聞き手:株式会社レアジョブ代表取締役会長 加藤智久
ネオキャリアにおける海外事業の位置づけ
Q:ネオキャリアの事業概要を教えてください。
ネオキャリアは、「人材」「ヘルスケア」「WEB」「海外」の4ドメインを主軸に活動しています。国内34拠点、海外11拠点に展開しており、メンバーは国内1,300人、海外200人となっています。売上高は2010年度の22億円から2014年度の174億円と、急成長を遂げています。海外事業に関しては『REERACOEN』というブランド(NEO CAREERのスペルを逆にした造語)で事業を展開しています。
Q:ネオキャリアは創業以来ずっと急成長をされているのですか?
ネオキャリアは、2000年以降に創業した企業で、売上が100億を超えて成長を続けている数少ない人材サービス会社の1社です。ただ、実は、2度も倒産の危機を経験しています。1度目は、創業してすぐの1年半後で4000万円の赤字に至った時です。当時、私は取締役として会社の立ち上げに携わっていたのですが、私を代表にして会社を立て直そうというメンバーからの声に迷いながらも決意を固め、代表に就任しました。就任後すぐに単月黒字化を果たし、V字回復をするに至ります。そして2度目は、ご存知の通り、2008年のリーマン・ショックです。人材市場の需要が急激に落ち込み、「派遣切り」といった派遣に対する世間からの悪評もあり、大手を含め多くの人材会社は事業所の撤退や人員削減を行い、次々と事業を縮小していきました。
実はこのリーマン・ショックが、私たちの成長の大きなきっかけでもあるのです。周囲の企業がブレーキをかけて引いていくなか、ネオキャリアはあえてアクセルを踏み、攻めました。“危機を機会と捉えた“いわゆる「逆張りの戦略」です。この「逆張りの戦略」が功を奏し、私たちは成長をし続けることができました。
Q:「逆張りの戦略」について具体的に教えてください。
とにかく、私を含めた経営陣全員がメンバーと一緒に営業現場を回り、お客様の声に耳を傾けました。すると2つわかったことがあったのです。1つは、東京と比較して地方の落ち込みは小さいこと。もう1つは、派遣に対する企業側のニーズは薄れていなかったこと。実際に地方の会社へ伺った時に「人材会社の営業担当者がいなくなってしまって困っている」や「派遣の方が欲しいんだけれど」と多くのお客様がおっしゃっていました。しかし、他社は地方から撤退し、お客様は新たな派遣の事業者を求めていました。そこで経営陣で話し合い、「ニーズはある」と判断しました。
本来であれば既存事業を維持するのも精一杯な状況だったのですが、ここはお客様の声であるご要望にお応えしようと、「地方展開」に力を注ぎ、新規事業として「派遣ビジネス」を立ち上げたのです。私をはじめ経営陣の給与もカットして、この「逆張りの戦略」に挑みました。
西澤亮一社長自らが海外事業を率いるコミットメント
Q:そのような中、ネオキャリアの海外展開はどのような決断のもと行っているのですか。
私たちは2030年にアジアを代表するサービスカンパニーになるというビジョンを持っています。
それに基づき、2012年度から3か年計画を立案、実施してきました。人材マーケットは、自社でメディアを持っている会社と、そのメディアを活用する会社とに大きく二分されます。現在のネオキャリアは後者を主軸に運営している会社であり、このビジネス構造を変えるのはなかなか難しいことです。構造を変えられないのであれば、他社がまだ攻めきれていないところを攻めるほかないと考え、当時は他社がまだ手薄だったヘルスケア(介護、保育)と海外の領域に力を入れることに決めました。海外も中国などに比べると、特に東南アジアは、まだ進出をしている企業も多くはありませんでした。私自身は海外事業に取り組むために、日本の事業をすべて他の経営陣に任せるという決断をしました。日本の事業はもう私がいなくても大丈夫。今のネオキャリアで、自分が進めるべき場所は海外だ。もう一回会社を創業するつもりで進めよう。そう覚悟を決めて、2011年にシンガポール現地法人を立ち上げました。現在では、海外に11拠点を展開しており、今のネオキャリアも私も、まだスタートする前の準備段階です。2020年に国内50拠点、海外31拠点を達成した時が「スタートライン」だと認識をし取り組んでいます。
Q:海外に11箇所も拠点があるとマネジメントが大変だと思います。西澤亮一社長はどのようにコミュニケーションを図っているのですか?
週次で、各拠点とスカイプを使って、現地の責任者とコミュニケーションをとっています。ミーティングは1回30分ずつとして、1週間のうちの1日はずっとスカイプでMTGをしているという状態です。ミーティングで私が心がけているのはコーチングです。「何が課題だと思う?」「どうやったらできると思う?」を聞き続け、責任者として自分で考えて行動する力がつくように聞き役に徹しています。各拠点でやるべきことが明確になった後は、実行状況をフォローアップしていきます。海外の場合は、少人数で拠点を立ち上げていることもあり、責任者は相談相手がいなくて悩むこともあると思います。なので、私自身が直接コミュニケーションをとることで相談相手となり、各拠点責任者を経営者として育てていく必要があります。それと、ライバル拠点を意図的につくっています。海外拠点は2拠点ずつ同時に立ち上げるようにすると、拠点間でいいライバル関係が生まれるようになります。また、週報は全拠点で共有したり、SNSでグループを作ったり、色々なところで海外事業全体の一体感を持つことができるような仕組みを取り入れています。特に成功事例を多く共有することで、責任者に「これなら自分にもできる」と感じられるようにしています。
Q:なぜ海外事業は西澤亮一社長自ら携わることにこだわっているのですか。
先ほどもお伝えしたように、拠点立ち上げは一種の創業です。勝ちパターンを築き上げるだけではなく、目標達成することにコミットしていくカルチャーを創りあげなければいけません。たった一人での事業立ち上げ、ましてや海外ともなると不安との戦いが続きます。どうしても弱音を吐いてしまうこともある。出来ない理由を探してしまうこともある。実際にどうすることも出来ない壁にぶつかることもある。そこに私が一緒に入り、フォローアップをすることで、スピードを上げることができると感じています。
例えば、メンバーが提携相手と話が盛り上がり、「じゃあ、やりましょう」の一言でビジネスが進む、という場面があったとします。スタートしたばかりの海外では曖昧なことも多く、その場で「YES」と言っていいのか、判断に迷うこともあります。でも、そこに最高責任者である私が現地に行って「YES」と言えれば、そのスピードが速められる。だからこそ、私が海外事業に携わることで価値が発揮できると考えているのです。
経営者の仕事はコミュニケーション。だから英語は必要
Q:各海外拠点の責任者が日本人だとしたら、西澤亮一社長自身は英語を話せなくてもよいように思えるのですが、いかがでしょうか?
英語は必要だと思っています。なぜならば、海外拠点の責任者が日本人であったとしても、現地スタッフとのコミュニケーションは英語だからです。どのビジネスにおいても、経営者の仕事はメンバーの熱量を最大化すること。自分の考えをメンバーに伝えるコミュニケーションは最も重要な仕事だと考えています。
私自身は各拠点に必ず年1回は訪問し、全メンバー向けの研修を行い、メンバーとのコミュニケーションを図っています。レアジョブ英会話のおかげか、現地での飲み会の時の会話や、「最近どう?」というコミュニケーションは少しずつ取れるようになってきました。ただ、残念ながらまだ会社の戦略を伝えるというレベルには至っていません。現時点では経営戦略の伝達など重要なコミュニケーションには通訳を使っていますが、ニュアンスが正しく伝わらず、時間がかかってもどかしく感じることも多いです。交渉をスピーディーに進めるためには、高いレベルでの英語力の必要性を感じています。日本に帰国する際はいつも「英語を頑張らなくては」と思いながら空港に降り立つのですが、オフィスへ戻るとビジネスの忙しさに紛れ、ついつい後回しになってしまいます(苦笑)。
人生初めて「必死で勉強した」成功体験はシンガポールでのライセンス取得
Q:現地社員と気軽なコミュニケーションができるトップも日本ではなかなか珍しいかと思います。もし西澤亮一社長が全く英語ができなかったら、ネオキャリアの海外展開はどうなっていたと思いますか?
実はですね、今でこそ日常会話は困らなくなっていますが海外事業を立ち上げた当初は、全くといってよいほど英語ができなかったんですよ(笑)。
私たちが最初に立ち上げた海外拠点はシンガポールだったのですが、シンガポールで人材紹介に携わる事業所は、責任者のライセンス取得が必須なので、それがないとビジネスを行えません。英語ができなくても責任者は私自身だったので、ライセンス取得のために仕事が終わった後、毎日朝4時まで英語の勉強に取り組んでいました。内容は主に人材紹介に関わる法的知識を問うものです。実は私はこれまで、英語を含め、人生の中で必死に勉強したという経験がありませんでした。学校のテストは一夜漬けが得意だったのでそれで成績も悪くなく、大学も推薦入試で合格しました。その私が、今まで見たことのないような英語ばかりの試験にチャレンジすることになったのです。
とにかく、合格しないとビジネスを立ち上げることができない、責任を取ることができない、その一心で必死に取り組みました。平日は仕事を終えてから家で勉強する、土日はカフェでずっと勉強する、そんな日々が続きました。会社の役員も、妻も、周囲の誰もが「あきらめた方がいい」の大合唱です(笑)。「でも自分がとらなければ先には進まない。何が何でも合格するんだ」と必死にやり続けました。
シンガポールでの試験を1回目に受験した時は、自分でもまだ勉強が追いついていないような感覚で、無理だなと思ったら、やはり不合格でした。その後2回目に受験するまでの数か月間は、人生で最も勉強したように思います。ここであきらめたら海外事業をスタートすることができないので、とにかく必死で取り組みました。2回目の受験時は手応えがあり、合格できたと思いましたが、不合格でした。そして3回目の受験でやっと合格した時、人生で初めて勉強での成功体験を味わいました。間違いなく、ここ数年の中で嬉しかった出来事のひとつですね。
Q:西澤亮一社長はどうしてそこまで粘り強くあきらめずに取り組むことができたと思いますか。
他の人と比べて、自尊心が強いからなのかなと思います。小中高、大学までは、ずっと組織の中心にいました。しかし、メンバーとネオキャリアを創業してまもなく倒産の危機に陥り、同級生に「西澤、お前人生間違ったよな」と言われたこともありました。その時、「今に見ていろよ!」と思いました。「絶対に自分の選択は間違っていない、そのことを証明する」と心に決めたのです。シンガポールで勉強をしている時にも「もう後には退けない」という一心でした。国内事業は全て他のメンバーに任せ、アジアで事業の立ち上げを成功させなければ日本には帰れない、合格する以外の選択肢はないのだ、という状況に自分を追い込んだんです。「周りは“間違っている”と言うかもしれないが、ならば絶対に自分で“正”にしよう」と。
そのように思えたのも、もともとは北海道にいる両親の教育のおかげだと思います。経営者である父は、代表就任の決断を迷っていた時も、「お前のやりたいようにやればいい。それが最も正しい判断だよ。」と背中を押してくれました。
トップがここまで頑張った、英語のできない西澤代表でも英語ができるようになった、ということは、会社にとっても良い影響を与えたようです。メンバーから「奇跡が起きた(笑)」「自分も頑張らなきゃ」といった声が多く寄せられましたし、それがきっかけで英語の勉強をスタートしたメンバーも多いようです。
英語は「will」から「must」へ
Q:英語ができないけれども、頑張らなきゃと思っている方たちへのメッセージをお願いします。
しっかりと目的意識を持って海外へ行き、そこで生活をすれば、3か月程で日常生活の最低限のことはできるようになると思います。ですから、時間に制約がない方は、まずは海外で生活してみることをお勧めします。
英語を勉強したいと思っているけれどもできていない方、それも、日本で仕事をしながら英語に取り組む方は、「will」から「must」に転換すべきだと思います。家族、仲間、周囲の人たちにコミットして、自分の逃げ道をなくす必要があります。
今、まだ「must」を感じることができていない方は、ぜひ冷静になって周囲を見回してください。日本は人口が減少し、マーケットは縮小していきます。アジア、アメリカ、ヨーロッパの市場に向かわなければ日本企業の未来はない。英語力があればもっと世界が広がる。だからこそ私も「最近どう?」というコミュニケーションレベルの英語力よりももっと上に行かなきゃいけないと思っていますし、みなさんもそのことに気づき、「must」として英語の勉強に取り組んで欲しいなと思っています。
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