングを連発したところで、相手が理解できなければ意味がありません。世界の人たちとコミュニケーションするためには、誰にでも理解できる、国際共通語としての英語を使いこなすことが大事だと思います。
“国際共通語”としての英語に必要とされるもの
ここからは筆者自身の意見になります。“国際共通語”としての英語に最も大事なのはなんでしょうか。私は確実に伝わることだと思います。
国際的な共通語というものは、コミュニケーションのツールとして万人に使いやすく理解しやすいことが最も大事なので、一部のネイティブスピーカーの間でしか通じないようなスラング・イディオムは国際共通英語としては使えません。反対にネイティブスピーカーが変だと感じる表現であっても、理解しやすければ許容されます。例えば、
I will get along with you.
(私が着いていくよ)
このような句動詞を使った表現は、英語のネイティブには自然に聞こえても、ノンネイティブにはわかりにくいものです。
I will go with you.
(私があなたと一緒に行くよ)
こう言えば、英語ネイティブには多少の違和感があっても、多くの人に理解しやすい表現になります。
このように書くと、「文法を気にしないで、とにかく口に出せばいいのか!」と思われるかもしれません。確かにそうなのですが、あまりハチャメチャすぎると、今度は相手が理解できなくなってしまいます。こうなると、あらゆる人に通じる国際共通語ではなくなってしまいます。
I can this dabao mah?
(これを打包してもいいですか?)
私がシンガポールの方と話していて、思わず聞き返してしまった英語です。打包(料理を持ち帰る)という中国語の表現が混ざっている上、canの使い方も独特です。シンガポール人同士なら通じても、相手が外国人では理解してもらえないでしょう。
May I have a box to carry these foods home?
(食べ物を持って帰るための箱を頂いていいですか?)
このような、誰にでも理解できる簡単な単語と文法が求められます。一方、”a”が抜けたり、”carry”が”take”や”have”になったりしても問題はありません。意味の理解に大きく影響しないからです。
そして、日本語を話す私たちが気を付けなければいけないのは、カタカナ英語がコミュニケーションの妨げになる場合があるということです。筆者の外国の友人で、レストランに行き料理を注文したところ、店員が付け合わせを指さして
This is service.
(これはサービスです)
と言ってきたが、理解できずに困ったという体験談を話してくれた人がいます。英語の”service”は「服務」という意味です。日本語の「サービス」は無料という意味ですが、日本人以外にはわかりません。“free of charge” や ”complimentary” といった表現が正式的ではありますが、
This is zero yen.
(これは0円です)
This takes no money.
(これにお金はかかりません)
難しく考える必要はなく、このように簡単な表現を使えば万人が理解できます。
ローカルな表現を禁止するわけではないけれど、あまりにローカルすぎると国際言語として使えなくなる。国際共通語としての英語は微妙なバランスの中にあります。現実にはコミュニケーションの中でうまく調整していく必要があるでしょう。
万人に通じる英語の話し方のコツ
ご参考までに、私自身が心掛けている、万人に通じる英語の話し方のコツをご紹介します。
1. ゆっくり大きい声で発音する。
私自身、ついボソボソ話してしまうので、自戒を込めて一番に挙げました。どんなに優れた内容も、相手に聞こえていなければ通じません。聞こえない部分があったとき、ネイティブは想像して補うことができますが、ノンネイティブは本当にわからなくなってしまいます。私はそこまで発音に自信があるわけではないですが、恥を忍んで、日本語の半分のスピード・1.5倍の声量で話しています。
2. but, thenなどを使って話の順番を明確にする。
お互いに英語が完ぺきではないので、話の流れを追いかけられなくなる時があります。話の合間に”but(でも)”や”then(それから)”のように、話の流れを示す言葉(transition signal)をはさんで、相手を置いてきぼりにしないように気を付けます。
3. 文を細かく区切る。
英会話がある程度上達してきた方に多いのが、頑張って長い文を話そうとすることです。長い文をぺらぺらと話してしまうと、相手が聴き取れない場合がありますし、文法が間違っていると伝えたいことが正しく伝わらず、誤解を生む可能性があります。正しく伝わることが目的ですので、意味のまとまりごとにワンテンポおいて、相手が理解できているかどうか確かめます。
4. わからなくなったらすぐに聞く
お互い不完全な英語であることが前提ですから、気兼ねなく聞くようにしています。理解できないのは自分の英語力不足かもしれませんし、相手の問題かもしれません。お互いに気を使って話を進めるのがコツです。
Could you say it again?
Excuse me. What did you mean?
聞き返す言葉も色々ありますが、私の経験ではこのように直接的に聞いてしまった方がスムースに会話が出来ます。
5. 三単現の”-S”は気にしない
会話の中で混乱するのがこの三単現の ”-S” です。間違えたところで意味は全く変わりませんから、ノンネイティブ同士なら適当でいいと思います。
The support for English leaners have worked.
(その英語学習者へのサポートは上手くいっている)
直前に複数形の”learners”が来ているので、釣られて三単現にし忘れています。”have”の主語は”the support”ですから、本来は”has worked”にしなければいけないところです。しかし、”have”と言っても文の意味は全く変わりません。ですから、迷って言葉に詰まるくらいなら堂々と間違えた方がいいと私は思います。
世界の人とコミュニケーションできる英語を話すために…
英語を話しているのはネイティブだけではありません。ネイティブ英語にこだわり過ぎず、世界の人とコミュニケーションできる英語を習得することが、これからの国際人には求められます。どうやったらすべての人にとってわかりやすく表現できるのか、その工夫があなたの英語を“国際共通英語”にしてくれます。
【参考書籍】(※筆者よりぜひお薦めしたい良書です。)
鳥飼玖美子:著 『国際共通語としての英語』(講談社)
木村護郎クリストフ:著 『節英のすすめ』(萬書房)
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