「大学入試に向けて英語を勉強しても話せるようにはならない」。「センター試験200点満点でも会話の方は全然ダメ」。残念なことですが、せっかく大学入試に向けて英語を勉強しても、「使える」英語力は身につかないと言われています。果たして、大学入試における英語の問題はそれほどひどいものなのでしょうか?全く役に立たないものなのでしょうか?私は完璧だとは思いませんが、それほどひどいものだとも思いません。
日本の高校生が勉強する本当の理由は?
まず、多くの高校生は何のために勉強しているのでしょうか?
例えば、高校生が「生物」を勉強するのはなぜでしょうか?「ミトコンドリアについて詳しく知りたいから!」という高校生はほとんどいないはずです。「日本史」のセンター試験で得点率8割の受験生であれば、「伴大納言絵詞(ばんだいなごんえことば)の作者は?」→「常盤光長(ときわみつなが)」と即答してくれます。実物の絵巻物の画像も頭の中に入っています。この受験生は決して「絵巻物オタク」でも「常盤光長フアン」でもありません。入試に出題されるから覚えているのです。
はっきり書いてしまえば、小学生でも中学生でも高校生でも勉強するのは「いい大学」に入るためです。もっと書いてしまえば「いい大学」とは「偏差値の高い大学」です。「自分の目標は偏差値の高い〇〇高校に入って、その後、大学には進学せず高卒として社会に出ます」という小学生・中学生はほとんどいないでしょう。また、いろいろな週刊誌が「高校ランキング」「中高一貫校ランキング」というものを発表します。どのような要素で決まっているのでしょうか?修学旅行の行き先でも文化祭の充実度や部活動の活躍度でもなく、ズバリ「有名大学合格者数」です。日本では大学入試という最終目標のために勉強している学生が大半なのです。「英語」についても例外ではないはずです。
話をまとめると、多くの高校生が「大学入試のために英語を勉強している」のだが、「英語が話せるようにはならない」ということは紛れもない事実です。そして、その学習(=受験英語)が社会で必要とされる英語(=実用英語)につながっていないので、英語の「大学入試問題」がダメ出しされているのです。
問題その①「4技能のバランスの悪さ」
大学の英語の入試問題に対する風当たりは社会人の間でかなり厳しいものがあります。「読んでばっかり・・・」「単語の暗記だけ・・・」という高校時代を思い出される方も多いのではないでしょうか。日本でリーディングなしの出題をする大学はおそらくないでしょう。スピーキングなし・リスニングなしはたくさんあります。
よって、高校の授業でもリーディングに時間が割かれるのは当然です。この点がたびたび酷評されますが、ここには問題がないはずです。スピーキングができないのはスピーキングの訓練が不足しているのであって、リーディングの学習=「悪」と考えるのは大間違いです。それどころか、中学・高校で行われているリーディングの授業やその目標となる大学入試問題は非常に質が高いと思います。
実際に社会に出てからスピーキングの学習を重ね、スピーキング能力を高めた人も、その下地になっているのは中学・高校で高めたリーディング力なのです。そして、このリーディング中心の授業は大学入試の出題がリーディング中心となっていることに起因します。
問題なのは、大学入試における、スピーキングなどを含めた4技能のバランスの悪い出題であって、リーディングそのものに問題はないのです。
問題その②「マニアックな文法問題」
先述したとおり、大学入試のリーディングには問題はありません。大学入試の長文問題は非常に良質です。しかし、その長文問題とは別に、特に独立した形で出題される、いわゆる「文法問題」に非常にマニアックなものが含まれることは大問題です。
I am no more able to operate this machine than he is.
(ぼくは、彼同様、この機械を操作できない)
この例文はある問題書からの引用です。そして、その問題集はある有名私立大学からの出題を元に作られていました。文法的には正しいと思います。しかし、このような言い方をする必要はあるのでしょうか?
I can’t operate this machine, and he can’t, either. で十分です。
つまり、学習するなら「マニアック」なものよりも「実用的」なものを学ぶべきなのです。そして、大学入試で「マニアック」なものよりも「実用的」なものが出題されれば、高校生も「マニアック」なものよりも「実用的」なものを学習するようになるはずです。
日本の大学入試問題は素晴らしい
ダメ出しされる「大学の英語の入試問題」ですが、実はその中身はとても良くできているのです。修正すべきは「4技能のバランス」と「マニアックな文法問題」のみです。そして、実際にこれらは急速に改善されつつあります。これからの3年後、5年後が楽しみです。
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