どんなに海外旅行慣れしている人でも、海外に行くと一つや二つ日本との違いに驚くことがあるでしょう。これが「カルチャーショック」と呼ばれるものですが、逆に海外に長く住んで帰国するとびっくりすること、つまり「逆カルチャーショック」という状態に陥いることがあります。
いい意味でも悪い意味でも日本を新鮮な目で見つめなおす経験は、外国人が来日したときに、不思議に感じたり感心したりする感覚とある意味似ているといえます。今回は私が数年ぶりに帰国した時に感じた逆カルチャーショックについてご紹介します。日本で当たり前のことが海外で当たり前ではないことを知り、異文化理解の参考にしていただければと思います。
日本の高いサービスレベルにびっくり
日本は世界一といってもいいぐらいサービスレベルが高く、来日した外国人もまず驚くのがこの点ではないでしょうか。以前は普通に感じていたもので、改めて感心した点をいくつかあげます。
店員や担当者の態度に逆カルチャーショック
なんといっても店員が笑顔で親切!たまに無愛想な方もいますが、ほとんどの場合は気持ちの良いサービスをストレスなく受けることができます。海外ではお店はもちろんのこと、レストランのウェイターやウェイトレスでも無愛想な人も多いです。受ける側は割り切るしかないのですが、すべき仕事をしているのだからいいという感覚や、人によっては人種差別的感覚がある人もいます。
チップが給料の半分を占めるようなアメリカでは逆に愛想が良かったりもしますが、決まったチップの習慣がない欧州やアジアではお客に媚びる態度をしない人も多いです。レストランで頼まなくてもおしぼりやお水がでるのも日本の素晴らしいサービスの部分です。
日本では何か問題があった時に店側の落ち度でなくても、とりあえず謝られることにも驚きます。海外では謝った方が責任あるとなるので、よほどのことがない限りすぐに謝るということはありませんし、相手に非を認めさせるためにはいちいち交渉しなくてはなりません。
また、私の中ではこれが毎回一番びっくりするのですが、日本では役所も親切ですね。区役所では椅子が全員座れるよう行き渡り、たった10分待っただけで「お待たせして申し訳ありません」と謝られたことがあります。海外では場所によっては数10分、下手したら数時間立ったまま待たないといけないこともありますし、当然待たせて申し訳ないということもありません。役所の担当者の態度に苦情を言っている人もたまにいますが、日本の役所はとても対応がいいと思います。
コンビニの質に逆カルチャーショック
海外でもコンビニはどこにでもありますが、日本のコンビニは本当に素晴らしいです。来日した外国人が口を合わせていうのが日本のコンビニのすごさ。どこのコンビニにもATMやコピー機が備え付けられており、旅行やイベント、遊園地などのチケットも購入可能。さらに宅配便も受け付けてくれます。
お弁当の豊富さも素晴らしい点の一つです。一人暮らしだったり、仕事で忙しいと毎日料理をするのも大変ですが、近くのコンビニで美味しいお弁当を購入することができます。海外のコンビニにもお弁当はありますが、いかにもレトルト的なものも多く、サンドイッチ類も全く美味しそうなものがありません。海外に住んでいて恋しいものの一つが日本のコンビニです。
早いサービスに逆カルチャーショック
トイレが詰まった時や何か問題が起きたの修繕の速さ、丁寧さ、正確さは日本の右に出るものはないでしょう。海外だと当日中に来てくれればいい方で、数日後なんてことも当たり前にありますし、「明日の○○時に行く」といってもまず時間通りに来ません。あまりに遅いので連絡すると「今日は行けなくなったからまた後日」とかも…。海外ではこういうちょっとしたことにイライラすることが多いので、日本の素早いサービスはありがたいです。
施設設備に逆カルチャーショック
スーパーやデパートにトイレがある、しかも無料で清潔というのは日本の素晴らしい点です。海外ではスターバックスでもトイレに入るのにレシートのコードが必要だったり、非常に汚かったりします。トイレに入りたければ、モールやホテルに行く必要も。香港では駅にトイレがありますが、これも職員に言って鍵を開けてもらわないといけませんし、スーパーに買い物客用のトイレはありません。日本では授乳室がどこにでもあるのは大変便利ですし、トイレのウォシュレットには我が家の子供達も毎回驚いています。
バーベキュー施設も至れり尽くせりで、何も用意しなくても体一つで気軽にバーベーキュー施設を利用できるところも多いですよね。これも日本ならではだと思います。
時間が正確に逆カルチャーショック
電車やバスの時間が世界一正確なのも驚きます。1分遅れるだけでアナウンスが流れるなんて世界中どこにもないでしょう。予定している時間通りに乗れるというのは非常に便利です。スイスも同じように時間が正確で、遅れると周りの人はイライラする傾向にありますが、このような国は大変稀なのです。
宅配が時間通りなのも日本ぐらいではないでしょうか。日本だと「10時から12時の間に配達する」とあれば、だいたい時間通りに届けてくれますよね。海外の場合、予定時間通りに配達されることは多くありません。おかげで丸一日待ち続けて無駄にしてしまうことも。
さらに配達される箱の個数を確認しておかないと、配達員に盗まれるなんていうことも。サインをしてしまうとおしまいなので、個数が多い時はサインをする前にきちんと確認するという、日本ではあまり意識しない部分に気を配る必要があります。
清潔さにびっくり
日本に行くたびに感じるのがあらゆる場所の清潔さ。「いやそんなことない」という人もいると思いますが、日本の清潔さは世界有数です。
トイレが綺麗
海外では社内トイレも結構汚かったりするのですが、日本は駅構内や空港、スーパーなどの公共トイレでもきれいなのに驚きます。次の人のために綺麗に保つのが学校教育やクラブ活動で身についており、あたり前になっているのが大きいと思います。海外のトイレの汚さは慣れるまでストレスを感じる人も多いのではないでしょうか。
施設や道路がきれい
これもよく外国人にもなぜなのか聞かれるのですが、とにかくゴミ箱の少なさに驚きます。ゴミの持ち帰りが習慣となっており、それが苦にならないからでしょう。サッカーW杯でも毎回日本人サポーターがゴミ拾いをしている場面や、選手たちのロッカールームがきれいに片付けられていることが海外で賞賛されますが、「立つ鳥跡を濁さず」が自然に身についており、意識しなくてもできるのはすごいことです。
ペットのふんは最近は海外でもきちんと拾う人も多いですが、尿も水で流すところを見たときはびっくりしました。確かにその方が道歩く人は気持ちいいですし、こういった細かいところでも気を配るというのはステキですね。
カバンを直に置かない
日本はお店の中やレストラン、道もきれいなのに、必ず下に何か敷いたり、レストランならカバン置きがあったりして、床に直に置く人がまずいません。もともと家の中は靴を脱ぐ習慣があるので、外は汚いという感覚があるからだと思いますが、宅配の箱を下におかれることを避けるために下に敷く商品があることにも驚きました。
安全さにびっくり
日本も昔のように地域の人をお互いよく知っており、地域全体で不審者がいないか見守るというところは減っていますが、それでも海外と比べたら治安が非常にいいです。久しぶりに日本にきて特に驚いたのが次の3つです。
カバンや携帯を置いたまま席取り
カバンや携帯を置きっぱなしにして席取りをすることは海外ではありえません。席を全員が離れた瞬間になくなる場合もあるので、必ず誰か1人は荷物を見張る人が必要です。レストランの席でもバッグは隣の席や横に置いたりせず、背中と椅子の背もたれの間に置く人も多く、もし下に置くなら通りかかった人が触れられない位置に置くことが普通です。
常に足の間の挟んだりして体から離さないということが当たり前になると、日本では警戒心が強すぎると逆におかしな感じに見えるようで知人から指摘されることもあります。日本人は海外でスリや置き引きにあいやすいといわれますが、これは日本の治安がいいことの裏返しでしょう。
電車で寝る
朝や夕方の通勤ラッシュでは電車で寝ている人を多く見かけますが、これも海外にはない光景です。痴漢はいますが、バッグを盗まれたり、身の危険を感じることもないからでしょう。電車で寝ている人を見るとびっくりするのと同時に、平和であることにホッとします。
子供がひとりで通学
海外の多くの国で13歳以下は1人にしてはいけない法律があり、小学生で学校が家の目の前でも親やナニーによる送迎が普通ですし、お迎えなしでは帰らせてくれません。日本は小学一年生でも電車やバスに乗ってひとりで通学する子供も多いですよね。日本では見慣れた光景ですが、海外でずっと子育てしているとかなり驚くことの一つです。一人で通ってえらいなあという気持ちと、事件が色々あるとはいえ、日本はまだまだ安全な国だと嬉しくなります。
その他あれこれにびっくり
最後に、サービス・清潔・安全以外の面でありがたく思ったこと、驚いたことについてご紹介します。「え、こんなことでびっくりするの?」ということもあるかもしれません。
車内が静かですごい
日本の電車やバスはとにかく静か!車内で携帯で話す人もいませんよね。海外では普通に大声で話している人もいますし、中には音量あげてビデオ見たりゲームやっている人もいます。また携帯で通話するのは普通のことです。日本に帰ったときに「日本の車内が静かすぎて少し居心地悪い」と思っていたら、目の前を歩いていた人が同じことを話していたので、私に限らず海外在住者で同じことを感じる人もいるみたいですね。
自動販売機がどこにでもあるのがすごい
海外では道にある自動販売機は壊されてしまうので駅構内以外はないことがほとんどです。しかもドリンクに限らず、花束や下着、タバコ、納豆、お米など本当に色々な自動販売機があって面白い!香港は治安がとてもよく、自動販売機もわりとどこでもあるのですが、やはり日本と比べると圧倒的に数が少ないです。自動販売機がどこにでもあるのは、地味に便利なところでありがたい部分です。
他国にも缶コーヒーがありますが、欧州の場合、コーヒーはカフェや自宅で飲むものという意識が強いので、基本的に缶コーヒーを飲む習慣がありません。「日本に行って自動販売機で缶コーヒーを買うのが夢」という友達がいるほど、欧米の人には珍しいことなのが面白いですね。
東急ハンズやドンキホーテといったなんでも屋がすごい
東急ハンズやドンキホーテは、外国からの観光客が日本のショッピングでまず行きたい場所トップ3に入るのではないでしょうか。海外のメガスーパーとはまた違って面白いものがたくさんあるのが魅力です。香港にもドンキホーテがいくつもあるのですが、日本とはちょっと違うので、同じ感覚で行くとがっかりします。東急ハンズは本当に便利なので、海外に似たものがないのは寂しいです。
100円均一も日本ならではのものの一つ。ただ最近では中国や香港にはビジネスモデルを真似たお店や日本のダイソーもあります。欧米でも似たコンセプトもお店がありますが、やはり日本の100円均一の品揃えの豊富さとは違いますので、外国からの観光客もお土産を買って行く人を多く見かけます。
外でお酒が飲めるのがすごい
アメリカでは法律によって公共の場でお酒を飲めません。日本では夏になるとビーチや花火大会でビールを飲んでいるコマーシャルがありますが、考えられないことです。よく映画で紙袋に入れて隠して飲んでいる場面がありますが、それは法律違反になるから。またお酒の購入もIDを見せないと買えません。
アジアではお酒に関してはゆるい国も多いですが、世界的に見たら電車内で飲めるよう、プラットフォームのキオスクでお酒を売っている日本はかなり異質です。日本は色々と細かいルールがあって窮屈さを感じることもありますが、お酒に関しては寛容だと思います。酔いつぶれて道端に寝ていても危険な目にあわない治安のよさもあるのかもしれません。
エスカレーターのスピードが遅くてすごい
毎回感じることなのですが、日本はとにかくエスカレーターのスピードが遅いです。お年寄りや小さな子連れの方には安心して乗ることができるといういい面がありますが、少しじれったく感じる部分でもあります。
どのような逆カルチャーショックがあるのかがわかったら
久しぶりの帰国時に新鮮に感じたことを書きましたが、海外で戸惑うことはご紹介したことの逆の場面ということといえるでしょう。こういったことが当たり前ではないことを頭に入れておくと、海外旅行や海外在住することになった時に戸惑いが少なくなるのではないかと思います。
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