「現在形」は実は現在じゃない? 日本語との比較で分かる、英語の現在形の感覚。

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※この記事内の例文は、World Englishes の考え方に則り、英語ネイティブにとって正確であることより、あらゆる人に分かりやすいことを優先しています 。

みなさんこんにちは。No.1オンライン英会話スクール「レアジョブ英会話」が運営する、英語情報メディア「Rarejob English Lab」ライターの石田です。

突然ですが、「私は毎週土曜日に野球をしている」という文を英語に訳してみましょう。

a. I am playing baseball every Saturday.
b. I play baseball every Saturday.

どちらが正解か、瞬間的にわかるでしょうか。 

今回は、英語の現在形について考えていきたいと思います。

なぜ現在形を扱うかと言えば、完了形 などと同じく、名前のせいで混乱を招いている文法用語だからです。

「え?現在形っていうんだから、現在のことを言う時に使うんじゃないの?」

と思われるかもしれません。だとすると、「現在進行形」と「現在形」は何が違うのでしょうか。こう考えると、ちょっと混乱してきませんか?

1.現在形とは

動詞の原形や、三単現の“s”がついたものです。英語では“present tense”と呼ばれています。

(1) I eat breakfast.
(私は朝食を食べる)

(2) He goes to school.
(彼は学校に行く)

のような、中学英語の最初に習う形式です。誰もが最初に習う=簡単だとのイメージがあるからか、しっかりとした解説をしてもらいにくく、学校文法の穴になっています。

2.「現在形」なんて実在するの?

私は落第生時代から、英語に対してひねくれた見方をするタイプでした。

「“現在形”なんてあるわけないじゃん。だって、今のことを話そうとしても、話している間に時間が経って、話し終わるころには過去の事になってるんだから」

中学一年生で現在形というものを習って以来、ずっとこのように考えておりました。完全な言いがかりではありますが、この疑問は意外に当を得ていたかもしれません。なぜなら、現在のことに現在形を使うのは、むしろ稀だからです。

3. 現在形=「そういう習慣があります!」

英語の現在形は、「これは習慣的にやっています」という時にのみ使われます。

「私は毎週土曜日に野球をしている」は、間違いなく習慣的にやっていることだと言えます。

I play baseball every Saturday.
(私は毎週土曜日に野球をする(という習慣がある))

ですから、先ほどの問題は現在形を使っているものが正解になります。

他にも

(3) I eat breakfast every morning.
(私は毎朝朝食をとる(という習慣がある))

(4) I write a document every week.
(私は毎週一本書類を書く(という習慣がある))

など、動詞の現在形は「そういう習慣がある」ことを表わすときに使うのです。

また 、「習慣性」以外にも、「一般的な法則」のようなものも現在形でしか表わせません。

(5) Water freezes at 0 degree Celsius.
(水は摂氏 ゼロ度で氷になる。)

(6)The earth goes around the sun.
(地球は太陽の周りを回る。)

水がゼロ度で凍ることも、太陽が地球の周りを回ることも、変わることのない法則です。このようなことも、現在形で表わせます。

4. 過去でも現在でも未来でもない? 現在形のテリトリー

「習慣性」と「一般的な法則」の間には、ある共通点があります。

それは、「過去」とも「現在」とも「未来」とも言えないということです。

え、どういうこと? と思われるかもしれませんが、少し考えてみましょう。

I play baseball every Saturday.
私は毎週土曜日に野球をしている。

これって、「過去」「現在」「未来」どれのことだと思いますか?

「過去」でしょうか? しかし、毎週土曜日に野球をするというなら、今週も来週も行くんだろうなと想像できませんか? そうすると、「過去」と「未来」に跨ってしまいます。

(7) The earth goes around the sun.
(地球は太陽の周りを回る。)

こちらはいかがでしょうか。地球は何億年も前から太陽の周りを回ってきました。過去でも回り、現在も回っており、きっと未来でも回り続けることでしょう。時間に縛られず何時でも適応されるからこそ、「一般的な法則」と言えるのです。これも、「過去」「現在」「未来」のすべてに跨っているということになります。

そうです。現在形のテリトリーは、現在ではありません。「過去」とも「現在」とも「未来」とも言えないところで、時間を跨って発生することなのです。

5. 現在形のまとめ

「過去」とも「現在」とも「未来」とも言えないものに使う。

①習慣

(8) I take pictures when I travel abroad.
(私はいつも海外に行くとき、写真を取る習慣がある)

(9) I eat a banana and drink a cup of milk every morning.
(私は毎朝一本のバナナと一杯の牛乳を口にする習慣がある)

②一般的な法則

(10) Water boils at 100 degrees Celsius.
(一般的に言って、水は摂氏100度で沸騰する)

(11) Learning foreign languages takes a lot of time.
(一般的に言って、外国語を学ぶのにはたくさんの時間がかかる)

このように、過去から未来に跨ってしまうようなことを、現在形で言い表すことが出来ます。

なお、過去から現在に跨ることに関しては、現在完了形が担当していることに注意が必要です。

(12) Learning English has taken a lot of time.
(英語の勉強には長い時間をかけているよ)

完了形については、こちらの記事を参照ください。

6. 要注意!状態や心理を表わす動詞

「現在形=習慣」の法則に当てはまらない例外もいくつか存在しています。

have,knowなど「状態」を表わす動詞やthink, supposeなど「心理」を表わす動詞は、現在形で現在のことを表わします。

(13) I have a pen which my parents gave me.
(私は、両親がくれたペンを持っている)

(14) I know why she disappeared suddenly.
(私は、なぜ彼女が突然姿を消したか知っている)

(15) I think that you are right.
(私は、あなたが正しいと思っている)

(16) I suppose that he will be late.
(私は、彼が遅れてくると思っている)

いずれも、今の自分の状態を表わしています。状態動詞・心理動詞は、現在形で現在のことを表わすのです。迷ったら辞書を引いて、その動詞が状態動詞や心理動詞ではなく「動作動詞=普通の動詞」であることを確認しましょう。

7. プラスアルファで学ぼう:習慣性を表わす日本語

英語が現在形で表現するような「習慣的に行っている動作」を、私たちは日本語でどうやって表しているのでしょうか?

「○○する」という動詞の言い切りの形が、最もよく使われていると言われています。

「私は毎朝、コーヒーを一杯飲む
I drink a cup of coffee every morning.

「仕事が終わるといつもコンビニに行く
I go to the convenience store on the way home.

このように、習慣的にやっていることに対して、私たちは「○○する」を使っています。

さらに、「一般的な法則」に対しても、「○○する」の形を使うことが多いようです。

「水は摂氏ゼロ度で氷になる
Water freezes into ice at zero degree Celsius.

「地球は太陽の周りを回る
The earth goes around the Sun.

英語が現在形で言い表す「過去」「現在」「未来」のいつとも言えない時間で発生することを、日本語では「○○する」で言い表していることがわかります。

しかし、本当に「○○する」だけなのでしょうか? 実は、「○○している」も、同じ使い方があるのです。

8. プラスアルファで学ぼう:「○○している」には要注意!

「私はテレビゲームをしている

この文を英語に訳すと、どうなるでしょうか?

a. I am playing the video game.
b. I play the video game.
c. I have played the video game.

a, b, cのどれが正解だと思いますか?

実は、なんとどれも正解なのです! より正確には

a, I am playing the video game now. →現在進行形
(私は今まさにそのテレビゲームをプレイしている

b. I play the video game every day. →現在形
(私はそのテレビゲームを毎日プレイしている=そういう習慣がある)

c. I have played the video game for a year. →現在完了形
(私はそのテレビゲームを一年間プレイし続けている

このようにいくつか単語を足すとわかりやすくなります。そう、「○○している」は、英語の三種類の言い方に分かれて訳されてしまうのです。

多くの人が、「○○している」を、英語で言えば現在進行形だと考えています。これは、学校の英語の教科書にそう書いてあるからというのが大きな理由でしょう。

しかしながら、実際には、「○○している」は現在進行形以外にも対応しているのです。

具体的に言えば、今回解説させていただいた
「習慣=現在形」

以前の記事で解説した
「過去の出来事を現在に変換する=完了形」に対応しています。

「○○している」が対応する英語は現在進行形だけではありません。現在形・完了形にも対応しているのです。

ここまで強調するのには、もちろん理由があります。

私は毎週土曜日に野球をしている

・a. I am playing baseball every Saturday.
・b. I play baseball every Saturday.

この記事の冒頭で挙げたこの問題ですが、「野球をしている」につられて、aを選んでしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか? aの文は現在進行形を使っていますが、現在進行形はいままさに進行していることにしか使えません。「私は毎週土曜日に野球をしている」と聞いて、今野球の試合の真っ最中だと思う人はいないでしょう。ですから、現在進行形は使えないのです。

このように、私たち日本語話者にとって難しいのは、日本語では習慣的にやっていることを「○○している」で表せるということです。

私は毎朝、朝食を食べている

彼は毎日コンビニに行っている

「○○している」=現在進行形だと思ってしまうと、このような習慣を表わす日本語を、”be doing”の形で訳してしまうことになります。しかし、英語は現在形のみが「習慣」を表わすことができるのです。

(17)
I eat breakfast every morning.
×I am eating breakfast every morning.
私は毎朝朝食を食べる。
私は毎朝朝食を食べている。

(18)
I go to the convenience store every day.
×I am going to the convenience store every day.
私は毎日コンビニに行く。
私は毎日コンビニに行っている。

日本語の習慣→「○○する」or「○○している」

英語の習慣→現在形のみ

この違いを理解することが、現在形と現在進行形の違いを肌で感じるためには必須になります。

「○○している」と「完了形=パーフェクト」の対応については、以前に解説させていただいたので、是非ご覧ください。

9. 日本語と英語の対応まとめ

英語 の現在形は過去・現在・未来の内の1つに決められない時間で起こることを描写します。一番中心的なのは、「習慣的にやっている・発生すること」です。

英語の現在形に対応する日本語は「○○する」と「○○している」です

I play baseball every Saturday.
→私は毎週土曜日に野球をする
→私は毎週土曜日に野球をしている

The earth goes around the Sun.
→地球は太陽の周りを回る
→地球は太陽の周りを回っている

この時、日本語では「○○している」を使えるからと言って、釣られて現在進行形にしないように注意が必要です。

(19)
I eat breakfast every morning.
×I am eating breakfast every morning.
私は毎朝朝食を食べる。
私は毎朝朝食を食べている。

(20)
I go to the convenience store every day.
×I am going to the convenience store every day.
私は毎日コンビニに行く。
私は毎日コンビニに行っている。

英語の現在進行形は、いままさに進行していることにしか使えないからです。

10. ちょっと寄り道:「○○する」の注意点!

現在形の話とは離れてしまいますが、日本語の「○○する」に触れたついでに、もう1つ大事なことを書かせていただきます。

ここまで、「○○する」が英語の現在形に対応していると説明してまいりました。しかしながら、一部例外が存在しています。それは、「自分の気持ちを表明する」時です。

「この仕事は大変だけど、大丈夫?」と聞かれて、「努力します!」「頑張ります!」のように答える場面は多いのではないでしょうか?

「努力します」は「努力する」から、「頑張ります」は「頑張る」から変化したものですから、これらも「○○する」の一種類と考えてもよさそうです。

では、これを英語で言うとしたら、なんと言えばいいでしょうか。 日本語で「○○する」なら、やっぱり現在形が対応しているのでしょうか?

(21)×I do my best!

英語の現在形は、「習慣的に発生すること」というのが本来の意味です。(21) のように現在形で訳してしまうと、「私はいつも頑張っている人です」というようなニュアンスで伝わってしまいます。

「頑張ります」というのは、「これから」ベストを尽くすというニュアンスで使われる言葉です。その場合は、意志を表わす“will”が必要になってきます。

(22)I will do my best!

“will”は「未来形」だと言われることが多いですが、その本質は「将来のことに対する意志」です。まだ達成できていないことに対して自分が持っている思いが、”will”の持つ意味です。まだ達成できていない=未来にやることになるからこそ、未来のことに使われる確率が高くなるのです。

この、”I will do my best!” は、「今はやる気ないですけど、将来的には頑張りまーす!」というような意味ではなく、「今から将来に至るまで、頑張り続ける意志があります!」という、いわば時間を超えた意志を表わしています。

(23) I will think about it.
(少し考えますね。)

(24) I will consider it.
(少し検討します。)

など、「今この瞬間だけではなく、ある程度長い時間すること」に対して、意志を持って前向きにコメントする場合には、”will”が必要になります。日本語では「○○する」だけで言えてしまいます。

11. 結び

長い解説をここまで読んでくださり誠にありがとうございます。

中学一年生の最初に習う文法が、こんなに複雑だとは思わなかったという方もいらっしゃるかもしれません。その通りで、形が簡単だからと言って、使い方まで簡単だとは限らないのです。

「現在形」という名前のせいで混乱させられますが、英語の現在形は殆ど現在のことには使われません。過去でも現在でも未来でもない、不特定の時間こそが現在形のテリトリーなのです。だからこそ、現在形はあいまいで、使いにくいのです。

用語の煩雑さに混乱させられることなく、本質を見抜いて効率よく学習していきましょう!

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