アメリカの学校というと、「きっと日本と違って自由でのびのび」というイメージがあるかもしれませんが、実は読書に非常に力を入れていて、意外に本を読む宿題がたくさん出ます。そこで実践しているのが、「クリティカルリーディング」。書いてあることを額面どおりに受け取るのではなく、クリティカル(批判的)にとらえるという学習法なのですが、これを日本での英語学習に取り入れる方法をご紹介しましょう。
クリティカルリーディングとは?
日本の読書感想文との違いはどのような点にあるのでしょうか。日本の学校では、国語の学習でよく「読書感想文」を書きます。そこで必要とされるのは、例えば以下のようなことでしょう。
・あらすじ
・作者の意図
・自分の感想
もし自分が登場人物の立場に置かれたらこうする、ということは考えるかもしれませんが、「作者の意図が正しいものであるかどうか」などという疑問を持つことはないかと思います。
クリティカルリーディングでは、「作者はこう言っているけれど、これは本当に正当な考え方なのか?」「ほかの見方もあるのではないか?」と、作者の意図そのものに疑問を投げかけます。書かれていることに実際に異議を唱えなければならないというのではなく、もし別の考え方があるとすればそれは何か、という一種の思考トレーニングを行うのです。
リーディングにチャレンジ
例として、レアジョブ英会話の公式レッスン教材であるニュース記事「Daily News Article」を題材に、実践してみましょう。
(訳)
イギリス、ダーリントンにあるスカーン・パーク・アカデミーのケイト・チゾム校長は、子どもを学校に送り届ける際、適切な服を着るようにという大人への要求を、書面で発表した。その手紙の中で、子どもを学校に送り迎えする際、パジャマのままで来るのが日常的になっている大人がいると指摘している。校長は、子どもに付き添う際はいつでも、大人はきちんとした服装をして、子どもたちのよいお手本であるべきだと説いている。
レアジョブ英会話Daily News Articleより(全文はこちら)
クリティカルリーディングで英語を読むポイント
これについて自分の意見を言うとすれば、普通は、「パジャマのままで学校に送り迎えに行くのはいいことかどうか」ということを考えると思います。しかし、クリティカルリーディングでは、まず書き手の意図そのものを批判的にとらえてみます。
クリティカルリーディング式の読解ポイント
・校長の手紙の内容について書かれているが、パジャマを来てくる大人の側の意見はどうなっているのか。
・appropriate clothes(適切な服)、decent apparel(きちんとした服装)という表現は、服装による差別につながらないか。
・仕事をしている忙しい大人たちに対して、批判の目を向けていないか。
もちろん、「パジャマのまま学校に行くのはよくない」と素直に自分の感想を持つのもいいのですが、クリティカルリーディングでは自分が感じたことそのままではなく、「別の見方をするとしたらそれは何か」ということをあえて想定してみるのです。さらに、「自分だったら同じことを語るのにこういう書き方をする」と考えてみるのもいいと思います。
この思考法を訓練することで、自分とは違うものの見方、考え方に対する理解が深まり、ものごとを多面的にとらえることができるようになります。アメリカでは小学生のころからこういったトレーニングを行い、やがてそれが高校・大学でのディベートの授業などにつながります。
アメリカ人と一緒に英語の授業に参加したことのある人は、「討論では、英語力だけでなく、口が達者という点でとてもかなわない」と感じたことがあるかもしれませんが、それも無理はありません。彼らは幼いころからものごとを多角的にとらえるための思考法を鍛えているのですから。
普段英語を読むときの注意点
これから英語の小説やニュース記事などを読む際は、次のようなことを心がけてみてください。
・作者の言おうとしていることは、特定の人を支持する内容になっていないか。
・この文章によって不快な思いをする人が出てこないか。
・使われている表現は誤解を招くものではないか。
・自分だったらどのような書き方をするか。
日本語の文章を読むときに同じことを行っても、「クリティカル」な思考法を養うことが可能です。これを続けているうちに、英語で話をするときに、より話の幅を広げることができ、ネイティブの論法についていけるようになるはずです。
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