いつも自分に問いかける。自分のビジネスに、夢に、英語は必要?/越川慎司さん

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いつも自分に問いかける。自分のビジネスに、夢に、英語は必要?/越川慎司さん
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kato 聞き手:株式会社レアジョブ代表取締役会長 加藤智久

日本マイクロソフト社に入社して2015年の7月で10年を迎えた越川慎司さん。長くCQO(Chief Quality Officer)を経験された後、現在は、業務執行役員 アプリケーション&サービスマーケティング本部 本部長を務めていらっしゃいます。「常にビジネスの幅を広げ、自分の能力を発揮できるステージを探した結果、自ずと海外に目が向いた」と話します。英語を自在に操る越川さんですが、英語は重要なツールであって、目標ではないと言い切ります。4つの内資、外資企業での経験を踏まえ、グローバルな世界をステージとして、結果を出し続ける越川さんに、英語の捉え方、活用方法を中心に話を伺いました。

自分の能力を発揮し、ビジネスを展開する場はグローバルな世界

Q:世界を舞台にグローバルに活躍を続ける越川さんのバイタリティはどこから生まれているのでしょうか?

私の一卵性双生児である兄は、母のお腹の中で心臓が止まってしまいました。しかし、私の心臓は動いていたので、母はリスクがあるにも関わらず、私を産んでくれました。しかし、そこから母は妊娠中毒症になって体調を壊していき、結果としてリスクを背負いながら生きる事になりました。そういった事もあって、亡くなった兄と苦労をかけた母と私の3人分の人生を謳歌したいのです。そのためには、いつも守りではなく攻めの人生にしなくてはならないと思っていますし、どんなことにもチャレンジしたいというマインドを持っています。それは学生の時も、今も変わりません。

Q:世界をステージとして、グローバルにビジネスを続けてこられた越川さんにとって「英語」とは、どのような存在ですか?

NTTに新卒で入社した頃は、TOEICは800点を超えていたので、自分は英語が話せるものと、少し勘違いしていました(笑)。一方、同世代のイチローさんや中田英寿さんの活躍を見て、私もいつか海外に出て行きたいと思ったのもこの頃です。自分の能力を発揮し、表現できるビジネスの市場はどこかを考えると、自ずとグローバルな世界に目が向きました。当時も今も、企業の中で出世することにはあまり興味がありませんし、仮に日本でビジネス活動するにせよ、世界を知っていた方が、より能力は発揮できると思っています。「越川さんにとって英語が必要ですか?」と聞かれたら、私の場合は間違いなく「間違いなく必要です」と答えます。何故なら、ビジネスはもちろん、活躍したい場はグローバルで、日本だけではありませんから。日本だけにしたら、せっかく自分が活躍できる場を制限することになりませんか?

最初のあだ名は「ペン」

Q:越川さんは、ご自身のビジネスに必要な英語をどのように身に付けていかれたのかを教えてください。

最初のあだ名は「ペン」

学生の時はスカッシュというスポーツに打ち込んでいました。英語学習は好きでしたし、スカッシュで海外遠征を経験したり、練習相手がイギリス人だったりと、カジュアルな英会話は慣れていたので、TOEICで800点という点数を取れたのだと思います。でも、当時はすっかり勘違いをして、自分の英語はビジネスで通用すると勘違いしていました。

その後、アメリカ系外資企業に転職したのですが、上司はオーストラリア人でした。最初のうちは、彼の発音が聞き取れず、何を言っているのか全く理解できませんでした。しかし、英語が理解できなくてはビジネスになりません。仕事も忙しく、毎日帰りも遅かったですから、英会話学校に通うこともできず、NHKラジオの続基礎英語、ビジネス英会話を録音し、通勤の電車の中でひたすら聞いて丸暗記していました。

Q:越川さんが英語を学習するうえでご苦労されたことはありますか?

外資企業に転職した直後、ある打ち合わせで、ペンとメモを探していたアメリカ人がいたんです。丁度ペンを持っていたので、手渡そうとしたのですが、思わず口から出た言葉は、“I am a pen.”その時から私のあだ名は、「ペン」です。おまけに「シンジは英語ができない」というレッテルも貼られてしまいました。本当に悔しくて、その後は必死に勉強しました。

文法はある程度理解できていても、頭で日本語を英語に変換する習慣がついてしまっているので、とっさに英語のフレーズが出てこないのです。それならばと、特にビジネスに使えるフレーズを頭に入れて、スムーズに出てくるように訓練したんです。そうしているうちに、ボキャブラリーも増えて、ビジネス英語に慣れてきました。そうなると、オフィスにいるネイティブスピーカーの同僚も、話す速度を上げたり、高度な言い回しをしたりしてくるので、まさに、オン・ザ・ジョブ・トレーニング! そのおかげで、会話やディスカッションも、何とか対応できるようになりましたし、英語に対する抵抗がなくなったこともありがたかったです。

Q:ビジネスの場面で、常に必要な英語が何なのかを、意識して学ばれてきたのですね。

相手の言っている英語がわからない時は、“Pardon me?”、“Sorry”等と、わかるまで、聞き返すようにしていました。理解していないのに、「うんうん」とわかったような顔をしている日本人を時々見かけますが、私は、今でもわからない時はわからないと言うようにしています。

最近はまた、毎日のように、アメリカの本社との電話会議がありますので、英語を使う機会は増えています。今でも、交渉に必要なフレーズや技術、専門用語をネットで検索したり、他の人が話したり交渉したりする場面を見聞きしたりしながら、勉強しています。そして、交渉が終わった後は、自分の英語を必ず振り返る習慣も身に付けました。

ビジネスに英語は必要ですか?

Q:どんなビジネスにも英語は必要だと捉えられますよね。

どんなビジネスにも英語は必要

私の経歴がユニークだからと、社内外でお声がけいただき、現在は約20人の方のメンターを務めています。そんななか、「英語の勉強は私に必要ですか?」と聞かれる機会はとても多いです。しかし、その時に私はまず「必要だと思う理由は何ですか?」と聞き返します。なぜなら、その人がどんなビジネスに就きたいのか、何をしたいのかがわからなければ、英語、日本語、中国語のどれがそのビジネスに必要なのかは答えられないからです。その人の夢、やりたいビジネスが明確で、そこに英語が必要だと思うなら、やればいいんです。非常にシンプルです。残念ながら、「英語が必要ですか」と言う人に限って、3年、5年後の自分の姿が明確ではないのです。まずは、自分のやりたいビジネスを明確にしてから、手段としての語学、時によっては、プレゼン、交渉等のスキルアップを提案しています。

最近は、就職説明会に行くことも多いのですが、必ず「どうしたら起業できますか」と聞いてくる学生がいます。「起業は手段であって目的ではない」と、口を酸っぱくして説明します。「英語が必要ですか?」も、私にとっては、同じ類いの質問ですね。でも、「将来、国際医療に従事にしてグローバルに活躍したい。日本で5年間勉強してから、海外に出て行きたいと思う。英語はどのように勉強したらいいか?」と聞かれれば、私の経験を基に、「何ヶ月かの間、英語しか使えないコミュニティで勉強したら?」「仕事に必要な専門用語を英語で言えるようにしたら?」など、具体的なアドバイスができると思います。

とはいえ、グローバルにビジネスを展開していくのであれば、英語が話せないなど論外です。話せないからという理由で、情報の入手が1日遅れれば、ビジネスの展開は不利になりますからね。

Q:英語学習を推奨したり、TOEICの受験を義務付けたりする企業も増えてきましたね。

効果的な学習法についてアドバイス

現在、私が現在所属するマーケティング部門は、本社との対応が必要な部署なので、英語を使いこなせるメンバーが多いです。しかし、必修の英語トレーニングはありません。しかし、特に外資系企業では、ビジネスもしくは市場へのインパクト重視で評価されますから、英語が理解できないことで、本社とやりとりができず、パフォーマンスが出せないことは許されません。成果を出すために必要なこと、例えば、プレゼンテーションやディベート等を身に付けられるかどうかは、個人の裁量です。”Achieve more”の為にはどのような働き方が必要か、どのようなスキルが必要か、個々人が率先して考えて行動に移すのです。実際に、レアジョブを利用して、英会話の勉強をしている部下もいるようです。

Q:レアジョブで学習する方も含めて、自分のビジネスの方向性や夢が明確な方に、効果的な学習法について、アドバイスをお願いできますか。

自分のビジネスや夢に英語が必要で、英語を話せるようになりたいと考えていらっしゃるのであれば、目的とする像に向かって、まず今の自分を見つめて、足りないものをどのように埋めていくかを考えることが重要です。私は、ボキャブラリーが不足していたので、ネットで調べて、その履歴を後から見直して確認したり、不足しているところをビルドアップしたりという方法で勉強しました。周りを見る限りでは、「話せた方がいい」くらいの気持ちで勉強している人は、あまり長続きしていないようです。来月からアメリカに海外赴任するという必要性に迫られて勉強している人と、将来はグローバルな世界で、英語を使うビジネスに関わりたいと漠然と思っている人では、自ずと英語に対する取り組み方が違ってくるのではないかと思います。

目的があって、それに行動が伴う。勉強には、挫折も苦労もありますから、それを乗り越えるためには、明確なゴールとそれを支えるモチベーションが必要になるのです。私もCQOの時は修羅場が多く、アメリカ本社とギリギリの交渉が必要となり、英語での交渉スキルを猛勉強しました。日本のお客様の為に、という強いモチベーションが無ければ、そこまで勉強していなかったかもしれません。

越川慎司さんとレアジョブ加藤智久
越川慎司さん(写真右)とレアジョブ加藤智久

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