現役通訳士が教える「英語が話せる」ための「音読法」について

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英語を勉強するからには「英語が話したい!」と考えるのは当然です。しかし、実際にはこの目標を達成するのに苦労されている方が非常に多くいるのが現実です。このような状況を克服するために「オンライン英会話」をはじめられた方も多くいると思います。

実際に私は数十年にわたり、小学生から社会人の方まで、いろいろな分野の英語を指導する機会をいただいてきました。その経験からも、最近よく耳にする「読む」「聞く」「書く」「話す」という英語の4技能の中で、日本人の英語学習者が一番苦労しているのが「英語を話す」ことだというのは間違いありません。

今回は全国通訳案内士としてお仕事させていただいている立場から、「英語が話せる!」を実現するために私が最も大切だと考える英語学習法である「音読」についてお話させていただきます。

音読が効果的な理由

音読しまくることでスピーキング力の向上に一定の成果があると話しましたが、その学習効果は他のスキルにも及びます。まず、音読が英語習得に効果的な理由から見ていきましょう。

スピーキング力が向上する

音読をすることでスピーキング力が向上する理由は、単純にアウトプットの機会が増えるからです。そもそも日本で暮らす日本人は外国人と一緒に仕事をするような特別な環境でない限り、日常的に英語を話す機会はあまりありません。

しかし、どんな言語でもスピーキング力を向上させるためには、実際に学習言語を声に出して練習する必要があります。つまり、文法や単語の意味などを理解していても、実際にそのスキルを使ってアウトプットする機会がなければ、スピーキングはなかなか上達しないということ。このようなアウトプットの機会を増やす役目を果たすのが「音読」です。

リスニング力が向上する

音読は声に出すことで耳から英語の音を認識するので、リスニングにも効果的です。私たちは耳を介して英語の音を脳で認識します。脳は音と意味をとつなげてデータとして脳内に蓄積し、聞こえた音とデータを脳内で瞬時に照合して意味を理解していきます。

ですから意味と音をつなげて音読すれば脳内のデータ照合がスピーディーになり、リスニング力の向上も期待できるわけです。

リーディングのスピードが上がる

ひたすら音読しまくると必然的にリーディングのスピードが上がり、速さに応じて英語を理解する処理スピードも上がります。なぜなら、音読するときには休まないで次々と声に出して読み進めるので、無意識のうちに文構造などを理解できるようになるからです。

TOEICなどの英語の試験は時間との戦いという面もあるので、速読が可能になるのは大きなメリットになるでしょう。また、リーディングのスピードと処理スピードが上がれば、リスニングやスピーキングの上達も期待できます。

英文を文頭から理解できるようになる

ひたすら音読することで、徐々に英文を文頭から理解できるようになっていきます。つまり、日本語に置き換えずに、英語の語順で理解できるようになるということ。英語を文頭から理解できるようになるのは「英語 → 日本語」を自動化する第一歩であり、スピーキングやリスニングに限らず、英語スキル自体の向上につながります。

音読の正しいやり方について

みなさんにも「音読」の経験はあるかと思います。特に中学・高校の英語の授業中にCD音声や先生のモデルリーディングに続いて英語を音読したことがあるのではないでしょうか。しかし、このような音読をすることによって英語力の向上を体感されている人は非常に少ないと思います。ここでは、音読を行う際の基本的な注意点を紹介いたします。

①数回でなく、少なくとも30回は音読する。
英文の難易度や分量にもよりますが、少なくとも30回は音読しなければ効果が実感できません。また、できる限り、連続して同じ英文を読むようにします。インプットの定着度がより強くなることに気付けるでしょう。

②音読する英文の内容は事前にしっかり理解しておく。
英文の内容はもちろんのこと、文構造などもしっかり理解しておきます。何が書かれているのかがわからない英文を読んでも英語力の向上は望めません。

③フニャフニャした声でなく、はっきりとした声で音読する。
フニャフニャと気持ちの入っていない声でなく、少し大きめの声でしっかりと英文を読む方が高い定着度が見込まれます。音読をする際に、発音について気にされる方もいますが、音読の目的はインプット量を高めることが中心ですので、発音に対する過度な心配は持たない方がいいと思います。

音読で用いる題材について

英文の内容がわからないものを音読しても効果が薄れてしまいます。ですので、内容と文構造がわかるものであれば、どのような英文でも大丈夫です。また、何も考えずに英語の音読をしても時間と努力のムダになってしまうので、効果的な音読のコツを紹介します。

意味が理解できる音声素材を使う

ひたすら音読すると言っても、内容を理解できない英語の音声素材をいくらまねして音読しても、スピーキングはなかなか上達しません。すでに述べたように、音と意味をつなげて脳に蓄積するので、単語や文の意味を理解していることが重要です。もちろん、声に出さずに黙読するだけでは効果が上がりません。

学習目標とレベルに合った音声素材を選ぶ

一口に「音読」と言っても、その音声素材は多岐にわたります。英語なら何でもいいだろうと内容を考えずに音読するのはおすすめできません。なぜなら、英語学習をしている人には目標があり、その目標は人によって異なるからです。

大切なことは、自分の学習目標にあった音声素材を選ぶこと。日常英会話を身につけたい人なら、海外ドラマや映画などのワンシーンを声に出してまねしていくのもひとつの方法です。もちろん、自分の英語レベルに合っていることも重要。最初は一文からでもいいでしょう。

英語の音の変化を意識する

英語には独特な音の変化やリズムがあるので、それを意識しながら音読するとスピーキングにもリスニングにも効果的です。この英語独特の音の変化は聞いて覚えるしか方法がないので、CD教材、動画、ポッドキャストなどを活用して英語の音の変化やリズムに慣れていきましょう。

英語の発音をしっかり意識する

カタカナ英語から抜け出すためにも、英語の音の変化を意識するとともに、発音にも注意を払って音読しましょう。その際には、音の強弱(高低)だけでなく、どの部分でゆっくり発話されているのかという話すスピードにも意識を向けると、よりネイティブらしい発話になります。

場面を設定して練習する

音読から実際の会話のようにしていくために、誰との会話なのか、どんなシチュエーションなのかという場面を設定して練習するといいでしょう。

つまり音読に慣れてきたら、自分が頭の中で考えて話しているように自然な発話にしていくということ。俳優になりきって、発話の内容に応じて感情を込めて練習しましょう。

具体的な音読方法

音読練習は慣れるまで大変かもしれませんが、続ければ必ず成果が得られるので頑張りましょう。ここでは、いくつかの練習法を見ていきます。

基本的な音読練習のステップ

まず、基本的な音読のやり方を見ていきましょう。
1.単語レベルから発音練習する
2・文法や意味を理解しておく
3.何度も音読する
4.日々の音読を録音する

単語レベルから発音練習する

自分の英語レベルに合った素材を選び、単語レベルから発音練習していきます。単語が正しく発音できれば、基礎がしっかりと構築されるので後々学習が楽になるからです。知っている単語でも誤って発音を覚えていることもあるので、しっかり練習しましょう。
単語レベルならGoogle翻訳で簡単に聞けるので、何度も聞いてまねをします。その際、ストレスアクセント(強く発音する部分)に注意するのがポイント。もちろん、単語レベルに問題がない人は次のステップに進んでください。

文法や意味を理解しておく

いくらスラスラ英語が読めるようになっても、意味がわからなければ脳内にデータとして蓄積されません。ですから音読効果を上げるためには、何度も述べているように文法や意味をしっかり理解しておくことが重要です。脳で内容を深く理解できるので、日本語訳も音読するといいかもしれません。
ちなみに聞き流しでリスニングがなかなか上達しないのは、意味を意識していないため脳内にデータが蓄積されないからです。

何度も音読する

一日に何度も同じ英文を音読しましょう。どのくらい音読するのかという疑問があるかもしれませんが、あえて言うなら「覚えてしまうくらい」まで続けます。
もちろん一日でうまく読めるようにならなければ、何日もかけて同じものを音読します。音読しまくるのがつまらないと感じたときには、一人二役あるいは三役になって会話形式で練習するのもおもしろいかもしれません。

日々の音読を録音する

何回も練習した後、その日の成果を録音しておきましょう。録音しておけば日々の変化が記録できるので、成長を感じられるはず。英語学習は長期戦なので、成長を感じることも大切です。また、ネイティブの知り合いや英語が堪能な友人に録音データを聞いてもらうこともできるので、アドバイスがもらえるかもしれません。

効果的な音読【スラッシュリーディング】

基本的な音読でも十分に効果はありますが、音読に慣れていない人はスラッシュリーディングがおすすめです。スラッシュリーディングとは英文をスラッシュ「/」で区切って読んで聞く練習法で、チャンク(= かたまり)リーディングとも言います。
ステップはほぼ基本的な音読と同じですが、音読前にスラッシュで「意味のまとまり」に区切ります。

スラッシュで区切る位置

スラッシュで区切る位置に決まりはありません。けれども慣れないうちはどこで区切ればいいのか戸惑うかもしれないので、目安と例を簡単に示しておきます。
<区切る目安>
・基本文型の終わり
・前置詞・動名詞・過去分詞・to 不定詞の前
・接続詞・関係代名詞・疑問詞の前
・カンマの後
・長い主語の後

I love antique furniture, / but I would need advice from a specialist / before I buy any.
(私はアンティーク家具が大好きだ / でも専門家のアドバイスが必要だ / 購入する前に)

慣れないうちは2つ目のまとまりをfromの前で区切っても構いませんが、最終的には上記のように分けて音読できるようにします。

スラッシュリーディングの注意点

スラッシュリーディングの目的は、文頭から英語を「意味のまとまり」ごとに理解していくこと。つまり、「誰が何をする → どこで → いつ → 誰と → 何のために」のように英語の語順で内容を理解することに慣れていくということです。そのため、以下の点には注意する必要があります。

<注意点>
・細かく区切りすぎない
・区切る位置にこだわりすぎない・徐々にスラッシュを減らしていく

細かく区切りすぎれば「まとまり」に意味がなくなり、不自然な英語になります。また目的は音読なので、区切る位置にこだわりすぎるのは本末転倒。そして最も重要なのが、スラッシュを減らしていくこと。スラッシュを減らして「意味のまとまり」が大きくなれば、必然的に意味理解のスピードが上がるからです。

効果的な音読【リピーティング】

リピーティングは音声を聞いた後に聞こえた音声と同じように発話する練習のこと。イメージとしては、英語講師の発話をまねするような感じで、基本的なスピーキングの練習法です。英語特有の音の変化やリズムが身につくでしょう。以下にステップを簡単に示しておきます。

1.スクリプトを見ないで全体を通して音声を聞く
2.スクリプトを見ないで一文ずつ止めながらリピーティングする
3.スクリプトで言えなかった箇所をチェックして練習する
4.もう一度スクリプトを見ないで一文ずつ止めながらリピーティングする

二度目のリピーティングは一度目よりスムーズにできるはずですが、また言えない箇所があった場合はステップ4と5を繰り返しましょう。

効果的な音読【オーバーラッピング】

オーバーラッピングは英語の音声と合わせて発話していく練習のこと。スクリプトを見ながら行いますが、聞こえてくる音声と同時に始まり同時に終わらなければなりません。オーバーラッピングの一番の目的は、「見た英文の音を意識しないで再現できるようにする」ことです。もちろん、英語特有の音の変化やリズムが身につく上、英語のスピードにも対処できるようになるでしょう。オーバーラッピングは以下の通りとてもシンプルです。
スクリプトを見ながら音声と同時に英語を発話する
可能であれば選んだ音声素材のどこが聞き取れないのかを事前にチェックしておくと自分の弱みがわかるので効果的です。聞き取れない箇所を見つけるには、音声を聞きながら一語一句書き取る「ディクテーション」をすることです。

効果的な音読【シャドーイング】

シャドーイングは英語の音声を聞きながら2~3テンポ遅れて影のように追いかけながら発話してく練習のこと。シャドーイングでは聞こえた音声の意味を認識する「音声知覚」の能力が鍛えられるため、リスニングが上達するだけでなくスピーキングも強化されます。こちらも簡単にステップを示しておきましょう。

1.スクリプトを見ないで全体を通して音声を聞く
2.スクリプトで内容を理解する
3.スクリプトを見ながらシャドーイングする
4.スクリプトを見ないでシャドーイングする(録音する)
5.録音した音声をチェックして正しく言えなかった箇所を練習する
6.もう一度スクリプトを見ないでシャドーイングする

シャドーイングはスクリプトを見ながらやる方法と見ないでやる方法がありますが、上記のようにミックスすると取り組みやすいでしょう。また正しく言えるようになるまで、ステップ4と5を繰り返します。始める前に「全体を通して聞く」のは、聞きながら内容を推測するためです。

英語音読の方法がわかったら

音読は英語力を底上げできる最強の学習法ということがご理解いただけたのではないでしょうか。「英語脳」を手に入れてスピーキング力アップを目指しましょう。
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