一度英語でつまづいてしまうと、自信をなくしてしまう方が多いと思います。学校で英語ができなかったから、今から始めても遅いんじゃないか? こういう不安を持っている方も多いのではないでしょうか。
私もその一人でした。筆者は大学生のとき、大学全体で最下位レベルの英語力でした。「be動詞」のような文法用語はひとつも知らず、発音も完全なジャパニーズイングリッシュ。そこから、独学でなんとかTOEIC960点をとりました。留学したり、特別なメソッドを使ったりもしていません。完全な独学です
今回は、英語を1から独学した筆者の経験談をお話しします。
「I is from Japan!」 で大学へ
私はエスカレーターで大学に入ってしまったので、幸か不幸か、まったく英語を勉強する必要がありませんでした。もちろん、受験で鍛えあげられた同級生の英語力にはちっともかないません。クラス分けテストでは学年の下位1%が通う「基礎クラス」に入れられ、「This is a pen」からやり直すことになりました。
最初の授業では、堂々と「I is from Japan!」と自己紹介。担当の先生から「お前、be動詞がおかしいぞ」と言われましたが、そもそも「be動詞」という言葉を知りません。まごまごしていると、先生も呆れたように別の学生を当てました。
その他にも、「do」の三単現を「dose」だと思っていたり、「国家」を「cantly(正しくはcountry)」とつづったり、どうしようもない有様でした。
コミュ力の低さが足を引っぱる「しゃべりまくり」の学習術
この英語力ではヤバい!と思い始めた私ですが、英語を勉強したことがないので、どう勉強していいかわかりません。帰国子女の友達に相談すると、「とにかく外国人としゃべりまくればいいよ」とアドバイスをくれました。さっそく、留学生が集まるラウンジに行ってみます。そのとき思い出したのですが、私はそもそも他人と話すのが苦手です。英語は全く聞き取れませんし、日本語で話しかけてくれる留学生にも、まともに答えることができませんでした。結局、逃げるようにラウンジを後にして、二度と行きませんでした。
洋楽で発音を学ぶも、他は進歩なし
洋楽から学んだリンキング
私は第2外国語で中国語を勉強していて、中国人ともギリギリはなしができるレベルになっていました。「なぜ英語はだめなんだろう」と考えたところ、最大の違いは発音ではないかと思うようになりました。中国語はきびしく発音を叩き込まれましたが、英語の発音は完全なジャパニーズイングリッシュだったからです。
さっそく発音を勉強しようと決意しました。でも、文法ができる人はたくさんいても、発音を教えてくれる人は誰もいません。帰国子女の友達も、「発音は自然にマスターしたものだから、教えるのは無理」とのこと。自分で参考書を買って勉強するしかないのですが、これがまったく面白くありません。早くもあきらめそうになりました。
息抜きに音楽でも聴こうと思い、洋楽のCDを借りてみました。私は洋楽を全く聴いたことがなかったのですが、勉強と思って「The Beatles」をためしてみることに。歌詞カードを見ながら「Let It Be」を聴いていたところ、「ん?」と引っかかるところがあります。歌詞は「Let it be」なのに、どう聞いても「レリビー」にしか聞こえないのです。
注意して聴いてみると、そんなところがたくさんあります。「Yesterday」の「all my troubles seem so far away」は、「ソー・ファー・アウェイ」ではなく「ソーファラウェイ」に聴こえます。「Yellow Submarine」は「イエローサンマリン」としか聞こえません。
どうしてこんな発音になるの?教科書を読んでみると、どれもしっかり説明されているのです。無味乾燥に見えた教科書が一気に面白くなります。「洋楽を聴きながら教科書を読む」練習を2カ月続けると、かなり発音が上達しました。
今思えば、この時期に、マンツーマンで教えてくれる外国人の先生がいたらどんなにありがたかったかと思います。自分の発音があっているか自分で確かめるのは、本当にむずかしいからです。自分のはなす声を録音してなんどもお手本と聴き比べたりしましたが、本当にあっているのか不安で仕方ありませんでした。当時オンライン英会話のようなサービスを知っていれば、きっと利用したと思います。
単語と文法はあきらめ半分
発音はなんとなくイメージが掴めた一方、文法と単語はいまいちでした。もともと飽きっぽい性格なので、座ってコツコツ勉強するのが苦手なのです。TOEICの問題集をといたりしましたが、まったく進歩はありませんでした。
はじめてのTOEIC受験はボロボロ
そんな調子でTOEICを受験しました。英語の音に慣れていたおかげでリスニングは半分くらい正解できましたが、リーディングパートがボロボロでした。Part5の文法問題が、ほとんど一問もわからないのです。
Departmental reports must be reviewed ( ) to make sure that all the data is correct.
部門別の報告書は、すべてのデータが性格であることを確認するために、( )チェックする必要がある。
この空欄に入るのは、「careful」と「carefully」どちらでしょうか? 英語の先生にきくと、「動詞のうしろには基本的に副詞がくるから、carefullyが正解ですよ」と教えてくれます。しかし私は「動詞」「副詞」という言葉を知らないので、そういう説明をされてもさっぱりわからないのです。
さらにいうと、この「review」という単語もよくわかりません。日本語で「レビュー」と言えば、映画や商品の感想ですよね? 会社の報告書って、レビューされるものなのでしょうか? こんな調子で、和製英語と英語をごちゃまぜにして理解しようとしていました。
リーディングパートは3割も正解できず、本当に落ち込みました。
通じる英語が話せるように
とはいえ、このころから、少しずつ通じる英語が話せるようになり始めました。留学生と英語をはなすと、「Your English is great!」と言われることもあります。文法も単語も全然ダメなのに、どうしてそんなことを言ってくれるのでしょうか。お世辞だと思って聞き流していました。シンガポールの方と話したときに、その疑問が解けました。
Your grammar slightly has a problem, but pronunciation is so accurate that it is easy to understand.
文法はちょっとあれだけど、発音は正確だから、聴き取りやすいですよ
1人でコツコツ発音練習をしてきたことが報われたように思いました。「文法はダメでも、発音は誇れるレベルなんだ!」少しだけ自分の英語に自信がついたのです。
小さな自信をもって、コツコツTOEICの問題を解きます。それだけでなく、自分の興味のある話題をネット検索して、英語で読みました。好きな映画や小説などからスタートして、教育問題などむずかしいテーマにも挑戦。好きなテーマなら、むずかしい英語でも読もうと思えるからです。
「英語脳」というのでしょうか、だんだん英語の感覚が頭にしみ込んでいきました。2カ月くらい多読をした後で文法の本を読むと、理解度が全然違います。「あれってこういうことだったのか」と、納得しながら読むことができるからです。
それでも、挫折したりまた始めたりを繰り返しながら、2年勉強しました。定期的にTOEICを受験して、5回目で900点を超えました。
しかし、まだまだできないことの方が多いように思います。TOEICの公式サイトには、900点台後半を取れる人は、自由自在に英語をあやつれると書いてあります。少なくとも私に限っては、そうとはいえないようです。
英語が使えるようになってから変わったこと
英語がある程度使えるようになってからは、自分に自信がついたと感じます。海外の方とおはなしをするときも、不安を感じることはありません。英語でのプレゼンやディスカッションも、なんとかこなせます。
海外の友人も増えました。例えば、インドの留学生に偶然道案内をしたことがきっかけで、今でも一緒に仕事をしています。こんなことは、英語ができなかったころにはありえなかったと思います。
私は日本語教師としても働いていますが、そこでも英語は役に立っています。日本語の発音や文法を日本語で説明されても、多くの留学生は理解できません。だからこそ、英語で日本語を教えられることは、大きなアドバンテージになります。「あの先生にきけば英語で対応してくれる」と思ってもらえることで、学生の信頼を勝ち取ることができていると思います。
まとめ
英語は落第、留学もせず、コミュニケーションも苦手……。そういう人間でも、独学で英語を使えるようになります。英語の独学に苦労はつきものですが、自分にあった勉強法を見つけることができれば、かならず上達できるのです。もし挫折しそうになったらこの記事を見て、「こんな人でもできるようになるんだから」と思っていただければ幸いです。
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