グローバルビジネスで活躍するためには、英語を使ったコミュニケーション能力が必須という時代がやってきました。ビジネス英会話も重要ですが、もしかしたらそれより先に必要になるかもしれないのが、英語でビジネス文書を作成する能力です。
報告書や依頼書、提案書、契約書など、さまざまな書式の文書が必要なのは日本国内のビジネスでも同じですが、契約社会のアメリカやヨーロッパでは、一連のやりとりの内容から明文化することがスタンダードになっています。
そんな英語のビジネス文書を作成していくうえで日本人に馴染みが薄いのが「論理接続語」。この記事では、ロジカルな文書作成のために必要な論理接続語について解説します。
論理接続語でロジカルに攻める英語と、曖昧接続語で相手に委ねる日本語
英語のビジネス文書の特徴は、「体系的な構造」を大切にすることにあります。まずエッセンスを読み手に伝え、それをふまえて「いつそうしたのか」、「どうしてだったのか」など細かい説明が展開します。結論を先行させることで、読み手独自の想像の余地や誤解のおそれをできるだけ排除し、説得力を持たせようとするのです。この一連の流れにおいて、前後の文脈をつなぐ論理接続語(logical conjunction)を駆使しながら、論理が展開します。
これに対し日本語のビジネス文書は、「あり」、「おり」、「~し」、「~で」といった、複数の関係性を示唆する曖昧接続語(ambiguous conjunction)の多用により、多彩な情報が交差する流れになっています。曖昧接続語とは、メッセージとメッセージのつながりがはっきりしない接続語です。このため文書に強い説得性がなく、読み手が独自に解釈できるような余地を残している点が特徴的です。
マッキンゼー、JPモルガンで活躍し、現在は筑波大学の客員教授を務める髙杉尚孝氏は著書『英語ビジネスドキュメント・ライティングの技術』の中で、「論理接続語の活用は、明瞭表現の大切な要素」と語り、同時にビジネスドキュメントのライティングでは、「明瞭な接続は、書き手の責任」だと主張しています。
グローバルビジネスの文書は明瞭、説得型で
そもそもビジネスにおける文書作成の目的は、「読む相手に、書き手が望む行動をとってもらう」ことにあります。
日本語の文書は、上記したように「~し」「おり」「あり」といった曖昧接続語でつながれた婉曲な言い回しが多く、解釈を読み手の想像に委ねる傾向があります。日本人同士の読み手と書き手が日本語の文書を交わす場合には、「あうんの呼吸」で行間を読み取り、ニュアンスを理解しあうことを期待できるからです。
しかし、グローバルビジネスにおいて、同じように読み手に解釈を委ねることは危険です。グローバルビジネスの世界では、書き手と読み手が異なる文化的背景や商習慣を持つことが普通ですから、同じ文面について同じ解釈をするとは限りません。読み手から「何となく」理解や共感を得ようとしたりする読み手依存型の文書スタイルは、ビジネスにおいては墓穴を掘ることにつながりかねません。あくまでその基本スタイルは、読み手の誤解を生まないよう明瞭である必要があります。
そのためにも、次章で紹介する論理接続語の活用が重要な役割を持ちます。これらを用いるでメッセージ間のつながりを明らかにし、文章全体にメリハリと説得力を持たせ、誤解の生まれるリスクを軽減することが可能となるからです。
メッセージ間のつながりを明瞭にし、説得力を増す論理接続語
グローバルビジネス文書を作成する上ではとりわけ重要な、メッセージ間のつながりを明解にする「論理接続語」。日本人にはなじみが薄いかもしれないため、ここでこの言葉について解説しましょう。
論理接続語とは、前後のメッセージの関係性を表すつなぎ言葉全般を意味します。
つなぎ言葉というと、becauseやwhileなど、文法上の接続詞(conjunction)をイメージしがちですが、接続詞に限定されるわけではありません。due to(~が原因で), except for(~を除いては), by means of(~によって) などのような前置詞句も含みます。また、nevertheless(それにもかかわらず), similarly(同様に), for example(たとえば), in addition(~に加えて), as a result(結果として) などのような副詞や副詞句も含まれます。
これらは、論理的な文章には不可欠な役割を果たし、大きくいえば次の3種類に分けられます。
(1)順接付加〈conjunctive〉:因果関係と逆接以外の、何かしらの追加的な関係を表します。
「A、さらに、B」、「Aに加えてB」というように情報を付加したり補足したりするときの表現です。細かくいえば、追加、対比、解説、条件、選択の関係に区分されます。
(2)順接論証〈argumentative〉:何かしらの因果関係を表しています。
「A、なぜならB」、「A、それゆえにB」というように情報を結論と根拠で結びつけるときの表現です。細かくいえば、理由、帰結、手段、目的などに区分されます。
(3)逆接〈adversative〉:先行するメッセージに反する展開を表します。
「A、しかしB」がつながりの基本ですが、細かくは、反転、制限、譲歩、転換などに区分されます。
論理接続語の文例
代表的な論理接続語の用例を挙げます。
(1)順接付加〈conjunctive〉
<何かを追加したり補足したりする場面で>
◆ 接続詞and:および
Early to bed and early to rise makes a man healthy, wealthy, and wise.
(早寝早起きは、人を健康に、金持ちに、そしてまた賢明にする(ことわざ))
*3つ以上の語句を結ぶ場合は、通常、A, B and Cの形をとります。
*in addition(加えて), besides(さらに)などもよく使われます。
<2つのメッセージを並行させたり時系列でつないだりする場面で>
◆ 接続詞on the other hand:他方
Food was abundant, on the other hand water was running short.
(食べ物は豊富だったが、他方で水が不足してきていた。)
◆ 接続詞before:~の前
Before you leave, make sure you submit the assignment.
(出かける前に、課題の提出をしなさい。)
<前のメッセージを解説したり言い換えたりする場面で>
◆接続副詞for example:例えば
He visited several cities in Italy, for example Rome and Milan.
(彼はイタリアのいくつかの都市を訪れた、例えばローマとミラノを。)
*in short(要約すると)、in other words(言い換えれば)などもよく用いられます。
<前後のフレーズを、条件でつなぐ場面で>
◆ 接続詞if:もし~ならば
If you go to Tokyo, please let me know.
(もし東京に行くのであれば、教えてください。)
◆ 接続詞as if:まるで~のように
You look tired as if you are sick.
(あなたは疲れて見える、まるで病気であるかのように。)
<選択>
◆接続詞or:どちらか
You can have tea or coffee.
(あなたは紅茶かコーヒーを選ぶことができます。)
*else(さもなければ)、otherwise(でないと)などもよく用いられます。
(2)順接論証〈argumentative〉
<前後の文脈を、理由づけで結びつける場面で>
◆接続詞because:なぜなら
Because he was late, we could not catch the train.
(「彼が遅れたため、我々はその列車に乗れなかった。)
◆ 接続詞now that:~した今となっては
Now that my mother was dead, Iowned the store.
(私の母が亡くなったため、私がお店を所有している。)
<前後の文脈を、結論づけで結びつける場面で>
◆ 接続詞so:ですので
He did not work yesterday, so he got fired.
(彼は昨日来ませんでした、なので解雇されました。)
◆副詞句as a result:結果として
As a result ,the problem has been resolved.
(結果として、問題は解決しました。)
<手段>
◆前置詞句by means of:~を用いて
We express our thoughts by means of words.
(私たちは言葉によって思想を表現する.)
*by(~によって)、by way of(~を手段として)などもよく用いられます。
<目的>
◆ 接続詞so that:~できるように
Switch the light on so that we can see what it is.
(それが何であるかが見えるように明かりをつけなさい。)
*in order to(~するために)、for the purpose of(~の目的で)も頻繁に用いられます。
(3)逆接〈adversative〉
<前後のフレーズを、反対の意味で結びつける場面で(反転)>
◆接続詞but:しかし
I went to the gym, but it was closed already.
(私はジムに行ったが、既に閉まっていた。)
◆副詞nevertheless:それにもかかわらず
He was very tired; nevertheless he went on walking.
(彼はとても疲れていたが, それでも歩き続けた)
*however(しかしながら)、despite(~にもかかわらず)などもよく用いられます。
<制限をつけて、前後のフレーズを結びつける場面で>
◆ 接続詞although:だけれども
Although it was very late, he decided to go out.
(とても遅かったけれど、彼は出かけることにした。)
*even if(たとえ~だとしても)、even though(~であるけれども)などもあてはまります。
<話題を一転させ、新しく切り替える場面で>
◆接続副詞by the way :ところで
By the way, have you read this book?
(ところで この本をお読みになりましたか?)
*anyway, anyhow(とにかく)なども頻繁に用いられます。
まとめ
ビジネス文書において、読み手が作成意図と異なる解釈をしてしまうことは、書き手側にとって命取りにつながりかねません。多様な世界観・バックグラウンドを持つ読み手に対し、明解な論理による説得性のある文書を示すのは、簡単なことではありませんが、その手助けとなるのが論理接続語です。
婉曲な言い回しが多く、曖昧さを残す日本語的表現に慣れている日本人にとっては、意識しないと使いこなしが難しいかもしれませんが、ご紹介してきた例からもお分かりいただけるように、個々の表現は中学校や高校で習ったレベルです。意識的に活用して、解釈の違いによる誤解を生むことのないロジカルなビジネス文書の作成に役立てましょう!
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