いま日本人が海外で仕事をすることが増えつつあります。少子高齢化問題や貧困問題などを背景に、日本の将来に不安を抱き、将来的には海外で働くことを視野にいれている人も多いようです。現実はどうなのでしょうか。今回は海外で就職をすることについての背景やメリット、さらには海外就職に必要な知識や性格なども合わせてご紹介したいと思います。
海外就職の現状
みなさんは海外で働くということに興味はありますか?実は今、海外で働く人が非常に増えつつあります。下記の図をご覧ください。海外に長期滞在、もしくは永住をする人は10年前に比べて24%も増加していることがわかります。日本の総人口数は減少の一途を辿っていることを考えても、その増加数は非常に顕著なものなのです。
出典:外務省「海外在留邦人数調査統計」
海外就労者の増加とその背景
海外で働く人が増えつつあることの原因は、下記のようにいくつか考えられます。
海外に行きやすくなった
そもそも海外へ気軽に行きやすくなったこともその理由の一つでしょう。交通機関が発達し、海外に住みながら日本にたまに帰国するということがさほど難しいことではなくなったといえます。
日本企業の海外進出の加速
ここ10年で日本の企業は大きくグローバル化へ舵を切りました。大企業だけではなく、中小企業でも海外へ進出し、社員が駐在することも珍しいものではなくなりました。日本の企業に属しながらも、海外で働く人が増えたことも海外就労者数の増加の理由の一つと言えます。
日本で生活し続けることへの不安
高度経済成長後のバブル崩壊からこれまで、日本経済の先行きに不安を感じ続けてきた年代の中には、今後も日本で暮らしていくことに大きな不安を感じている人も多くいるようです。今はまだ世界3位のGDPをキープしている日本も、2050年には大幅にその順位を落とすという予測もあります。実際に現在も、国内成長率は世界基準で最下位。日本にいながら「貧困」という言葉をよく耳にするようになったり、「少子高齢化問題」や「年金問題」も取り沙汰される中で、日本に住み続けることへのメリットを感じなくなった人が増えつつあります。こうした日本という国への不安が、海外就労者数の増加の大きな理由の一つと言えるでしょう。
海外で働くことにメリットがある
日本で働くより海外で働いた方がメリットがあると考える人も多いようです。例えば物価や税制度の違いにより、日本で生活するより海外で生活した方がより良い暮らしができる国も多々あります。また、日本以外の通貨を稼いで貯蓄することで、将来日本の財政が困窮した際のリスクヘッジが可能にもなります。さらに、「過労死」や「自殺」などが増え続けている日本社会に比べ、他国で働く方がしっかり休みも取れ、よりストレスの少ない社会生活を送ることができると考える人も多く存在します。生活の質や将来へのリスクヘッジを鑑みても、海外で働くことには多くのメリットがあるのです。
海外就職するにはどうすればいい?
では実際にどうすれば海外で就職ができるのでしょうか。いくつかの方法があります。
海外の大学を出る
一つ目は、大学入学の時点で海外に出て、大学生活を現地でおくること。日本から海外の企業に就職するのはかなりハードルが高くても、大学をその土地で過ごしていれば、その間にアルバイトやインターンシップなどでコネを作ることも可能です。またその国の制度にもよりますが、大学卒業後1年はその国にとどまって就職活動ができるというような国もあり、その分日本から就活するよりはかなり優位になるでしょう。
海外拠点のある企業に勤める
すでに社会人である場合、海外にも拠点のある職場に勤めるのは一つの手です。まずは日本で仕事をして、そこから海外拠点への転勤を狙えば、基本的な仕事内容はあまり変わらない場合もあり、初めての海外就職に対する戸惑いも多少緩和されるでしょう。また最初から海外企業に採用されるよりはかなりハードルも低く、多くの人に可能性が広がっていると言えるでしょう。
エージェントに依頼する
海外採用を扱っている就職エージェントに依頼するのも王道の手です。採用の段階ではエージェントを通して日本語を使うこともできるので、自分ですべてを行うよりはハードルが低くなります。ただし就職エージェントの場合、あなたの英語力や経歴によっては多くの企業を紹介してもらえない場合もあります。
自分で求人を探す
自分でインターネット等で求人を探すのももちろん可能です。日本と同様に海外にも求人サイトがあるので、行きたい国の求人サイトを調べるといいでしょう。検索の際に日本語ができるという利点でフィルターをかけると、より採用されやすい案件をみつけられるかもしれません。また、日本人客を多く相手にしているような業態や会社なら、日本語ができる人材ということで採用の可能性も高まるでしょう。
直接行きたい企業に連絡をする
すでに働きたい企業が決まっているのであれば、メールや電話などでその熱意を伝えましょう。メールの場合はあなたのレジュメを一緒に添付すると話が早いでしょう。もちろん経験や英語力は必要ですが、どの国の企業でも熱意のある人を採用したいことは間違いありません。
海外就職向きの人とは?
海外で働いてみたいと思っても、実際働いてみるとイメージと違ったり、うまく楽しめなかったという声を聞くこともあります。自分は本当に海外就職向きなのかどうかというのをしっかり見極めてから行動に移しても遅くはありません。下記のような点を一度考えてみてくださいね。
短期間でも海外に住んだことがある
例えば1ヶ月だけでも語学留学をしたことがあるなど、一度か二度は海外経験があることが望ましいでしょう。異国の文化の違いや生活の違いにどう対応するかという経験がないまま、急に現地で仕事をすることになると、仕事も生活もすべてが違いすぎて過度なストレスを感じてしまう可能性があります。まずは短期留学などで海外経験を積むことから始めましょう。
海外の文化に興味がある
意外と多いのが、異国の文化に興味がなく、現地の生活を楽しめないというパターンの人です。文化の違いを感じるたびに、「日本のほうが優れている」「日本のほうがいい」と考えてしまう傾向が強いと、その土地で生活することが苦痛になってきてしまいます。「違っていて面白い」「自分も試したい」と、違いをポジティブに捉えられる人でないと、すぐにホームシックにかかってしまい、計画が長続きしない可能性があります。
誰とでも仲良くなれる
海外生活を楽しむには、どんな人とでも垣根なく会話ができ、仲良くなれる人のほうがうまくいきやすいでしょう。日本人のコミュニティを見つけることももちろん必要ですが、日本人とばかり付き合うのではなく、現地の人とも仲良くなることは、長期間その国で自分らしく過ごしていく上でとても大切です。常に「自分は日本人だから」と思い込みすぎると、職場などでも現地の人との関係がぎくしゃくしてしまったり、馴染みにくくなってしまいます。もちろん日本人としてのアイデンティティーは持ち続けることになりますが、現地の人ともうまく馴染める性格があれば、日常生活を楽にしてくれるはずですよ。
特別なスキルがある
海外就職と簡単に言っても、就労ビザを取得するのは簡単なことではありません。ある企業に採用されて渡航した場合、そのために取得した就労ビザは、企業との契約関係がなくなれば取り消しになってしまいます。つまりその会社をやめてしまうと日本に帰国しなければならないのです。その国にどうしても留まりたい場合、他の現地企業に採用される必要がありますが、そのときに特別なスキルがあれば強みになります。例えば日本語の教師や、料理人、ITプログラマー、大学教授など、特別な技能や高度な専門職を有していれば、技能ビザや高度専門職ビザという形で入国でき、一般に雇われる企業に制限はありません。もし海外で一生生活をしていきたいと考えるのであれば、こういった特別なスキルを取得した方のほうが有利と言えるでしょう。
海外就職を目指したい人に必要なもの
最後に、これから海外での就労を目指したい方が必要なことをお伝えしたいと思います。日本で生活するのとは様々な点で異なる海外での生活。しっかり準備をしていくことで、現地生活がより安心したものになりますよ。
ある程度の蓄え
すでに海外での就職が決まっていても、現地でいつなんどき、お金が必要になるかわかりません。現地での居住費用も国によっては日本よりかなり高い場合もありますし、急遽日本に帰国しなければならなくなった時に往復の航空券を買う余裕は少なくとも持っておきたいものです。海外に住むとなると、少なくとも100万円の貯蓄はしていきましょう。
英語力・現地の言語能力
「英語なんてあっちに行けば否応なく身につくだろう」と考えて渡航してしまう人も中にはいますが、そうすると最初の1年は大変に苦労します。仕事で苦労するだけでなく、日常生活でもわからないことばかりだと、ストレスで体調を崩すことにもなりかねません。やはり英語力(もしくは現地の言葉)はある程度、聞いたり話したりできるようになっておくにこしたことはありませんよ。
現地の情報収集
当たり前ですが、現地の情報はあればあるほど、到着後に苦労が少なくて済むでしょう。交通機関の使い方や現地の文化、天気、宗教についてなど、なるべく多岐に渡って調べてから渡航しましょう。
スキルの習得
「海外で働くと決めたらすぐにでも渡航する」というのも行動力があって素敵ですが、日本でしっかりスキルを磨いてから渡航するというのもまたお勧めです。というのも、日本でまったく就労経験がないまま海外の企業に勤めると、言葉の壁のせいで現地の人材より昇格しにくいといった側面があるからです。そのために5年、10年たっても平社員のままということにもなりかねません。
例えば日本で10年ほどしっかりとマーケティングの経験を積んで、課長や部長などのマネジメントの経験もしてから渡航すると、海外でもマーケティングの道で採用される可能性が高まりますし、最初からマネジメントの役職を手にすることも可能かもしれません。生涯賃金を考えると、その方が効率がいい場合もあるので、自分が何を最終目標においているのかをしっかり見定めるのが大切でしょう。
まとめ
先行きが不安な日本の現状で海外での就職を考えている人も多いと思います。海外での就職は異文化に触れたり外国語の上達が可能になるだけでなく、将来日本に何かあっても他の居住地という選択肢があり、心に余裕ができると思います。とはいえ英語力だけは一朝一夕にすぐに身につくものではありません。今のうちからオンライン英会話でコツコツと着実に英会話力を磨いていきましょう!
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