IELTSは、イギリスのケンブリッジ大学英語検定機構が開発に関わった英語試験です。試験はアカデミック・モジュールとジェネラル・トレーニング・モジュールの2種類があります。留学等を目的とする場合はアカデミック・モジュール、海外移住や就業を目的とする場合はジェネラル・トレーニング・モジュールを受験します。
ヨーロッパを中心に世界140ヶ国以上の機関で採用されており、日本でも徐々に受験者が増加しています。試験結果は合否で判断ではなく、バンドスコアとよばれる数値で示されます。本記事ではIELTS6.0を目指す人や、海外の大学に留学したい人は必見の内容をまとめました。
IELTS6.0ってどれくらいの英語力?
IELTSではバンドスコア6.0を「有能なユーザー」と位置づけています。具体的には「不正確さ・不適切さ・誤解も見られるが、概ね効果的に英語を使いこなす能力を有する」と記載されています。そもそもIELTSを受験する日本人は英語圏への留学・就職・移住を考えている人も多く、平均より高い英語力を持っているといえるでしょう。
6.0の英語力があれば、日本国内の大学の帰国子女枠や、英語圏のスタンダードな大学へ願書が提出できるレベルです。国内外の難関大学や大学院の場合、7.0以上のスコアが必要となるケースもあるため、名門校を目指すのであれば6.0より高い英語力が求められます。
高校卒業レベルの英語力を持つ中級者がとくに対策をせずにIELTSを受験した場合、リーディング・リスニングといった馴染みのある技能では6.0が取れる可能性があります。ただし、ある程度の英語力があったとしても、対策なしでスピーキング・ライティングで、6.0が取れる可能性は低く、おおよそ5.0前後のスコアとなるでしょう。それに伴い、4技能の平均スコアであるオーバーオールも、おそらく6.0未満となります。
IELTSでバンドスコア6.0を取得する難易度
中級レベルの英語力があっても、IELTS6.0を獲得するのは簡単ではないといえます。5.5までは順調にクリアできても6.0の壁でつまずく人も多いため、IELTSを受験するうえで6.0はひとつの目安となるスコアです。本章ではバンドスコア6.0を取得する難易度を、リーディング・リスニング・スピーキング・ライティングの4技能別に詳しく解説します。
リーディングで求められる英語力
リーディングは全40問の出題です。3つのパッセージで構成されており、1パッセージあたり900単語程度となっています。トピックはビジネス・歴史・科学など多岐に渡ります。バンドスコア6.0を取得するためには、23~26問正解する必要があります。
例文:The invention of rockets is linked inextricably with the invention of ‘black powder’. (ロケットの発明は、「黒色火薬」の発明と密接に関係しています)
上記はIELTSの英語版公式サイトで紹介されているアカデミック・モジュールのテストサンプルです。1パッセージあたりの単語数は多いですが、英字新聞を読めるレベルの英語力があれば6.0に届くでしょう。実際にリーディングは日本人でも比較的ハイスコアを取りやすい技能となっています。他の英語試験と比較すると、速読力と読解力が求められる内容といえます。
リスニングで求められる英語力
リスニングは全40問の出題です。4つのセクションで構成されており、1セクションあたり7、8分程度となっています。バンドスコア6.0を取得するためには、23~25問正解する必要があります。
例文:What TWO factors can make social contact in a foreign country difficult? (外国での社会的接触を困難にする2つの要因は何ですか?)
上記はIELTSの英語版公式サイトで紹介されているショートアンサーのテストサンプルです。リスニングでは、マルチプルチョイス・穴埋め問題・ラベリングなど出題パターンが決まっています。IELTSは選択式ではなく記述式の試験となっているため、スペルミスに注意することが6.0を取得するための重要なポイントといえるでしょう。
スピーキングで求められる英語力
スピーキングは3つのパートで構成されており、1パートあたり4、5分程度となっています。
Part1:ジェネラルな質問を含む日常会話
Part2:指定されたトピックに関するスピーチ
Part3:Part3に関連したディスカッション
上記はスピーキングテストの具体的な内容です。また、スピーキングは、流暢さと一貫性・語彙力・発音・文法力と正確さといった、さまざまな評価基準に沿ってスコアが決定します。簡単な英単語だけでなくトピックに適した表現を用いることも大切です。6.0を取得するためには、瞬発力とプレゼン力も欠かせないスキルとなっています。
スピーキングの評価基準
スピーキングで6.0を取得するための基準について、さらに詳しく見ていきましょう。
流暢さと一貫性 | ・一貫性を失うこともあるが、進んで話そうとする ・幅広い連結詞を使用できる |
語彙力 | ・不適切な場合でも意味を明確にできる ・概ね正しく言い換えができる |
発音 | ・柔軟性に欠けるが、複雑な構文も使用できる ・間違いもあるが、理解に支障はほとんどない |
文法力と正確さ | ・幅広い発音の特性を使用できるが、不安定 ・概ね理解しやすいが、不明瞭な音が混じる |
上記の表はIELTS公式サイトで紹介されている評価基準を簡潔にまとめたものです。完璧に話せなくても6.0レベルの評価は得られますが、日本人は流暢さと一貫性・発音に苦手を感じる人が多くなっています。
ライティングで求められる英語力
ライティングは2つのタスクで構成されており、タスク1では150単語、タスク2では250単語で内容をまとめます。ライティングの評価は十分な研修を受けたIELTS試験管によって採点されます。評価の基準は4つ設定されています。
・課題の達成度
・一貫性とまとまり
・語彙力
・文法知識と正確さ
スピーキングの技能と共通する点もありますが、ライティングと比較して、より専門的な単語や表現が求められる傾向です。
ライティングの評価基準
スピーキングで6.0を取得するための基準について、さらに詳しく確認しましょう。ここではタスク1の評価基準を紹介します。
課題の達成度 | ・課題の要件に取り組めている ・統一性がない場合もあるが、概ね明確に記述できる |
一貫性とまとまり | ・情報や意見の配置に一貫性があり、概ね連続性もある ・参照が明確でなかったり、適切でなかったりする |
語彙力 | ・課題に対する十分な範囲の語彙を使用できる ・専門的な語句において、不正確さが見られる |
文法知識と正確さ | ・簡単な構文と複雑な構文の両方を使用できる ・複雑な構文の使用は限定的 |
上記の表はIELTS公式サイトで紹介されている評価基準を簡潔にまとめたものです。正確さに欠けても6.0レベルの評価は得られますが、複雑な構文や専門的な語句を用いようとする姿勢も重視されます。
IELTSの平均スコア
IELTSは9.0~3.0の間で、0.5刻みに評価されます。9.0が最高点、3.0が最低点となるため、6.0がIELTSのちょうど中間の点数です。IELTSが公開しているデータによると、日本人の平均スコアは5.8となっており、具体的な数値は以下の通りです。
リーディング | 6.1 |
リスニング | 5.8 |
スピーキング | 5.5 |
ライティング | 5.8 |
ヨーロッパ圏の平均スコアは高い傾向にあり、イタリアが6.8、スペインが6.9、フランスが6.7となっています。同じアジア圏では、中国が5.8、韓国が6.0、台湾が6.1です。全体の傾向としては、リーディング・リスニングのスコアは高く、スピーキング・ライティングのスコアが低くなっています。
IELTS6.0をTOEIC・英検・TOEFL iBLと比較してみよう
IELTS6.0をTOEIC・英検・TOEFL iBLと比較して見てみましょう。ただし、測定する技能や試験の目的が違うため、あくまで目安としての換算表となります。
IELTS | 6.0 |
TOEIC | 780点 |
英検 | 準1級 |
TOEFL iBL | 70点 |
他の試験と比較すると、日本人の平均値5.8というスコアのレベルの高さがわかります。このことから、一定の英語力を持つ人たちが、IELTSを受験しているといえるでしょう。また、選択式の試験と比較しても難易度はあがります。IELTS6.0を取得するためには、本質的な英語理解が必要となります。
IELTS6.0が求められるシーン
アカデミック・モジュールでIELTS6.0が求められるシーンとしては、アジア・オセアニアの一流大学への留学、海外大学院への出願などが挙げられます。ジェネラル・トレーニング・モジュールでIELTS6.0が求められるシーンとしてはビザ申請などが挙げられます。
ただし、すべての国でIELTSの結果が必要なわけではありません。オーストラリアやカナダなど一部の英語圏の国となるため、最新情報を確認するのがおすすめです。
【パート・学習分野別】IELTS6.0を取るための対策
IELTSの試験時間は約2時間45分で、リーディング・リスニング・スピーキング・ライティングの4技能から評価されます。IELTSは傾向と対策をしっかりと行うことで、はじめての受験で6.0以上を取得することも可能です。基本的に4技能を中心に学習することになりますが、英語力の基礎である単語と文法の学習も欠かせません。本章ではパートと学習分野別に効率的な学習法を紹介します。
リーディング
IELTSの公式が公開している国別データでもリーディングは高いスコアとなっています。日本でも英文を読むことに慣れている人が多いですが、より正確に内容を理解できるように学習しましょう。具体的には文の構造を正しく理解する必要があります。
What I bought was a new computer.(わたしが購入したのは新しいパソコンです)
たとえば、上記の文章は強調構文です。短い文章であれば、a new computerを強調するための語句としてwhatを認識できますが、一文が長くなるほど混乱しやすくなります。文の構造をしっかりと把握するためには、英文法が欠かせません。「何となく書いてある状態がわかる」ではなく、構文を理解して論理的に読み解くスキルを身につけましょう。
リスニング
リスニングでは一文すべてを聞いたあと、それを文字で書き出す訓練がおすすめです。シャドーイングも有効な学習法ですが、聞き取れているつもりで、実は正しく理解できていないケースもあります。とくにIELTSではスペルの正確さも求められるので、聞き取った単語を見える化することも重要です。スペルに関しては人名を問われるケースも珍しくありません。他の英語試験ではあまり意識しないJohn・Martin・Serenaといった人名についても、意識して学習するとよいでしょう。
また、英語は前後の単語によって、音が結合したり欠落したりします。is・was・have・has・hadなど聞き取りづらい単語も、文脈から推測しながら適切に聞き取れるように繰り返し学習を行います。複数形や過去形を正しく認識できていないとスコアを獲得することはできません。
スピーキング
日本人はとくにスピーキングに苦手意識を感じやすいですが、とにかく英語を話すことに慣れるのが一番です。IELTS試験の本番のように相手がいるとベストですが、自分1人で練習することも可能です。IELTSスピーキングの評価には発音の項目も含まれているので、まずは発音矯正からはじめると効果的でしょう。
ネイティブの発音を聞いて、すぐに自分も声に出してみます。できれば自分の発音を録音してみましょう。録音することで客観的に自分の発音を聞くことができます。正しく発音できていない部分は、ひたすら繰り返して練習します。また、I(わたしは)の多用は減点の対象となるため、I can ではなくIt’ possible、I think ではなくin my opinionなど、すぐに使える言い換え表現を覚えておくと便利です。
ライティング
IELTSライティングも評価項目は公開されていますが、他の3技能と違い、個人学習が難しいスキルでもあります。とくに、6.0で求められる「一貫性とまとまり」という項目は主観的な判断をしがちです。高スコアのためのポイントを学ぶことはできますが、それを実践できているかどうかは、自分1人で評価しない方がよいでしょう。ライティングに関しては第三者からフィードバックがもらえる環境で学習できるとベターです。ある程度IELTSライティングの演習を終えたら、オンライン英会話などの添削レッスンを利用すると、効率良くスキルアップできるでしょう。
また、ライティングでは文法の正しさだけでなく、英語圏の学習についていけるだけの力量も求められます。新しく学んだ単語やフレーズを積極的に活用する癖をつけておきましょう。文章の幅の広さも重要な評価ポイントです。6.0を目標とするのであれば、単純な文法と単語に逃げず、英語圏の学生として通用するレベルのライティングを目指しましょう。
単語
高スコアを獲得するためには、英語力の基礎を鍛えることも重要です。英語力の基礎のなかでも、単語と文法にとくに力を入れましょう。IELTS攻略にはだいたい6,000語~12,000語が必要とされていますが、これだけ膨大な単語を1ひとつ覚えるのは効率的ではありません。
おすすめは文章として記憶する学習法です。文脈から単語を予想できるので、一文で複数の語彙を身につけることができます。また、類義語や反意語も関連付けて覚えておくと、語彙力を強化することができるでしょう。単語はインプットするだけでなく、定期的にアウトプットすることも重要です。覚えた単語はライティングやスピーキングの演習で積極的に使っていきましょう。
文法
基礎力の強化でもう1つ重要なのが文法です。英文法はルールや種類も多いので、苦手意識を持つ人が多いかもしれません。しかし、IELTSで6.0を取得するには文法の理解が必須です。量をこなすことで文法の知識不足を補うことができるかもしれませんが、膨大な時間と労力が必要です。それよりも、6.0に必要な文法を覚えてしまった方が断然効率的です。高校レベルの文法をほぼ完璧に理解できれば、6.0は目指せます。
Would you be willing to move to NewYork to run our US office?(アメリカオフィスの責任者としてニューヨークに異動してくれませんか?)
IELTS試験ではメインの主語と動詞が見分けづらい文章がしばしば出題されます。たとえば上記の例文はto が何度も出てくるので文法の構造が混乱しやすくなります。文法の構造と語彙力があると短時間で文意を理解することができるようになるでしょう。
IELTS6.0をとるための効率的な勉強法は?
IELTSは日々の積み重ねが重要となるため、試験直前の追い込みが難しい試験となります。よって、少なくとも3ヶ月以上の学習期間を確保するようにしましょう。本章では、IELTS6.0をとるための効率的な勉強法について具体的に紹介していきます。
勉強はインプットからアウトプットの順番で
勉強はインプットからアウトプットの順番でスタートしましょう。はじめは、英語力の基盤となる単語と文法を徹底的に覚えます。インプットは夜の時間が向いているので、寝る前にまとめて学習するのもおすすめです。また、記憶はインプットとアウトプットを繰り返すことで脳に定着します。翌朝覚えた単語や文法をアウトプットすると、学習効果を高めることができるでしょう。
インプットした内容は、IELTSの演習でも積極的に使っていきましょう。とくに、長文を話したり書いたりするには、文法を適切に活用できる力が必要となります。演習で間違えたところは、どうしてミスに繋がったのかを分析しましょう。間違えを修正していくことで、確実に英語力は向上します。
まずは中学英語で基礎固めを
IELTS6.0が英検準1級に相当するからといって、難しい学習だけにスポットを当てる必要はありません。とくにはじめて受験する場合は、中学英語で基礎固めをしましょう。中学英語は、単語も文法も頻出表現が多用されています。中学レベルのテストで満点を取れるくらい本格的に取り組むことで、IELTSでも高スコアを取得しやすくなるでしょう。中学英語は簡単に見えるかもしれませんが、満点を取ることは実は結構大変です。本当に理解していないと、小さなミスを繰り返してしまいます。
中学英語で基礎固めができたら、つぎは高校英語に進みます。高校レベルのテストで満点が取れたらIELTSのリーディングとリスニングは、ほぼ6.0以上が取得できるはずです。IELTSは、実践的な英語が使えるのかを4つの技能から判断するテストです。試験の対策を行うと同時に、英語力を総合的に強化することを意識しながら学習しましょう。
英会話教室でプロの指導を受ける
記述式のIELTSでは英会話スクールでプロの指導を受けることが高スコアへの近道です。繰り返し問題を解いても、どこが減点要素になっているかわからなければ改善ができません。とくに、スピーキングとライティングの技能はプロの指導がなければ、スコアが上がりづらいでしょう。
英会話スクールには教室に通い対面で学習する方法とオンラインで学ぶ方法があります。忙しい日々を送る社会人は時間の融通がきくオンライン英会話がおすすめです。オンライン英会話では、さまざまなコースがあります。IELTSに特化したレッスンやライティング添削など、スキマ時間を活用して学習しやすい点が魅力です。IELTSが求める使える英語力を身につけるためには、プロの指導のもと、実践を繰り返すのがもっとも効率的な学習法といえるでしょう。
IELTS6.0について理解が深まったら
IELTS6.0が日本人の平均点を少し上回るレベルであることがわかりましたね。今後、英語を武器にしていきたいという人は、今のうちにIELTS6.0から取得しておくと、選択肢が大きく広がることでしょう。
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