英会話には大きく分けて、対面で先生と会話するものと、オンラインでチャットを交えて練習するものがあります。実際に英会話を勉強してみようと思った時、どちらを選ぶのかは悩まされるポイントではないでしょうか。
私自身、いくつかの英会話を試したことがありますが、どちらが良いのか?と言われるとむずかしいものがあります。
その疑問に答えるために、今回は言語習得研究も踏まえつつ、両者のちがいを見てみましょう。対面vsオンライン英会話、真に有効なのはどっちでしょうか?
対面とオンライン英会話、何が違う?
言語習得研究の世界では、この2つに違う名前がついています。対面が「FTF(face-to-face)」の練習、オンライン英会話が「CMC(computer-mediated-communication)」の練習です。
対面の授業は、実際に先生と向かい合って練習します。一方オンラインでは、コンピューターをはさんで練習します。この違いにはどんな意味があるでしょうか?
対面の強みは、「ごまかし」が聞かないこと
対面の会話練習には、ごまかしがきかないという強みがあります。実際に先生と向かい合って話すので、常に緊張感をもって練習することができます。
対面の練習では、より自主的に発言しようとする傾向があるようです。自分のいい間違いに気づいたとき、もう一度最初から言い直したり、訂正したりするようになります。例えば、英語ネイティブに中国語を教えた最近の実験では、対面の方がより上達が早いという結果が出ています。
目の前の相手だからこそ、積極的に話したい!と思えるタイプの人の場合、対面型の方が習得しやすくなるのかもしれません。
対面型の問題は、時間と場所です。スクールに実際に通う場合、スクールに行く時間を確保しないといけません。忙しい方の場合、この時点でむずかしくなってきます。また、そもそもスクールがない場合もめずらしくありません。都市圏でないと、スクール自体が見つからないこともあります。対面型は手軽さが劣りやすくなります。
オンライン英会話の強みは、「気軽」「ログが残る」こと
オンラインの強みは「ログが残る」という点にあります。オンライン英会話の場合では、チャットをいっしょに使うことが多いです。その場合、レッスンが終わった後でもログを見ることでかんたんに復習ができます。ノートを取る手間がかからないのです。
また、会話の内容やようすも、録画や録音がかんたんにできます。これは対面型の英会話では真似できないことです。この「記録がしやすい→復習がしやすい」という点は、近年オンライン型が注目されている大きな理由の一つです。
また、手軽さもオンラインの大きなメリットです。どんな場所からでも英語を練習できるというのは、オンラインの最大のメリットでしょう。最近では、英会話スクールが少ない地方の高校と、都市部の大学や英会話スクールをつないで練習するプロジェクトも注目されています。インフラの問題を気にしなくていいのがありがたいですね。
一方、オンラインだからこその欠点もあると言われています。緊張感が欠けてしまいがちなのです。オンライン英会話は自室でも受けることができます。その場合、つい隠れて辞書を引いたり、Google翻訳を使ってしまったりすることもあります。「先生から見えない場所」があるレッスンなので、どうしてもズルの誘惑があるのですね。
最近の研究で、「チャットの危険性」も指摘されていました。チャットができるからこそ、手抜きができてしまうというのです。どういうことでしょうか?
例えば、助動詞の使い方について勉強しているとします。「私はやりたくありません」という強い否定をする時、「No, I won’t」のようにwillを使います。対面で会話をしている時には、willの使い方がわからなければ、強い否定はしづらくなります。
ですが、チャットだとそうでもなくなります。「noooooooooooo」のように文字をたくさん重ねたり、「no!!!!!!!」のように記号を使ったりすることで、強調のニュアンスを出せるからです。対面では「NO!!」と大声で言う勇気はなかなかないですが、チャットならできてしまいます。
面白いのは「絵文字」の問題です。「No, I won’t」の代わりに、「×」の絵文字を送ることでお茶を濁すことができます。チャットを使った練習ではこの傾向が強く、練習の邪魔になってしまうことがあるようです。
オンライン英会話の強みは、ログが残ること・手軽で便利なことです。ノートを取らなくても復習がしやすいので、より会話に集中できます。近くに英会話スクールがなくても勉強できるのも強みになります。一方、ズルの誘惑も強くあり、自分に厳しくしないと効果が出にくいこともあるようです。
「緊張」の対面、「手軽」のオンライン英会話
まとめてみると、対面型の最大の強みは「ズルのできない緊張感」になります。それに対して、オンライン英会話の強みは「手軽さ」だと言えるでしょう。究極的にどちらが有効か?という結論はまだ出ていません。
私自身の意見としては、向き不向きがあるのではないかと思います。
対面型の英会話は、かなりの緊張感があります。自分の口から話さなければ、絶対に先生には通じません。絵文字も顔文字も使えません。辞書を引きたければ、「辞書を引かせてください」と英語で言う必要があります。
英語がまったくの初心者の場合、メンタルが強くないとこの緊張感には耐えられないかもしれません。だんだん教室に行くのが怖くなり、止めてしまうというパターンはよくあります。一方、ある程度の自信があるなら対面型でもやっていけると思います。この場合、緊張感がいい方にはたらいて、一気に上達できるでしょう。
オンラインは、ある程度自分に厳しい人に向いています。オンラインはややリラックスした雰囲気でレッスンが進みます。それでも積極的に取りくむ人なら、確実に英語力アップが狙えるでしょう。もしだらけてきてしまったら、一度対面の授業を受けて緊張感を取り戻すのも手です。
自分の性格に合わせて、使い分けるのも一つの手ですね。
まとめ
対面vsオンライン英会話、どちらが本当に効果があるのでしょうか?その結論はまだ出せません。ただし、その人にとっての向き不向きはあるのではないかと筆者は考えています。自分に合った勉強法で、英語力アップを目指しましょう。
参照文献
・TangXiaofei. (2019). The effects of task modality on L2 Chinese learners’ pragmatic development: Computer-mediated written chat vs. face-to-face oral chat. System 80, 48-59.
・Ziegler.N. (2016). Synchronous computer-mediated communication and interaction. Studies in Second Language Acquisition 38(3), 553-586.
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