ヤバい!英語のスピーチを頼まれた!どうしよう…
そんなことはそうそうないかもしれませんが、仕事の場で、または国際結婚した友人の結婚式の場で、英語でスピーチをする日がいつかやって来るかもしれません。そんな時のために今回は、スティーブ・ジョブズやオバマ現大統領、ビルゲイツなどの偉人の名スピーチからその構成術やエッセンスを紹介します。
スピーチだけでなく、ビジネスシーンでのプレゼンにも使えるテクニックが満載なので、ぜひ参考にしてみてください。
1. 「オープニング」で聴衆を引きつける
日本語でも英語でも、スピーチは「オープニング」「ボディ」「クロージング」の3要素に分けることができますが、それぞれにどのような特徴があり、何を心がけていけばよいのでしょうか。順に見ていきましょう。
まずは「オープニング」から。スピーチのオープニング部分ではしっかりと聴衆の関心を引きつけ、聞く準備をしてもらう必要があります。登壇して自己紹介をしていきなり本題に入るという流れでは、聴衆を上手く引きつけることはできません。初めの数秒間〜数分間で、聞き手の心をグッと掴むことが最初の難関だと言えるでしょう。そのためのテクニックは主に二つ。
力強いメッセージで聴衆を奮い立たせる
一つは、心に響くような力強いメッセージで聞き手を興奮させること。次の英文と日本語訳は、オバマ大統領がシカゴで勝利宣言を行ったときのスピーチから冒頭部分を抜粋したものです。
《原文》
Hello, Chicago!
If there is anyone out there who still doubts that America is a place where all things are possible, who still wonders if the dream of our Founders is alive in our time, who still questions the power of our democracy, tonight is your answer.《日本語訳》
ハローシカゴ!
もしもまだ、アメリカはあらゆることが実現可能な場所であることを疑い、建国者たちの夢が今も生き続けていることを疑い、我が国の民主主義の力を疑っている人がいるのならば、今晩がその答えだ。
どうでしょうか。一度、実際に音読してみれば分かることなのですが、短い文節を繰り返しながら思わず胸がアツくなるようなメッセージとなっています。実際のスピーチの場でもこの後、大きな声援に包まれ聴衆が沸き立っていました。
政治のみならず、ビジネスにまつわるスピーチの場でも、強い決意やリーダーシップを示すことでその場を一つにまとめることが重要なので、上のようなシンプルかつ力強い言葉が効果的なのです。
アイスブレイクで場をなごませる
二つ目はさきほどとは反対にアイスブレイクを狙うテクニックです。アイスブレイクとは、緊張を和らげて場の雰囲気をなごませ聴衆をリラックスさせる手法です。次の英文を見てください。これはスティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で行った「伝説のスピーチ」と呼ばれるもののオープニング部分です。
《原文》
Thank you.
I am honored to be with you today at your commencement from one of the finest universities in the world. Truth be told, I never graduated from college. And this is the closest I’ve ever gotten to a college graduation.《日本語訳》
ありがとう。
今日、世界最高峰の大学の一つである卒業式に同席できて光栄です。実を言うと、私は大学を中退しているので、今日が人生でもっとも大学卒業に近づいた日なのです。
実際の動画を見れば、プレゼンの達人と言われたジョブズ氏も初めは緊張しているのが分かります。しかしこのような自虐を含めたジョークを言うことで、聞いている学生たちには笑いが起こり、ジョブズの顔にも少し笑みが浮かびます。これは上手いアイスブレイクの例と言えるでしょう。
もう一つ、アイスブレイクを利用して聴衆の関心を引き出すことに成功している例として、ハーバード大学でのビルゲイツのスピーチがあります。
司会者に「33年の休学後、ここにビルゲイツ博士を迎えられることをうれしく思います」と紹介された後、「ありがとうございます。私は30年間、このセリフを言う時を待っていました。『お父さん、いつか学位をとるために復学すると、私はいつも言っていたよね』」と続き、その後もジョークを多用して、聴衆は大いに盛り上げました。
このように、うまくジョークを利用することで、聴衆の心を掴むのもテクニックの一つです。
2. 「ボディ」では実体験&論理的なストーリーが大事
続いてはスピーチの本体部分である「ボディ」です。ボディではしっかりと自分の伝えたい内容が伝わるように意識します。そのためのコツとして以下の3つがあります。
構成にメリハリをつける
これは当たり前のことですが、自分のしたい話をただダラダラと話すのでは聴衆の注目は削がれていってしまいます。それを防ぐためには、一つ一つのストーリーの始まりと終わりを明示しておくことが大切です。
先述したスタンフォード大のスピーチでジョブズ氏は、冒頭部分で「3つのお話をします」とした後、「Connecting the dots(点を繋げること)」、「Love and loss(愛と喪失)」、「Death(死)」の3つをそれぞれ独立したストーリーとして、「My first story is~」「My second story is~」という分かりやすい表現を用いながら、話を進めていきました。そうしてメリハリをつけることで聴衆が迷子になることもなくなりますし、一つ一つのストーリーをしっかり落とし込むことができます。
ストーリーは時系列で
通常スピーチでは、プレゼンや会議のときのように手元に資料がありません。資料があれば、分からなかったところ、聞き逃したところを後から振り返ることができますが、スピーチではそれができないので、時系列に意識して話をしていくことが重要。
ジョブズ氏やビルゲイツ氏のスピーチにおいても、生い立ちや学生時代に始まり、会社創業の話へと移っていきます。時系列にすることで話がシンプルになり、聴衆は頭の中でストーリーを描きやすくなるのです。
実体験でストーリーに信頼性を持たせる
やはりリアルな体験談は一番心に響きます。しかし、自慢話や成功話ばかりではいけません。苦労話、挫折した話、そしてそこから這い上がった話、どのように問題を解決したのかなど、泥臭いエピソードトークに聞き手はついつい引き込まれてしまうもの。実体験を自分の言葉で語ることで、自然とスピーチに臨場感が出て真実味をおびていくのです。
3. 「クロージング」では記憶に焼き付くようなメッセージを
最後は「クロージング」です。クロージングではダラダラと話すのではなく、聴衆の記憶に焼き付くようなメッセージやフレーズを残すことで、スピーチの最後にインパクトを与えることが大切です。例えば次のような感じです。
「Stay hungry, stay foolish」
この言葉はあまりにも有名ですよね。ジョブズ氏がスタンフォード大のスピーチの締めくくりとして述べたのがこの言葉です。直訳すれば「ハングリーであれ。愚かであれ」となりますが、その真意の解釈には何通りもの考え方があります。このように、シンプルで短くてもインパクトの強い言葉は、聞き手の脳裏に深く刻まれます。
「こんなかっこいい言葉思いつかないよ…」と思われる方も多いでしょう。でも安心してください。ジョブズ氏のこの言葉も、彼が昔好きだった書籍からの引用です。なので、あなたの好きな英語の名言・格言を最後に差し込むことで、スピーチはグッと締まり印象深いものへと変わることでしょう。最後にもう一つ。
「Yes, we can」
これも超有名なオバマ大統領のメッセージです。スピーチがクライマックスに近づくにつれ、オバマ大統領はこの言葉を何度も繰り返しています。そして聴衆たちが興奮と希望の渦に包まれていくのが伝わってきます。
何度も同じメッセージを繰り返すテクニックはジョブズ氏のスピーチにも見られ、繰り返した分だけそのメッセージに込めた想いが、聞き手へと伝わっていきます。ぜひ、自作でも引用でもいいので自分の伝えたいメッセージを短い言葉にし、クロージングの決めセリフとして使用してみてください。
イメトレで一度スピーカーになってみよう
いかがでしたでしょうか。
いきなり偉人たちのような雄弁で伝説的なスピーチをすることは簡単ではありません。しかし、今回紹介したようなコツやテクニックを使って、「スピーチよかったよ!感動した!」と周りから言ってもらえれば、それほど嬉しいことはありませんよね。
きたるその時が来るまで、演壇に立ってスピーチをしている自分を想像しながら、日々の英語学習やネタ探しをしていくのも楽しいかもしれません。
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