「単語は聞き取れるのに、長い文になるとまったく聞き取れなくなってしまう…」「ネイティブみたいにきれいな発音ができたらな」こんな悩みを解決するために効果的なのが、英語の音変化である「リエゾン」について理解することです。
そもそも、英語と日本語は音の構造が異なるので、違いを理解して練習しないことにはいつまでたっても発音が苦手なままということも…。
こちらの記事では、リエゾンの種類やそれぞれの特徴、リエゾンの学習におすすめの教材などについて詳しく解説します。苦手な発音を克服して、リスニング力・スピーキング力をアップさせましょう。
英語のリエゾンとは?
「リエゾン(Liaison)」とはもともと、フランス語に見られる「音のつながり」を指す言葉です。通常は発音しない語尾の子音と、それに続く母音をつなげて発音することを意味します。
実は、英語では正式には発音が変化することをリエゾンとは呼ばず、「リンキング」「リダクション」「フラッピング」などと呼ばれます。しかし、このような音の変化がフランス語の音変化と似ているため、英語でもリエゾンと呼ばれるようになりました。
英語のリエゾンの例としてgive up(諦める)が挙げられます。単語を1つひとつ発音すると「ギブ・アップ」ですが、ネイティブスピーカーが普通のスピードで発音すると「ギバップ」と聞こえます。語尾の子音とそれに続く母音がつながり、リエゾンが起こっているのです。
リエゾンには5つの種類がある
リエゾンには以下の5種類があり、それぞれ特徴が異なります。
連結(リンキング) | 単語を1つひとつ独立して発音せず、単語と単語の音がつながること。単語の切れ目がわかりにくくなる |
脱落(リダクション) | 重なった子音が1つ省略され、発音されなくなること。ノーマルな会話スピードでよく起こる |
同化(アシミレーション) | 2つの単語の音がくっつくことで別の音に変化すること。発音しやすくなるが、スペルと違う音になる |
はじき音(フラッピング) | 母音に挟まれたtとdの音がやわらかく変化し、日本語の「ラ行」音に聞こえること |
弱形 | 意味的に重要でない単語は、弱く・速く・あいまいに発音されること |
英語のリエゾンを理解するとリスニング力・スピーキング力がアップする!
実は、英語のリエゾンを理解することでリスニング力だけでなく、スピーキング力もアップするといわれています。ここでは、リエゾンがリスニングとスピーキングに与える影響について解説します。
日本人が英語を聞き取れない理由
日本人には英語の聞き取りが苦手な人が多く見られますが、理由として以下が挙げられます。
・発音の構造(リエゾンなど)を理解できていない
・単語や文法の知識が足りない
・英語の語順に慣れていない
・スピードについていけない
なかでも、発音の構造を理解できていないことは大きく、リエゾンをしっかり理解していないといえます。そもそも、日本語ではリエゾンが起こらないので、日本人にはなじみがありません。そのため、脳もリエゾンをうまく理解できず、苦手意識を持つ人が多いのです。
とはいえ、リエゾンにはある特定のルールがあるため、しっかりと知識を身につけて練習することで習得することができますよ。
リエゾンがリスニング力に与える影響
リエゾンを理解できると脳が英語の音変化を正しく処理できるようになるため、リスニング力アップが期待できます。「単語単体では音が聞き取れるけど、まとまった文章になると聞き取れない…」といったことがなくなり、英語の音をそのまま理解できるようになるでしょう。
しかし、ただリエゾンのルールを知識として覚えるだけではあまり効果がありません。リエゾンをしっかりと習得してリスニング力を鍛えるためには、何度も繰り返し音を聞き込む練習が必要です。
また、英語の正しい音を自分でも発音できるようになることが大切なポイント。音を真似て口に出すことにより、さらに脳が英語の発音を認識しやすくなります。
リエゾンがスピーキング力に与える影響
スピーキングでは、リエゾンを使いこなせないとぶつ切りの英単語を口にすることになり、相手にきちんと伝わる英語を話すことができません。ネイティブには聞き取りにくい英語となってしまいます。たとえ文法や語彙が正確だったとしても、相手にきちんと意味が伝わらないのでは意味がありませんね。
リエゾンを理解すると発音がなめらかになり、聞き取りやすくなります。会話の質を高めてキャッチボールをつなげるためにもリエゾンはとても重要です。「伝わる英語」を目指して、リエゾンをしっかりとマスターしましょう。
連結(リンキング)を理解しよう
リエゾンの「連結(リンキング)」には、単語をつなげて発音することでラクに速く話せるという効果もあります。連結には以下の3つのパターンがあります。
1.子音 + 母音
2.子音 + 子音
3.母音 + 母音
ここでは、各パターンについて例を挙げて解説します。
子音 + 母音
子音 + 母音のパターンは、さらに以下の3つにわかれています。
・破裂音+母音
・摩擦音+母音
・その他の子音+母音
それぞれの特徴や発音方法などについて見ていきましょう。
破裂音+母音
破裂音とは、一旦息を止めた後、空気を一気に開放することで発生する子音を指します。英語の破裂音には/b/, /d/, /g/, /k/, /p/, /t/の6種類があります。
(例)
・b + 母音:job interview
ジョブ インタビュー →ジョビンタビュー・d + 母音:hold on
ホールド オン →ホールドン・p + 母音:keep out
キープ アウト →キーパゥト・k + 母音:talk about
トーク アバウト → トーカバゥト
摩擦音+母音
摩擦音とは、歯や唇、舌などのわずかなスキマで息をはいて摩擦させる音を指します。摩擦音には/s/, /z/, /ʃ/, /ʒ/, /f/, /v/, /ð/, /θ/の8種類があります。
(例)
・s + 母音:dress is
ドレス イズ → ドレスィズ・z + 母音:freeze up
フリーズ アップ → フリーザップ・sh + 母音:brush up
ブラッシュ アップ → ブラッシャップ・v + 母音:live in
リヴ イン → リヴィン
その他の子音+母音
上記以外の子音+母音の例を見てみましょう。
(例)
・l + 母音:call us
コール アス → コーラス・m + 母音:time in
タイム イン → タイミン・n + 母音:Can I
キャン アイ → キャナイ・r + 母音:cheer up
チア アップ → チアラップ・t + 母音: turn off
ターン オフ → ターノフ
子音 + 子音
単語の最後の音が子音で、続く語の頭も子音の場合、1語目の末尾の音が省略されるケースがあります。子音がつながって発音され、まるで1つの単語のように聞こえるため、リエゾンを理解しておかないとうまく聞き取れない可能性があります。
子音 + 子音にはさまざまなパターンがありますが、ここでは子音+u、子音+yの発音例についてそれぞれ紹介します。
子音+u
(例)
・than usual
ザン ユージュアル →ザンニュージュアル・in union
イン ユニオン → インニュニオン・(the increase) in unemployment
イン アンエンプロイメント → イナンエンプロイメント
子音+y
(例)
・want you
ウォント ユー → ウォンチュー・thank you
サンク ユー → サンキュー・keep you
キープ ユー → キーピュー・get you
ゲット ユー → ゲッチュー
母音 + 母音
前の単語の語末が母音で、続く語の頭も母音の場合、音声変化のパターンが2つ見られます。1つ目は前の単語の子音に引きずられるパターン。2つ目は、単語がつながる部分にwやyなどの音が入るパターンです。
(パターン1例)
・some of
サム オブ → サマブ・close it
クローズ イット → クローズィット(パターン2例)
・Who is
フー イズ → フーウィズ *wの音が入る・go ahead
ゴー アヘッド → ゴーワヘッド *wの音が入る・rely on
リライ オン → リライヨン *yの音が入る・May I
メイ アイ → メイヤイ *yの音が入る
脱落(リダクション)を理解しよう
「脱落(リダクション)」とは、重なった子音が省略されて発音されなくなること、あるいはとても弱く発音されることを意味します。基本的に英単語の末尾はしっかりと発音されないことが多く、good job(グッジョブ)のように、goodのdがほとんど発音されません。
脱落には以下の2つのパターンがあるので、ここではそれぞれの特徴を例を挙げて解説します。
・子音 + 子音で音が落ちる
・文章の終わりの破裂音が落ちる
ただし、脱落は必ずしも起こるものではなく、単語を強調したいときや重要な意味を含む場合は脱落させずに発音するということを覚えておきましょう。
子音 + 子音で音が落ちる
子音 + 子音で脱落が発生するケースは、さらに4つのパターンに分類されます。
破裂音 + 破裂音
破裂音同士が重なる場合の音変化は以下の通りです。
(例)
・wet towel
ウェット タオル →ウェッタオル *前の語のtが発音されない・big boy
ビッグ ボーイ → ビッボーイ *gが発音されない・good time
グッド タイム → グッタイム *dが発音されない・club party
クラブ パーティー → クラッパーティー *bが発音されない
破裂音 + 摩擦音
破裂音と摩擦音が続く場合も音が省略されるケースが多く見られます。
(例)
・cheap shoes
チープ シューズ → チーシューズ *pが発音されない・top floor
トップ フロア → トッフロア *pが発音されない・great view
グレイト ビュー → グレイビュー *tが発音されない・job center
ジョブ センター → ジョッセンター *bが発音されない・long sleeve
ロング スリーブ → ロンスリーブ *gが発音されない
破裂音 + 子音(破裂音や摩擦音以外)
破裂音 + 子音(破裂音や摩擦音以外)で音が落ちる例を見てみましょう。
(例)
・hot milk
ホット ミルク → ホッミルク *tが発音されない・top level
トップ レベル → トッレベル *pが発音されない・good night
グッド ナイト → グッナイ *dとtが発音されない・just now
ジャスト ナウ → ジャスナウ *tが発音されない
子音 +「h」
子音 +「h」のケースでは、2語目頭のhが落ちることがあります。
(例)
・could have
クッド ハヴ → クダヴ *hが発音されない(以下同じ)・give him
ギヴ ヒム → ギヴィム・call him
コール ヒム → コーリム・Let her come
レット ハー カム → レッター カム
文章の終わりの破裂音が落ちる
文末に破裂音がある場合、その音が発音されないことがあります。
(例)
・I did it.
アイ ディド イット → アイディディッ *tが発音されない・I’ll do that.
アイル ドゥ ザット → アイル ドゥザッ *tが発音されない・This soup is hot.
ディス スープ イズ ホット → ディス スープ イズ ホッ *文末のtが発音されない・Hurry up!
ハリー アップ → ハリーヤッ *pが発音されない
同化(アシミレーション)を理解しよう
「同化(アシミレーション)」とは、2つの単語の音がつながり、まったく別の音に変化することを意味します。スペル通りでは流れるように発音できない場合などに同化が起こります。連結とよく似ていますが、連結の場合はスペル通りの音を発音するのが特徴です。同化は「s+y」「t+y」「d+y」の3パターンを押さえておきましょう。
(例)
・miss you
ミス ユー → ミシュー *「ス」が「シュ」に変化する・got you
ゴット ユー → ゴッチュー *「ト」が「チュ」に変化する・about you
アバウト ユー → アバウチュー *「ト」が「チュ」に変化する・Did you
ディド ユー → ディジュー *「ド」が「ジュ」に変化する・need you
ニード ユー → ニージュー *「ド」が「ジュ」に変化する
はじき音(フラッピング)を理解しよう
「はじき音(フラッピング)」とは、破裂音のtとdの音をやわらかく発音し、日本語の「ラ」の音に変化させることを指します。音を破裂させないほうが発音しやすいために起こります。これはアメリカ英語のみに見られる現象で、イギリス英語では通常通りに発音するのが特徴です。
(例)
・water
ウォーター → ウォーラー・party
パーティー → パーリー・letter
レター → レラー・little
リトル → リル・shut up
シャット アップ → シャラップ・Not at all
ノット アット オール → ノラロー
弱形を理解しよう
「弱形」とは、意味的に重要でない単語は弱く、速く、あいまいに発音することを指します。英文のリズムは強形と弱形で構成されていて、重要な箇所は強めに発音する傾向にあります。まずは、以下の例を見てみましょう。
(例)
・It’s time to go to bed.(もう寝る時間です)。
弱 強 弱 強 弱 強・Will you be at the library at ten o’clock tomorrow?(明日10時に図書館にいてもらえますか?)
弱 強 弱 弱 弱 強 弱 強 強 強・I think you should quit smoking.(タバコはやめたほうがいいよ)
強 強 強 弱 強 強
上記の例から、弱く発音するのは前置詞や代名詞、助動詞、冠詞などの機能語と呼ばれる単語ということがわかります。また、辞書によっては発音の欄に《強》と書かれていることがあり、これは強く発音する「強形」を表しています。一方、何も表記がないものや《弱》と記載してあるものは弱形を表しています。
英語の発音が良くなるための練習方法
英語の発音が良くなるための練習方法として挙げられるのが「シャドーイング」です。シャドーイングとは、音声の後を追うように真似して発音する練習のこと。繰り返し訓練することで、音・文字・口の動かし方・スピードの4つをうまく連携させられるようになるでしょう。
特に、苦手なリエゾンの部分を意識しながら真似ることで、ネイティブのような発音に近づけると期待できます。慣れてきたら、抑揚や強弱などもしっかりと真似てみましょう。発音はただ耳で聞くだけでなく、実際に口に出さないといつまでもうまくなりません。
最初は難しく感じるかもしれないので、まずは英文の構造を理解し、ただ英文を読んでみることからスタートするのもおすすめです。
リエゾンの勉強におすすめの教材
リエゾンを勉強しようと思い立ったとき、まず発音の教材を選ぶ人が多いのではないでしょうか。しかし、発音と一口にいっても教材の種類は実にさまざまで、どれを選べばよいか迷ってしまいますね。自分に合っていないものを使って学習しても、なかなか効果が出ないので注意が必要です。
ここでは、リエゾンの勉強におすすめの本やアプリを紹介します。
おすすめの本3選
リエゾンをマスターするためには、まずしっかりと音声変化の法則を理解し、そのうえで練習することが必要です。ここでは、効率的に音声変化の法則や学習方法を学べるおすすめの本3冊を紹介します。
ネイティブのような発音が身につく77の法則を紹介!
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おすすめレベル | 初級~中級 |
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著者 | ハイディ 矢野 |
出版社 | 講談社 |
価格(税込み) | 2,200円 |
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本書で取り上げられているのは、たった5つのルールだけ。これらのルールをドリル形式で学んでいきます。10日間という短い期間で発音をマスターできるうえ、さらに効率良く学習できる方法も紹介してあります。短期集中型英語パーソナルジム「ENGLISH COMPANY」の科学的根拠に基づいたトレーニングなので、リスニング力アップに期待できます。
おすすめレベル | 初級 |
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著者 | StudyHacker ENGLISH COMPANY |
出版社 | マイナビ出版 |
価格(税込み) | 1,650円 |
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まとめ
英語の音変化であるリエゾンを理解することで、リスニング力・スピーキング力アップに期待できます。ただし、ネイティブのような発音に近づくためには、何度も繰り返し口に出して練習することが必要です。
スピーキングに慣れるためには、オンライン英会話を利用するのがおすすめ。レアジョブ英会話では経験豊富な講師と1対1で会話の練習ができるので、間違いを気にせず練習できるのが魅力です。講師の発音を真似して、リエゾンを習得しましょう。
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