いつの時代も評判が悪いのが受験のための「学校英語」です。文法ばかり教えて、現実の会話で役に立つことはなにも習得できない……。こんな議論は、戦前からずっと続けられています。確かに、中・高6年間も勉強してはなせないというのは、学校英語に問題があるからに違いないと思います。ですが、じゃあ全く役に立たないかと言われると、そうとも言い切れません。
筆者はとある大学の付属高校の出身だったので、まったく「学校英語」の勉強をしたことがありません。そのため、大学生になってから英語を勉強するときに、本当に苦労しました。文法問題が全然解けないからです。「実用英語」の代表格・TOEICテストですら、2割くらいは文法の問題です。英会話や英作文でも、文法の知識は必要になってきます。
「学校英語」の問題は、文法をやらせることではなく、「文法ばっかり」であることではないでしょうか?日本の学校に通うなら、学校英語を勉強するのは避けられません。大事なのはどう活用するかです。今回は、学校英語をうまく利用して、実用的な英語力を身につける方法を考えていきましょう。
「文法ばっかり」の教育をどう活用するか
「日本の英語教育は文法重視すぎる」とよく言われており、私も基本的にはその通りだと思います。学校英語では、文法についてはかなりマニアックなことまで教えてくれます。一方で、勉強する単語の数はあまり多くありません。発音にいたっては、全く教えてもらえません。「言葉ができる」というのは、文法・発音・単語がカメラの三脚のように支えあっているものです。文法という一本の脚だけが長すぎると、バランスが取れずに倒れてしまうでしょう。
ですが逆に言えば、一本の脚は学校が徹底的に教えてくれるのです。残る2本の脚を自分で補えば、文法をしっかり理解していることは強い武器になります。「英会話では文法なんてどうでもいい。日本語だって、話している時に文法なんか気にしていないじゃないか」という意見はよく聞かれますね。実際のところ、会話のときには、文法をそれほど意識しなくても大丈夫なものです。
ですが、全く勉強しなくていいかと言えば、そうでもありません。日本語の例を挙げて考えてみましょう。
1. 私はマクドナルドに行ってご飯を食べます。
こんな日本語があったとします。ちょっと教科書みたいですね。実際は、こんな風に話すでしょう。
2. マックいってご飯食べるよ。
かなり崩して、こんな言い方でも十分通じます。
3. ご飯食べるよ、あの、行ってさ、マック。
ですが、こうなるとどうでしょうか?
4. にご飯、私マクドナルド、行き食べますは。
4番は明らかにわけがわからないと思います。2~4番まで、「文法がおかしい」ことはどれも同じです。でも、日本語が母国語である私たちは、4番だけは使いません。感覚的に「3まではセーフだけど、4はアウトだよね」とわかっているからです。
外国語を話すときは、こういう「ギリギリセーフのルール違反」と「アウトのルール違反」が感覚的に区別できません。ですから、何がセーフで何がアウトか、最低限勉強しなければいけないのです。そうしないと、4番のような理解不能の英語をはなしてしまうことになります。
英語で文章をかく場合は、文法はより大事になります。レポートや論文を英語でかく機会はどんどん多くなるでしょう。その時、きっちりとした文章を書くためには、文法の知識は欠かせません。
英語を使う基礎になる文法ですが、独学するのはとても大変です。私は英文法を勉強せずに大人になってしまったため、英語を勉強するときには地獄を見ることになりました。関係代名詞や仮定法など、独学するのはとても面倒です。
受験英語を勉強することで、自動的に文法の基礎が固まります。今高校生以下の方は、ぜひ学校の英語をしっかり勉強してください。もう社会人の方が、「英文法を学びなおそう」と思ったなら、学校英語の教科書は強い助けになります。毛嫌いすることなく、使えるところは使っていきましょう。
中学レベルの単語は絶対マスター そこから先は目的に合わせて
学校英語が重視していない「単語」はどうすればいいでしょうか?結論から言えば、中学レベルの単語で十分に日常会話はできます。英語のネイティブが日常的に使う単語の数が2000種類くらいといわれていて、中学英語の時点でそれを超えているからです。
それらの単語をマスターした後、どれくらい単語を覚える必要があるかは、個人の目標しだいです。「今は英語を使う機会はないけど、資格試験は受けたい」というのであれば、その資格試験の単語帳を覚えるのがいちばん手っとり早い方法です。英語でレポートを書いたりするなら、学術英語の本を一冊持っておくといいでしょう。
単語帳をよむだけの勉強に飽きたら、実際の英語に触れてみましょう。英語のドラマや洋書など、よい教材がどこでも入手できます。勉強した単語を実際に目にすることで、より記憶に定着するのです。
「ディクテーション(耳からきいた単語を書きとる)」をしたり、発音しながら書いたり、テクニックは色々あります。一番大事なのは、カタカナ発音ではなく、英語らしい発音で読めるようになることです。これができるかできないかで、リスニング能力が大きく変わってきます。
単語を覚えるのは長い時間がかかります。正直に言えば辛い作業です。「せっかく覚えたのに、また忘れてしまった」という挫折をくりかえすことで、どんどん勉強が嫌になってきます。残念ながら「こうすれば絶対にうまくいく」という特効薬はありません。
私自身の経験則ですが、「できなくてもしょうがないよね。忘れるのが当たり前だよね」くらいの気持ちで勉強するほうが、結果はよくなります。あまり自分に負担をかけず、長い目で見て勉強しましょう。道のりは長いのです。
「子音だけで発音できる」と世界が変わる
最後の一本の足、「発音」はどうでしょうか。学校英語では発音を全く教えられていません。英語の成績はよかったが、発音だけはまったくダメだという人も多いですよね。発音苦手意識をもっている方が多いと思います。
ですが、発音はとても簡単に改善することができます。長い時間のかかる文法や単語にくらべて、発音は短期集中で習得できるのです。私が英語を教える場合、8時間くらいのレッスンで基礎的な発音はマスターしてもらうことができます。
発音練習にはいくつかのステップがあります。一番大事なのは、「子音を子音だけで発音できる」です。子音だけで発音できるとはどういうことでしょうか?
日本語はどのことばにも「a, i, u, e, o」がついています。「あ・か・さ・た・な・は・ま・や・ら・わ」、どれにも「あ」がついていますよね。ですが英語では、子音を子音だけで読まなければいけません。
「school」という単語を見ると、わたしたちは「sukuuru」と発音してしまいます。でも、本来母音がついているのは「ch」の音だけです。母音がつくとそれだけ音が長くなりますから、全体のリズムがおかしくなってしまいます。多くの外国人は、「全部の音に母音がついた発音だと、英語かどうかすらわからない」と指摘します。
子音だけで発音するにはどうしたらいいのでしょうか?まずは、日本人でもわかりやすいところから練習しましょう。
「Up」という英単語を見てみて下さい。実際の発音は「アp」で、「p」には母音はいりません。ですが、多くの人が「A-ppu」と読んでしまいます。母音なしのPの音は、どうやって出せばよいのでしょうか?スイカの種を飛ばすとき「プッ・プッ・プッ」と音を立てますよね?この時の「プッ」という音が、「p」の音です。喉の奥はふるえず、ただ息を吐くだけ、これが子音のPです。他にも、うるさいこどもを静かにさせるために、くちびるに人差し指を当てて「シーッ」っとやりますよね。あの「シー」は「sh」の子音です。このように、日本語にも子音だけで出す音があるのですね。これらの音をあらためて発音してみると、子音と母音の区別がわかってきます。その後で発音の教科書を読んでみると、一気に理解できるようになりますよ。
学校が教えてくれない「発音」の第一歩は、子音から始めましょう。
まとめ
「学校英語は文法ばっかり……」これはたしかに大きな問題かもしれません。でも見方をかえれば、面倒な文法は教えてもらえるのです。足りない単語と発音を自分でカバーすれば、文法をしっかり身につけたことは大きな財産になります。単語と発音を補って、学校英語を最大限に活用しましょう。
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